【レッスン編】open summer キゾンバフェスティバル
前年の嬉し涙から勢いで参加を決めた、ポルトガル・Albfeiraでの「キゾンバ」というペアダンスのフェスティバル、「open summer キゾンバフェスティバル」についての記事を書き進めている。
フェスティバル参加へのいきさつや、フェティバルの貴重な情報については、前回書いてみた。
今回は腹十二分になる贅沢なラインナップのレッスンと受け方のコツ、そこで起きたエピソードについて、触れて行こう。
腹十二分目になる、豊富なレッスン量
レッスンの量は、スペインでのカルガフェスティバル以上に多かった。
序章の木曜日のみ、夜に3時間。
そして金曜日から月曜日は、朝2〜3時間、昼〜夕方6時間。
一日8〜9時間という多さだ!
この後パーティーの最後までオールナイトで踊り切るには、かなり体力勝負になる。
どのレッスンやパーティーに参加して、どこで休み仮眠をとって、どこでエンジンをかけるか。
タイムマネージメントは、スペイン以上に必要だった。
せっかく世界屈指のインストラクターがレッスンしてくれるのだから、レッスンはほぼ解禁で受けたい。
そして、パーティーでも素晴らしいダンサーと「忘れられないダンス」を今回も味わいたい。
ということで金曜日から、私はレッスンをほぼ全て受けて、プールパーティーの途中まで参加した後はご飯を軽く食べて夕寝をして、そして真夜中からパーティーに行って最後の方まで残る、という方法を取ることが多かった。
ヨーロッパの人気技の傾向
レッスンはホテル5階の3つのホール(キゾンバルーム、アーバンキゾンバルーム、それ以外のサルサやバチャータルーム)で同時に行われていたが、私はアーバンキゾンバルームに行くことがほとんどだった。
アーバンは、とにかくシャドウポジション(ペアの2人が向かい合わず、同じ方向を向いている。多少前後にずれ、フォロワーが前になったり、リーダーが前になったりする)やオープンポジション(ペアが隣同士になる)が、よく取り上げられた。
このように向かい合っていないポジションでのクロス技、足を上げたり、動かせるステップは万国共通の人気ステップ、そして課題のようで、皆でインストラクターに食らいついて行った。
今はペアが向かい合うノーマルポジションだけでなく、複雑なポジションでのステップ、そしてクロスも当たり前にできる人が、本場では日本以上に多そうだ。
特にアセディン、Jesus &Anni、JoJo が教えてくれた男性前や女性前のシャドウポジションの練習は、
「自国で仲間と復習してみたい!」
と、たくさんの参加者達が意気込んでいた。
ペアでの練習:気持ちがこもったコネクション
アーバンキゾンバルームの参加者は常に50人を超えていたから、6レッスン連続で受けても、ペアになるのは1日1回限りという相手も多かった。
各先生は結構しっかり説明もしてくれるから、1回のレッスンでそのレッスンを受けている3分の1以下のリーダーとしか、踊っていないレッスンもあった。
だからだろうか。
音がない練習でもだけれど、音楽がかかった練習の時は特に、リーダー達はとても気持ちを込め、パーティーで踊る時のようにフォロワーを楽しませてくれる。
一回の「ペアでの練習」をとても尊く崇高なものとして、リーダー達は丁寧に扱ってくれているようだった。
世界を代表する花形インストラクター、アセディンのレッスンの時にペアになったフランスリーダーとはペアを組んだ途端、ケルン・ズークフェスティバルの時にも起きたようなコネクションの心地良さを覚えた。
アセディンが目が覚めるような爽快な音楽をかけてくれると、パリのエッフェル塔の上で、ライトアップされたパリ中を眼下に見下ろしながらキゾンバを踊っているような気分になる。
