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Splatoonのクマサン商会は本当にブラック企業なのか社労士目線で考えてみた

※本記事はネタ記事です。ブラック企業を擁護・称賛するつもりはありません。みんな楽しく幸せに働ける労働社会を実現しましょう。

はじめに

この記事は下記のアドベントカレンダーに参加しています。

クマサン商会とはなにか?

任天堂から発売されているSplatoonシリーズに登場する架空の企業。

Splatoon2のハイカラスクエア、Splatoon3のバンカラ街に事務所を構えており、そこに住んでいる若者(インクリング/オクタリアン)に、サーモンランというアルバイトを斡旋し、そこで得られた金イクラを回収している。

このサーモンランというアルバイト、一部界隈では「ブラックバイト」と呼ばれ、それを斡旋しているクマサン商会も「ブラック企業」と呼ばれている。

しかしながら「そんなことはない。クマサン商会はホワイト企業だ!」という人もいる。

現実の世界でもブラックか?ホワイトか?というのは意見を分かれるのはよくあることだが、ここでは労働の専門家である社労士の目線からクマサン商会がブラック企業かどうかを紐解いてみよう。

僕は社労士という立場ですから、企業には健全な人事労務管理体制を整えて欲しいと思うし、いわゆるブラック企業と呼ばれる企業は撲滅せねばならないと考えている。ブラック企業、ダメ、ぜったい。おいクマサン商会、聞いてるか?

人的資源管理論で考えてみよう

社労士は労働・社会保険の専門家、広くヒトに関する専門家である。そこでヒトに関する理論として、人的資源管理論でこの問題を考えてみよう。
人的資源管理をもう少し細分化すると「採用・配置・報酬・育成・評価」で考えることができる。今回はこの5つの側面において、クマサン商会がブラック企業なのか?はたまたホワイト企業なのかを検討してみよう。

1.「採用」面ではブラック?ホワイト?

採用の際によく問題になるのが「求人票」。この求人票の記載内容が、法に反した内容であったり、虚偽の内容であったりすると問題だ。ブラック認定ですね~。

求人票は「職業安定法」という法律で、記載しなければならない内容が定められている。

(労働条件の明示)
労働者の募集を行うものは、従事すべき業務の内容等に関する事項を明示しなければならない。

職業安定法 第5条の3第3項(一部改変)

クマサン商会では具体的な求人票に関する情報は外部に公開されていないが、はじめてクマサン商会に訪れた際、雇用主であるクマサンから「業務の内容」に関する説明を受けることになる。

この業務に関する説明は「バイトマニュアル」(参照:スプランプ様)なるものを抜粋した説明になっている。実際には雇用される前に説明を受けているので、形式的には求人票への明示と同様と推定して構わないだろう。

そしてこのバイトマニュアルについては、明示しなければならない他の事項の記載も確認できる。一部明確に表示されているかどうか不明な部分もあり、その部分は是正しなければならない可能性はあるが、これをもってブラック企業と断じてしまうのはいささか早計であるのではないか。

2.「配置」面ではブラック?ホワイト?

そもそも「配置」とはなにか?
人的資源管理における配置とは、

人員配置とは、経営目標を達成するために、従業員をどの組織・ポジションに配置するかを決める人材マネジメントのことです。

https://www.persol-group.co.jp/service/business/article/3797/

これをサーモンランに置き換えてみると

経営目標 → 金イクラを回収し納品すること。
組織・ポジションに配置 → 従業員の実力に応じてチーム編成を行うこと。

従業員は自分自身の予定に合わせてバイトに参加できるため、クマサン商会は稼働可能な従業員を逐次、その従業員の実力に応じたチーム編成を行っている。また、そのチームの実力に応じた難易度のバイトが設定されていて、明らかに難易度が乖離している現場へ向かわせているわけではない。これはまさしく配置そのもので、クマサン商会としては適切に人材マネジメントされているといえるのではないか。

え?「パブロ」「わかばシューター」「プライムシューター」「スプラチャージャー」なんてクソ編成でドンブラコ(2023/7/12-14編成)なんてクリアできるわけねーだって?

ま、まぁそんな編成でもカンストしてる人もいるから、、、ねぇ?(ごくほんの一部の超人だけが)クリアできる編成としてちゃんと考えられてるんじゃないか、、、な?

3.「報酬」面ではブラック?ホワイト?

