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小説)お金や仕事が存在しない世界の人の価値

            『国民ランキング』

      全国民をポイントにより評価、順位付けする制度

       月に一度、全国民のランキングを発表する

   国の人口は100万人 1位〜100万位までの順位を表示する

 我が国ではすべての労働を機械化および人造人間による作業へ完全に移行したことに伴い、全国民は労働の必要がなくなり大量の時間を手にすることとなった
 すべての財やサービスを機械や人造人間が無限に生み出せることになった結果、これまでの経済制度も廃止
 当初は無限に生産される財やサービスに興じることに大量の時間を消費していた国民も、世代が変わるにつれてそれが当然で退屈なものに感じるようになった
 労働そのものがほとんど存在しないのであれば国民の教育への関心も次第に失われ義務教育制度も廃止された。社会システムは進化したが、それを享受する国民は退化した。暴力的で粗野で粗暴な人間が増えることになった。

以上の背景から我が国では『国民ランキング』を導入し、労働の代わりに国民相互による競争原理を用いた階級制度により教育の促進、向上を図るものとした

      
 競争原理を維持するためランキング下位10%には何らかのペナルティを科す


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僕(レンジ)は駅ターミナルに現れる巨大なホログラム掲示板を見上げていた。
そこで毎月一日に全国民のランキングが発表される。
その掲示板に1位から最下位100万位の全国民の名前とそれぞれの評価数値が載せられるわけだが、僕のランキングは毎月下位の方で、そのあたりを探すと


 800000位 レンジ 評価数値 200000ポイント

『先月よりも少し上がってよかった』僕は少し安心した。
なんせ下位10%つまり90万位以下にはペナルティが待っているので、そこまで順位を落とすわけにはいかない。
ペナルティの内容は公式には発表されていないし、それが下された人を見たことも聞いたこともない。ただランキングが発表された後しばらくするといなくなってしまう。生活の痕跡ごと消えてしまい、一度いなくなってしまった人ともう出会うこともないらしくそのことが僕を不安にする。

ただその不安がなんとか評価数値を獲得して順位を上げようとするモチベーションになっている。
評価数値ポイントは人間のすべてを表しているポイントで、具体的にはその人の
ルックスや身体能力、知力、性格、思考、行動内容、その他ありとあらゆるものが評価され数値化されている。
僕たち国民には完全な球体のドローンが与えられていて、それが常に頭の周りを飛んでいる。その完全な球体は『アダム』と呼ばれ、林檎くらいのサイズで光沢のある銀色をしている。ドローン『アダム』は頭の周りを飛びながら、僕たちを監視モニタリングしていて見た目や身体能力を数値化できるのは24時間この飛行球体が監視しているためだ。そして僕たちは20歳になると同時にこめかみあたりにチップを埋められる。それは人間の脳の活動を完全に解析し思考の内容までを正確にに突き止めドローン『アダム』に伝達する。頭の中で何を考えているかはお見通しというわけで、良からぬことや如何わしいことを考えると評価数値ポイントがマイナスされるだろう。

そしてこのチップは『イヴ』と呼ばれている。

僕は見た目や運動神経はそこそこだと自己評価しているんだが知力には全く自信がない、もしかしてそのあたりがこの評価ポイントの理由なのかなとも思っている。
(もっと自分磨きみたいなことをしないとな)
そう考えながら掲示板を見ていると1位の人が発表される時間になった。
トップ10は演説があるので別に発表されることになっている。


1位 リオン 評価数値 1000000ポイント

『、、、満点かよ、、すげぇ、、』僕が驚くと同時に

ホログラム掲示板は演説会場の映像に切り替わり
長い黒髪の女性の姿を映し出した。

               続く  


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