フランスリーダーは、音楽がかかると技以外の応用も入れて来て、私の笑みを誘う。
「素敵な技だね」
「これはどうかな」
そんな会話が、踊りと微笑みを通じて展開される。
柔らかく流れる中に、時々アクセントが入るようなリードに導かれるように、私がアシスタントのSaraに教えてもらったスタイリングをかけると、しっかり場所も確保して、スタイリングをするのを待ち、絶妙なタイミングで次へと続けてくれる。
このフランスリーダーと視線を合わせ、微笑みながらやった練習は心地よく、音楽のタイミングもドンピシャで合い、最高だった。
ズークフェスティバルでのドイツ南部さんも同様、レッスンで練習するだけでも既に印象的で忘れられない人が出て来るのは、とても興味深い。
コネクション(ペアを組むハグのこと)の魅力、素晴らしさについては、こちらの「始めたてダンサーとのonly one :ドイツ人の底力 」の項で触れている↓
上手なリーダー、ペアを組むのは初めてだが、明らか踊れそうなリーダー、コネクションから何か惹かれるものを感じるリーダー等がペアになった時は、こちらもより気もちが入る。
また、「来た!」というかんじで、笑顔で気合いをこめて「Hi!」と言われ、指一本一本からも気持ちを入れてコネクションを組んで来るリーダーにも、やる気スイッチをオンにされた。
「行くぞ!」「OK!」という感じで、私もリーダーの指をにぎり返す。
私が参加した木曜日から、何かとレッスンやレッスンの中のグループ(外の丸、内の丸など)が一緒になるルクセンブルク君も、ペアになる度に溢れんばかりの気合いを伝染させてくれた。
木曜のフェスティバル登録の時に、私は先週のズークフェスティバルですっかりハードルが下がったクローズドレッスンも登録していた。
このフェスティバルでも、世界的インストラクター、Fred&Morganeの1時間のクローズドレッスン(少人数でのレッスン)が、なんと15ユーロ(円高なら1500円、ひどい円安でも3000円)で受けられるという有難さだ!
私が「レッスン取れた!」と嬉しそうにしていると、すぐ隣で登録していて、時々こちらをチラチラ見て来る男の子から、声かけられた。
「君、Fred&Morganeのクローズドレッスン、取るの?僕もだよ!名前は?」
「タンツです!Fred&Morgane、去年大ファンになっちゃって。彼らに習えるのも目的で、このフェスに来たの」
「僕も一緒だよ!彼ら、最高だよね。僕もクローズド、受けるよ。一緒に頑張ろう!」
このように、木曜日にすでに仲良くなったルクセンブルク君。
音楽がかかっていない練習でもリズムを感じさせるリードだったが、より彼の本領が発揮されていたのは、音楽がかかる練習だった。
マッチョでアーバンキゾンバがぴったりなルクセンブルク君は、金髪をなびかせながら情熱的なリードを繰り広げ、私をレッスンから、真夜中にダンスホールの真ん中で踊り明かしているかのような気持ちに導いてくれた。
Saidがこれまた、とびきりエネルギッシュな曲をかけてくれるから、私達は眠たいはずの午後でもテンションは上が上げに!
ペアで踊る度に効果音の合わせ方、緩急のつけ方も合い、私達は
「ワォ!」という感じで互いを見合い、喜んだ。
「change!」の時には私達は互いに拍手を送り合いながら毎回「Yeah!」とハイタッチをするほど、互いのリードとフォローに大満足していた。
このようにどのリーダーともペアになる機会は希少だからこそ、特にコネクションや音楽の操り方がよく合ったり、課題の技から更に何かを展開して来る特別な人とのダンスは、印象深いものになるだろう!