人的資源管理論の中でも最重要視される「報酬」。もちろん、リアルの世界でも、お金は大事。イカ・タコの世界でも、イカす若者を目指すために好きなブキ・ギア・オキモノを買い揃えるお金は必要だ。

さて、クマサン商会の報酬制度はどうなっているかというと、バイトのクリアポイントに応じてカプセルが貰える形式になっている。クリアポイントは金イクラの納品数やキケン度に応じて貰え、バイトが失敗してもポイントは貰える。そしてポイントが一定値を超えるとカプセルを受け取ることができ、そのカプセルに応じたお金やギアやチケットなどが貰える。このポイントは、1200ポイントまでは100ポイントごとに報酬が獲得でき、それ以上になるとポイントの幅が広くなっていく。

よく「クマサン商会はブラックだ!」と言う人は、このように言及している。

クマサン商会はブラック企業だ。
確かにポイントに応じてカプセルの報酬をくれる。でも我々が欲しいのはお金(ゲソ)だ。
なぜ1200ポイントを超えるとお金(ゲソ)をくれなくなるのか?
クマサンはお金がそんなに渡したくないのか。
我々はクマサン商会のために、危険な現場に出向いて働いているのだ。
お金(ゲソ)を出し渋るクマサン商会はブラック企業だ。

言い分としては「1200ポイントを超えてお金を報酬として渡さないことはブラックだ」ということ。さて、果たしてこの事実は本当に違法なのか?少し解説しよう。

労働の対象としてもらえるカプセルをはじめとした報酬、労働法的には「賃金」と呼ぶが、これは労働基準法でこのように定められている。

(賃金とは)
賃金とは、賃金、給料、手当、賞与など名称の如何を問わず、労働の対償として支払う全てのもの。

労働基準法 第11条(一部改変)

なるほど。つまりお金だけじゃなく、ギアのかけらやチケットなども賃金扱いになるわけだ。
では、その賃金がちゃんと支払われているかという視点ではどうだろうか。

(賃金支払の5原則)
賃金は、「通貨」で、「直接」、「全額」を、「毎月1回以上」、「定期」に支払わなければならない。

労働基準法 第24条(一部改変)

賃金の支払い方は、上記の通り原則がある。ここで「直接」「全額」「毎月1回以上」「定期」という点においては、正しく支払いが行われていることは疑いようがないだろう。シフト毎にポイントはリセットされるのである種定期的な支払いは行われているといえる。
一方、「通貨」という側面においては、少し補足が必要である。原則は通貨だが、通貨以外で支払うことも場合によっては許される。法令または労働協約(=労働組合との協定)によって、通貨以外の支払いが許されるが、クマサン商会に労働組合が存在しているかどうかは不明である。
しかし、クマサン商会はブラックだ!という従業員も一定数いることから、賃上げ要求を組合を通じて実施されているケースは想像できることや、ギアやチケットなど通貨以外の報酬の内容云々について文句を言う声があまり聞こえてこないことから、通貨以外の報酬支払いについて労働協約を締結している可能性は高そうだ。ホワイトか?とまでは言えないが、少なくとも完全にブラックとはいえないかもしれない。

・・・え?オカシラシャケで金ウロコがでない?クマサンは金ウロコを中抜きしつつ、金プレート報酬(金ウロコ:333枚で交換)を餌に、労働力を不当に搾取しようとしているのではないかって?

いや、う~ん、あれ、いわゆる成果報酬みたいな位置づけだからねぇ・・・。10%ごとにウロコ1枚と残り時間に応じてウロコの枚数増えるから、法的には違法ではない、、、んだよなぁ。たぶん。

4.「育成」面ではブラック?ホワイト?

企業が長く成長していくためには、従業員の育成は不可欠である。クマサン商会には育成制度は目に見える形で充実しているのではないか?
「採用」面でも言及しているが、まず現場に出現するザコシャケやオオモノシャケについて、特徴・討伐方法のマニュアルは整備されている。また、研修の機会もきちんと整備されており、繰り返し練習することも可能になっている。

他にも報酬こそ手に入れることはできないが、「プライベートバイト」の機能により、バイト仲間と練習することも可能になっているし、シナリオコードを使えば、過去のバイトを振り返ることも可能になっている。

また、クマサン商会で雇用されている従業員は「アルバイト」と称していることから、そのほとんどの従業員は、有期雇用のアルバイト、いわゆる非正規雇用と呼ばれる形態であると推測できる。

