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スターサファイアの微睡み

I can hear the STAR’s whispers.
The small voices tell us the secrets of the world.
(muskaのエレメント “yıldız”より)

3本の交差した光のラインが、星のように浮かぶ宝石を見たことはありますか。

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このラインは、宝石に光が当たった時だけ不意に浮かび上がり、その光源の動きにあわせて、表面を星のように美しく流れます。
こうした星の出る石はいくつか種類がありますが、代表的なものがスタールビーとスターサファイアです。

muskaでは「yıldız」(ユルディズ、トルコ語で「星」の意味)というエレメントで、スターの出る宝石を用いたジュエリーを作っていますが、その中から今日はスターサファイアについて触れてみようと思います。

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サファイアは古くから、護符や霊力を持つ石として人々に大変愛されてきました。
空のような色合いから、天の宝石とも言われ、錬金術師は四大要素である「火」、「気」、「水」、「土」のうちの「気」と結びつけていました。

その中でもスターサファイアは、別名「運命の石」ともよばれ、昔の人々はこの交差する3本の光が、「信頼」、「希望」、「運命」を表すと信じていたそうです。
はるか昔、旅人や船乗りたちにとって、夜空の星が方角を知る大切な道標だったように、スターサファイアが「運命」と結びつき、人を導くエソテリックな石として貴ばれたのはとても自然なことだと感じます。

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スターサファイアは、スターラインがはっきりと出て、光に合わせて表面で滑らかに動くことがとても大切です。
美しいスターラインが出るためには、まず鉱石の中にルチルという針状結晶が3方向に張り巡らされていることが第一条件となります。

また、内包するルチル結晶の入り方だけではなく、研磨が的確に為されているかによって、その出方が大きく変わります。
カボションと呼ばれる山のような形がふっくらと均一に磨かれていること。そして石留めをした後は隠れてしまうルースの底面に、柔らかな丸みがあること。

手に入れたばかりの時は鈍く揺れるスターラインが、日本に戻って研磨職人さんの元でもう一度磨き直しをすることで、驚くほど真っ直ぐなラインに蘇ります。
ほとんどカラット(石の重さ)が変わらないまま、見違えるように綺麗に仕上がるルースを見ていると、それはまるで魔法のようで、こうした緻密で繊細な宝飾技術に関して、私は日本の職人さんをとても信頼しています。

また、色合いについて、muskaでは複雑に濃淡が混ざり合ったものを好んで仕入れています。
水に青い絵具をそっと垂らしたときに浮かんでくる、美しいマーブル模様。

子供の頃、洗濯のりを混ぜた水に絵具を垂らして細い棒で静かに混ぜ、そこに白い紙をのせ模様をうつして遊んでいました。
一瞬一瞬で変わっていく色の揺らぎに夢中になったのを覚えています。
スターサファイアの表情はこの模様にとても似ています。

青の濃淡も石によって様々で、濃いものは藍のように深みを持ち、薄いものはほんのりとグレーがかった、青磁のような柔らかな色合い。青の層が混ざり合った様子は大変幻想的で、完全な自然の色彩に圧倒されます。

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スターサファイアにはじめて出会った時、この何層もの青と星の動きをそっと閉じ込めるような気持ちで、とてもシンプルなイヤリングを作りました。
元々は自分のイヤリングとしてデザインしたものですが、天然石の表情を生かすうえで最適なものとして、今ではmuskaの定番のデザインとなっています。

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