各レッスン(&デモ)の印象
テーマを教えてくれてレッスンを進めるSaid(1タラショ:音を巧みに扱ったムーブメント。2アーバン:タップ&Go) や Jesus&Anni(フォロワーが前のシャドウポジションへの導き方、その解き方), Albor(1:呼吸をするようにキゾンバを踊る, 2:5種の身体の表現法と3つの音楽) のような先生もいれば、先に完成性をみせ、そこにもって行くJoJoやDewaoのような先生もいる。
使用音楽も、先生の個性がよく出ていた。
Jojo、Azzedine、Saidの音楽は、練習時のからとにかくテンポが早く目が覚める。
反対にAlborやJesus&Anni、JP&Stephyは、流れのあるメロディックな曲が多かった。
練習が多めの先生もいれば、座学が多めのSan J、JP&Stephy、今回来れなかったFred&Morgane たちのような先生もいる。
一流の先生は座学でも、どれだけ睡眠不足でも眠くならず、ワクワクする。
Alborというインストラクターは、恥ずかしながら当時全く知らなかった。
「君は、どこで休んだりテラスパーティーに抜けたりする予定?」
「このAlborとかいう先生の所かな」
「ええっ!Albor受けないなんて勿体なすぎる!すごく大切なことを教えてくれる先生よ!」
「そうなの?じゃあ、テラスパーティーは休憩時間に毎回行こっか(笑)」
こうして、フランスとアメリカの仲間の勧めでなんとなく受けたが、彼のレッスンは本当に良かった。
特に日曜日のレッスンは、忘れたくない内容だ。
音楽を感じて表現する方法は、5つあるという。
1:プリエ(ベースなどの効果音で下がる)、2:ヒップ、3:シェイク(例:頭、胸、ヒザなどで効果音を表現する。横に揺れる)、4背伸び(高めの効果音で上に伸びてみる)、5:アクセント(顔の向きをスピーディに変える)
また音楽には3つのタイプがあるという(1:火、2:水、3:土)
火と水は、常日頃から4つのダンス全てで感じていたが、「土」というのがいまいち感じたことがなかった。
生きている内に、「土」も知り、感じてみたい。
タラーショは、サンジェイ(San J)が大盛況だった。デモ含め、輪になって全員で個人技にも取り組むから、フォロワーはリーダーゼロの時間がなくて皆満足していた。
こんな世界的人気インストラクターのサンジェイだが、フェスティバルで会った一人一人のことも、丁寧に覚えてくれているようだ。私がサンジェイに会えたのは、キゾンバをやり始めた時と、やり始めて1年弱した時だった。それはだいぶ前になるのに、写真撮影で並んでいて私のことに気づくと、サンジェイは私に笑顔でハグをしてくれた!
「タンツです!昔あなたにフェスティバルで教えてもらったことがあるけど、覚えてる?」
「もちろん、タンツ!久しぶりだね!」
記念写真でも温かく抱きしめてくれた、サンジェイ。
この後出て来るアセディンもだが、世界的なスター達の記憶力、そして優しさにも感動した!
Saidのタラーショも、複雑な技が出て来て面白いうえ、個人技でも面白い動き方を教えてもらえた。Dewouは3月東京で習ったJah J’aのステップと似ていたから、苦戦している人がいる中も付いて行けて嬉しかった。
今回はAlborやJesus&Anni達のように、ステップを次々と覚えるだけでなく、そのポジションで、ただ前に行ったり後ろに行ったりというコネクションの練習を、数人と交代させて練習させるインストラクターも多かった。
パーティーでショータイムがないから、彼らのデモが見られるのはレッスンの最後のみで、これは見られて良かった!
どのインストラクターのデモも心に残るものだったが、タラーショではサンジェイの血気迫るソロタラーショ、ペアではアセディン&SaraやAlbor&Natalia、Jesus&Anniが、レッスンで繰り返し伝えていたことを表現してくれていて、今回は特に印象深かった。
また、アーバンキゾンバルームの中にも、時々キゾンバやアフロのレッスンも混じっていて、これがまた楽しい気分転換になった。
Tony Pirata & Ferdyy(coca cola)は、踊りの中に常にユーモアがあり、見ている方まで楽しくさせてくれる。
Tony がFerddyの足を伸ばしたと思うと、靴の汚れを取るパフォーマンスをしたりして笑いを誘ったり、とにかく各所に面白さが際立ったデモだった!