パートタイム・有期雇用労働法では、非正規雇用従業員の訓練について下記のように規定している。

(事業主の責務)
事業主は、雇用する非正規雇用従業員について、適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実、その他雇用管理の改善などの措置を講じて、非正規雇用従業員がその有する能力を有効に発揮することができるように努めなければならない。

パートタイム・有期雇用労働法 第3条(一部改変)

まさに、アルバイトのために責務を果たしており、働くアルバイトの能力を有効発揮できるように努めているのではないだろうか。

・・・ん?研修マニュアルに載ってないオオモノが現れた?
夜WAVEなんて聞いてない?グリルやラッシュに蹂躙された?

・・・。
ま、まぁ現実世界でもトラブルというものはあるわけで、誰もが大きな失敗をしないなんてことはないですからね。クマサン商会も予測できないことをマニュアルにすることは難しいわけで、この事実をもってブラック企業と断じることは難しいのではないだろうか。

5.「評価」面ではブラック?ホワイト?

仕事で成果を出せば、それに応じた評価を得ることは、働く上でのモチベーション維持上大切なこと。
クマサン商会は、もちろん評価制度をちゃんと設定しています。

まず、最初は誰もが「かけだし」からスタートし「はんにんまえ」「いちにんまえ」「じゅくれん」「たつじん」とランクが上がり、最終的には「でんせつ」アルバイターと称されます。また、でんせつアルバイターになってからも、評価ゲージが200・400・600に到達するごとに、そのゲージに到達した証としてバッジが貰え、自分のネームプレートに飾ることができるわけです。また、評価ゲージが999に達すると、いわゆるカンストアルバイターと呼ばれ、金のバッジが貰えるのです。未熟なアルバイターからすると、やはりこれは憧れの的でしょう。うん、素晴らしい評価制度。

つい最近までは、でんせつ帯でせっかく上げた評価ゲージも、シフトが変わると「でんせつ40」に一律リセットされたのですが、過去の評価によって、シフト開始時の評価ゲージが200~400の間で設定されるようになりました。従業員の要望に答える評価制度の改善も行われています。

あれ?評価制度にブラックな要素、なくない???

番外編。福利厚生や社会的意義。

クマサン商会の福利厚生はどうなっているか?ぱっと思いつく限りはこんな感じでしょうか。

作業着 → ちゃんと支給され、好きなものと交換可能。更衣室完備。
試し撃ち → バイト開始前のウォームアップに。2にはなかった。
現場までの道のり → なんとヘリによる送迎。
支給品 → シャケを簡単に倒せるスペシャルウェポンを2個配布。
浮き輪 → 万が一のときのために救助用浮き輪を常備。

ぱっと思いつく限りのことを挙げてみたが、不都合への解消手段としては十分な福利厚生が与えられているのではないだろうか。

また、サーモンランという事業を通じて回収される金イクラは、街の燃料資源として活用され、街のインフラを支えるための事業となっている。ある意味公共事業に近い性質を持ち、非常に社会貢献性が高いのではないだろうか。

他にも、3ヶ月ごとに発生するビッグラン(大量のシャケによる街への侵攻)も、クマサン商会自らが積極的に動き、街の被害を食い止めている。イカ界隈にCSR部門があったら、大賞ものですよ、この働き。

結論

あれ?
クマサン商会は、ちゃんとやることやってるホワイト企業じゃね?


🦑 「1200ポイント超えてもお金を渡せ~!」
🐙 「グリルとラッシュをもう少しクリアしやすくしろ~!」
🦑 「弱ブキばかりの編成組んでんじゃね~!」
🐙 「金ウロコの最低保証をしろ~!」
🦑 「あ~だこ~だ!」
🐙 「あ~だこ~だ!」

おわりに

Splatoon3には自プレイヤーを表現するためのネームプレートがあり、そこに手に入れた「二つ名」を登録することができます。

今、自分が一番欲しいと思っているのが、

「クマサン商会の 社労士」

という二つ名。
ただ、「社労士」という二つ名が実装されておらず、手に入れることができないんですよねー。「会計士」と「弁護士」は実装されてるんですけども。

いやー、任天堂さん、実装してくれないかなー?(棒読み)

※本記事はネタ記事です。ブラック企業を擁護・称賛するつもりはありません。みんな楽しく幸せに働ける労働社会を実現しましょう。(大事なことなので2回言った)

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