私は出国前に退職する前まで、ダンスバーでキゾンバのレギュラーアシスタントを1年半ほどさせてもらっていたが、デモになると全然ベストな踊りができず、上司を悲しせてばかりいた……。
いつも上司への申し訳なさと、自分の才能のなさへの幻滅を感じた。
だから、
「常にベストな踊りが出来て、それでいてユーモアで観客を楽しませる彼らのような踊りが出来てこそ、本当のプロなんだなぁ。来世はこういう才能を持って、生まれて来たいな」
と、彼らを羨ましく思った。
またサルサを感じさせるムーブメントも入ったMiguel & Monicaのパフォーマンスは、なんと途中からMonicaが目隠しをされたまま、踊り続けるのだ。それもかっこ良く、颯爽と……。
「これは、サーカス?」
の域だった(笑)。
曲調もキゾンバにしてはサルサのような素直な明るさを感じさせるもので、フランスや北アフリカのどこか影がかったキゾンバ音楽とは雰囲気が違い、それも彼らの個性を出していたと思う。
JP&Stephyは前年日本に来てくれた時も思ったが、彼ら独自の踏み方、踊り方があり、その上タンゴを感じさせるムーブメントも満載で、アルゼンチンタンゴも細々だが踊っている私としては、気になる美しい動きがたくさんあった。
(彼らも、去年彼らの東京のレッスンに参加したことを覚えてくれていて、プールパーティーや他のインストラクターのレッスンでも温かく積極的に話しかけてくれ、気持ちが温かくなった!)
このようなサルサやタンゴを感じさせるムーブメントを取得していくことで、もっとキゾンバの表現は深まるだろう。
このダンスは色々な要素を混ぜて行きながら、終わりなく発展を続けるからこそ、これだけ世界でブレイクするのだと感じた。
最後に、世界的キゾンバインストラクター・アセディンの温かい人間性に感動した。
他のインストラクターも、San J、JP&StephyやJesus&Anniなど日本に来たインストラクターを中心に、この日本人女子にもみんな優しく接してくれたが、アセディンは今回が初対面の私にも、レッスン以外でも会う度に笑顔で「Hey!」と優しくタッチしたりハグをして来てくれて、これまた幸せだった。
彼のレッスン後に感情を込めて言ってくれた、心からのお礼の言葉を残しておきたい。
「遥か彼方から、はるばるここに来てくれた人もいるよね(ニュージーランド君、ベトナムさん、私など、遠方参加者はここで早速ジーンと来ている)。来てくれて、こうして最後まで受講してくれて、本当にありがとう」
素敵だ。
こんな人間になりたいし、こうして世界各国の、特に遠方から相当な金額を積んでなんとか参加出来たような私のような貧民のことも思いやってくれて、尊敬そのものだ。
参加者は、世界トップキゾンバアーティストの技術だけでなく、素晴らしい性格も見習いたいと思ったはずだ。
参加者のレベル(レベル分けはなし)
始めに書いた通り、ホテル5階の会場内に3つあるホールは「アーバン」「キゾンバ」「それ以外(バチャータやサルサなど)」に分かれていたが、各自のレベル分けは一切なかった。
これは前回のスペインでも一緒だった。
でも、今回は参加者のレベルの差が更にあったから、時々両者共に戸惑いが見られた(特に経験者達から)。
参加者のレベルは全体的に高めで、ほとんどの人は
「日常のキゾンバでも楽しいけれど、もっと上達したい」
「世界最高峰の先生のレッスンを受けたいから遠くからでも(私が話した中で一番遠方だった人は、ニュージーランド)参加したい」
と思ってレッスンを受けている。
そんな中に「え?!」という人が時々混じっていて、とても基本的な質問を熱心にしてレッスンを止める場合があったのは、残念だった。
初心者メンバーの質問や、彼らがステップに付いていけない問題によって進度を妨げられて、インストラクターが気の毒だったレッスンもあった。
レベル分けがあったら、その初心者の質問は役に立つけれど、日常のキゾンバに+@を求めてこの大規模なフェスティバルに来ている参加者達にとって、それは貴重な時間や進度が遅れてしまうことになる。
ドイツはキゾンバでも2〜3段階のレベル分けをしているようだし、これだけ大きなフェスティバルでこそ、レベルはせめて2つは定めたら良いのに、と思う。
ドイツの素晴らしいレベル分けについては、この記事の通り。
全世界が真似して行けたらいいのでは、と思う。
お目当ての先生は、多い方がベター
土曜日の最後のコマではアセディンが登場し、歓喜と困惑が混じり合ったような声が、ホールの各地から響き渡る。
「あれ、このコマってFred&Morganeじゃなかったの?代わりがAzzedineなんて豪華すぎるから、もちろん嬉しいけど?」
「飛行機が違う所に行っちゃったらしいよ。今回は、彼らのレッスンは全て中止だって」
「残念だよな。タンツ、またヨーロッパに来ないといけなくなったな(笑)」
「嘘〜!そんなことってアリ?!」
私がこのフェスティバルで一番お目当てだったペアの1組、Fred &Morganeが、なんと飛行機が到着せずやってこないというアクシデントが起きた。
お目当てのペアが一組だけだと
「なんのために、大金叩いてヨーロッパまで来たの」
と気落ちしないといけなくなる可能性があることがわかった。
幸い今回のようにスーパースターが何組も来ている場合、ショックからすぐ立ち直れた。
クローズドレッスンもJP&Stephyが代わりに同価格で行ってくれたから、十分に嬉しかったし満足出来た。
好きなインストラクターは3〜5組位いるフェスティバルだと、安心だろう。
ちなみに今回のフェスティバルではアセディンのフライトも遅れ、初日のレッスンは2日目に延期された。
嬉しいエピソードー:フォロワーとしての喜び
前年スペインでは嬉しい言葉の数々をもらえ、フォロワーとしての喜びを感じたが、今回、世界的で規模の大きいこのフェスティバルでも、嬉しいエピソードが増えた。
スペインリーダーとは、通し練習で音楽をかけての練習でペアになった。最後まで2人で踊り切った時、彼は目を見開いて喜び、私に満面の笑みでハイタッチした後、隣にいたリーダー仲間にスペイン語で興奮気味に何かを話した。
「何なに?」
「さっきまでリードが全然通じなくて最後まで出来なかったんだけど、今君と、やっと最後まで出来たって話してたんだ。最高だったよ!」
と、感動してくれていた。
他にもペアになった人達に、
「excelent follow(素敵なフォローだね)!」
「mui bien(とってもいいよ)!」
などと言われ、フォロワーとしての自信ももらった。
ここまで書いたリーダー達のように、初日やペアを組んだ時から褒めてくれたりして仲良くなるリーダーもいたら、タンゴフェスティバルやズークフェスティバルのように、日が経つにつれてフォロワーとしての自信をくれる人達もいた。
ノーブルでファッショナブルだった、ルーマニア系スペイン人のリーダは、初めてペアになった途端、
「Hi. 君の名前は?どこの国から来たの?このフェスティバルの目的は?」
と真顔で一気に質問してきて、パスポートのインタビューかと思った!
だから、ここでは彼のことをインタビュアーと呼ぼう(笑)。
「タンツです。日本人で、インストラクターに惹かれてこのフェスティバルを選んだの」
と言うと、彼はパッと笑顔になり、
「僕、東京に住んでたことがあるよ!このフェス、スター揃いだよね!」
と言う。そして今度は、日本のことについてインタビューを浴びせて来る(笑)。
レッスンの説明中もノンストップで質問して来るのに、ステップはなぜかサラリと覚えてしまい、パーティーでも素晴らしい踊りをしてくれるこの人は、相当フェスティバル慣れしているのだろう!
毎日順番がやって来てペアになった時間は、インタビューに合いながらも爽快に踊り明かしていた。
それが最終日の日曜日のレッスンでは、このインタビュアーとなかなかペアにならなかった。
外の輪、中の輪、1.2.3.4列目。いつも見事に分かれるのだ。
あっという間に、最終クラスになっていた。
San Jが呼びかけ全員で輪になった時、ちょうど私の遠い向かい側にインタビュアーもいた。
「インタビュアー、今日もレッスンをガンガン受けてて熱心だなぁ」
なんて思っていたら、SanJが説明している途中で、いつの間にか彼は隣にいた。
いつの間にか、移動して来たようだった。
「どういう瞬間技でここに来たんだろ?」
と思っていたら、個別でのトレーニングが終わった後、
「ペアをくんで」
と言われると、彼は即座にペア練習に誘って来る。
「今日は全然タイミング合わなかったけど、やっと練習できるね!finally!」
と言われた。
心が動く。
センスのある踊りや向上心、優しい笑顔では既にリスペクトしていたが、移動してまでペアになりたいと思ってくれていた気持ち、それを積極的に行動で示してくれたことが、フォロワーとして嬉しかった。
もう一つのエピソードは、タンゴフェスティバルなどではあったが、キゾンバでは初めてだった。
いつも同じレッスンに参加していて、ペアになると「Hi!」と微笑んで挨拶はしてくれるが、それ以上のことは決して話して来ないドイツリーダーがいた。
彫刻のような整った微笑みから全く表情が変わらないその人を、アメリカ、フランス、ドイツの仲間達と「彫刻」みたいと話していた。
「あの人、リーダー同士だったら、もっと思いっきり笑ったりするの?」
「いや、“彫刻”とはデモの時少し喋ったけど、あの顔のままだったし、会話も“Yes“位だぜ」
「“彫刻”は確かにアーバンもキゾンバもとても上手だけど、顔の表情が全然変わらないから、楽しいんだか楽しくないんだか、さっぱり分からないね」
「ミステリアスだな、“彫刻”は。同じドイツ人だけど、全然喋ったことも関わったこともないや」
「そもそも、全員が“彫刻”の実名知らないしね(笑)」
プールサイドで私達がお喋りしていた時、一匹狼の彫刻が挨拶もせず無言で側を通って行ったことがきっかけで、こうして話題に上がったりもしていた。
「Hi」 や「Yes」 以外の彼の声を聞く者は、日が経っても増えなかった。
最終日の日曜日。
この日、私も終わり頃に順番が回って来て、一度だけ彫刻とペアになった。
「Hi!」
いつもの微笑みだ。この人とはこの挨拶と、
「合ってる?」
「Yes(うん)」
位しか話さず、フェスティバルを終えるのだろうと思っていた。
ただ、この最終日の彫刻は、いつもと違った。
「君は……昨夜のパーティーにいた?」
私は、特に話すつもりもなく、まっすぐ前を見ていた顔を上げた。
長身の彫刻と初めて、“Hi“以外を話すために。
「うん……。一晩中いたよ」
「本当に?!」
「うん。とっても楽しい時間だった!」
「僕は、君を探したんだ。でも、昨夜も君を見つけられなかったよ」
私はコネクションを少し離し、まじまじと彫刻の方を見た。
「本当に……?」
「本当だよ。今夜は、もうフライト?それとも、パーティーまで残る?」
「夜中2時半位までは、いる予定だよ。あなたは?」
「行くよ。今夜は君を見つけて、踊れることを望んでいるよ」
「私も。きっと、今夜ね!」
「きっと、今夜に!」
「5,6,セ〜ブン, 8 and…...♪」
かけ声がかかり、再びステップの練習が始まった。
とても、意外だった。
この人は彫刻のように表情は微笑みから常に動かず、ここまで話しかけられたことも皆無で、私と踊りたいと思っている素振りは全くなかったのだから。
レッスン中やレッスン前後も積極的に話しかけて来て、優しい視線や表情、温い言葉や心が動くような行動をたくさんくれる人とは、全く対象的なタイプだった。
でも、彫刻はいつからか私と踊りたいと思い、探していたと教えてくれた。
私はフォロワーとして、嬉しかった。
レッスンでとても優雅で流れのある踊りを展開していた彫刻と、スローなキゾンバや、ガラッと感じを変えたアーバン、ドゥサーを踊り、表現し合ってみたいと思った。
このように、世界の様々なタイプのリーダーと踊りたいと思ってもらえるフォローがこのフェスティバルで出来ていたことも、キゾンバをやって来た上での嬉しい思い出になった。
印象に残った世界のリーダー達
国によって踊り方が違う、ということは決してないが、上記(フランス、ルクセンブルク、ルーマニア、スペイン、ドイツなど)以外でも印象に残っているリーダーがいたから、思い出に残しておきたい。
チュニジア君は、音楽やコネクションを意識してのリードでとても気もちよく、レッスンで昼寝をしてしまいそうになるほど癒された。
ニュージーランドさんもレッスンでもパーティーでもナチュラル系のリードで、午後の時間にペアを組むのにぴったりだった。
午前のレッスンでは優しいリードとフォローで、お互い本当に寝てしまいそうなこともあったが……(笑)
彼とは、遠方からはるばる参加したという所で仲間意識が芽生えた。
まだまだ「ノマドキゾンバダンサー」をしながらヨーロッパ旅行を続けるらしく、生命力の強さも羨ましい限りだ。
イタリアの、カエサルのような王者の風貌をしたリーダーも、印象的だった(ここでは、カエサルと呼ぼう笑)。
カエサルは色々な技をすぐにインプットしてて、ダイナミックにリードしてくれる。
どのインストラクターも凝りに凝ったステップを用意してくれているのだが、それが無事出来た時、カエサルはいかにもイタリア人らしいアズーリブルーの瞳を輝かせ、
「パルフェット(イタリア語のパーフェクト)!」
と言ってくれた!
カエサルの英語はだいぶ曖昧だったから、タンゴフェスティバルの中米君同様、会話ではコメディーのような、意思疎通が出来きれてない状況が続いたが(笑)、キゾンバを通じるとびっくりするほど、踊りの言語は通じ合えた!
こういう所でも、ダンスの魅力は無限大だな、と思う。
カエサルは、チュニジア君やニュージーランドさんとは全然タイプの違う情熱的な踊りやトリックが魅力的で、イタリアのヴェスビオ火山が噴火するかのような踊りも楽しかった。
「基本的な火タイプと水タイプ、どこの国でも分かれるなぁ」
と実感した。Alborが教えてくれた、後もう1つの「土タイプ」は、最後までよく分からなかった。
火や水だけでなく、土も感じ、自らも表現してみたかった。
キゾンバ全般に活かせるアドバイス
腹12分目のレッスンだったため、書いても書いても止まらないほどの気づき、エピソードが出て来るが(笑)、読み手の皆様もそろそろお腹いっぱいの状態だろう。
最後に、心に残った3イントラクターの言葉を記し、パーティー編に移ることにしよう。
キゾンバの最大の魅力だと私が悟ったことも、最後の「まとめ」に書き切れたから、キゾンバを知らない人にもその魅力が少しでも伝わり、少しでもこの素晴らしいダンスをかじるきっかけになってくれたら嬉しい。
JP&Stephyより
「ダンスはただステップをリードしてフォローするんじゃなくて、そこに気持ちやエネルギー、+@を入れることで、より一体感が味わえるんだ」
Alborより
「音楽の感じ方は、十人十色。だから、自分がビートやメロディー、効果音をどのように感じているのかを相手に伝えることも大切なんだ。
相手が表現しているものと自分は違うなぁと思ったら、(例えば相手は火を表現してるけれど、自分は土だと思うった)、それを相手に見せたっていい。
全く違うものを始めは見せ合っても、始めから合わせて行ってもいい。間達はない。
そうやって、2人の踊りは音楽を表現しながら作られる。
表現はそうやって、出来上がるんだよ。
5つの表現法で、3つのタイプの音楽を思い切って表現してみよう。
誰もいない所で1人、音楽をかけて表現してみることも、お勧めだよ」
SanJより
「タラショは、ダークな踊り。明るいセンバとは違う。
暗さを吐き出すダンス。
テクニックも大事だけれど、それだけならAIに任せておけばいい。
何よりエモーショナルに動くこと、ダークなものを吐き出すことが大事なんだ」
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