火曜日しばらく雑記帳・2023 CW36
海外渡航は出張で何度か経験がある。回数が多いといろいろ事件に遭遇することがあるかもしれない。そのことはブラジル在住の Kikko_yy さんが最近に記事を書かれていた。
ただ、私は運がいい。いろいろ思い返してみたが、話題に出来るような話がない。
たとえば単身赴任の身なので、この10年ちょいの間、毎年30回近く新幹線に乗っているが、特急券が払い戻しになるほど遅延したのは1回だけだ。通勤の往復で困ったこともないし、車の運転でもアクシデントに見舞われて困難な目にあったことはない。海外渡航で何かあったかな、と思い返してみても、ロストバゲージ1回(しかも翌日にホテルに届けられる程度)、遅延で乗り継ぎができず航空券を変更したのが2回、台風による遅延5時間でミールクーポンが出て成田空港で寿司を食べたのが1回という程度だ。
そういえば、もう、20年ほども前のことだろうか、ポーランド出張のときのことだ。出張先の研究所で実施する実験のために、使い慣れたドライバーとトルクレンチと先のとがった編み棒状の工具、計3点の工具を持っていったことがあった。その実験では手の感覚が非常に大事だったので使い慣れた道具がないと仕事にならない。
ロストバゲージのリスクを避けるために手荷物で機内に持ち込もうと、手提げかばんに入れたのだが、手荷物検査で引っかかった。しかし、その工具類は没収されるわけにはいかない。
出発時間が迫る中、仕方がないので、命より大事なラップトップも入れたままの手提げの鞄を追加料金を払って預けて手ぶらで保安を通過して出国したのだった。
手ぶらの旅行は何だかまったく間が抜けている。
乗り継ぎの空港は確かヘルシンキだった気がするがあまりよく覚えていない。預けた荷物は少々心配だし、手持無沙汰で落ち着かず、手ぶらでブラブラしていた記憶だけが残っている。
ただ、私は運がいい。結局ロストすることもなく、ラップトップも壊れることなく、グダンスク空港で無事に荷物を受け取った。
今さら思うが、あのときは工具類を没収してもらって手荷物はちゃんと持って出国すべきだった。無事だったからよかったものの、使い慣れた工具はともかく、命より大事な社用のラップトップが壊れたり紛失したりしたらただでは済まなかったのだ。
もともと、機内に持ち込みができない物であることは調べればすぐにわかるし、常識でもわかるはずだ。スーツケースに入れて預けるのが正解だった。
終わりがよければすべてよし、とは言うものの、運がいいだけなのに自分がよくできた人間だと勘違いしてしまうことが往々にしてあるが、実際はとても浅はかな人間だとしかいいようがない。
いったい、いつになったら一人前の大人の男になれるのだろうか。
■前回の雑記帳にも書いたが、8月の上旬はお盆や台風もあり京都の自宅に帰っていたため、オフィスやラボに出社はしなかった。いちおう、週に2回をめどに出社するという就業プランなので、8月の末はせっせと川崎のラボに顔を出した。
なるべく旬のものを食べようと思っているが、実際にはシーズンごとに店頭に豊富に並び価格が安くなっているものを買うようにしておけば、自然と旬のものを食べるようになる。それはどこの国でも同じだろう。
それよりも、季節を感じようと思えば、例えば「茄子やミニトマト・キュウリなどの野菜は通年で手に入るが、冬には絶対買わない」といった「しない選択」が大事だったりする。
・・・ちょっと気の利いためいたことを書いてみたものの、振り返ってみると、それほど厳密に四角四面に実行しているわけではない。ただ、一年を通して入手できる材料ではあっても、やはり旬のときが美味しいし安くなる傾向があることは間違いない。
季節を感じるためには季節を迎え入れる心の構えが必要である。
■先週にひっかかった音楽を少し。
1.ポーランドのシンガーソングライター、ドロタ・ミシキェヴィチ (Dorota Miśkiewicz)、トニーニョ・オルタとのデュオで "Nucę, gwiżdżę sobie (Canto Canto)" が素晴らしかった。
ポーランドのシンガーソングライターであり、ヴァイオリニストでもある。1973年生まれだがデビューアルバムは 2002 年と少し遅めだ。ジャジーで柔らかい音作りとリズムで、ブラジル音楽の要素がたっぷりだ。歌声は素直でクセのない優しい声でしなやかで柔らかい。
この曲 "Nucę, gwiżdżę sobie" は「私は鼻歌を歌い、口笛を吹いている」という意味ということで(Google翻訳)その通り楽しくリラックスした雰囲気がいっぱいだ。2008年のアルバム "Caminho" の1曲目で、これをトニーニョ・オルタとデュエットしたバージョンのようだ。
惚れてしまった。
きっと新しいアルバムが近々出るのだろう、楽しみにしている。
2.ポーランドからもう一人。カリ・サル (Kari Sal)、2017年にデビューアルバムが出たばかり、若手の新生女性シンガーソングライターだ。先週リリースの新しいシングル "If I Go Away" が耳に止まった。
ポーランドのヴァイオリニスト・Adam Baldych、スウェーデンのピアニスト・Jacob Karlzon が参加して、自由を感じさせるなかなか印象的な音作りだ。
デビューアルバムのリンクを貼っておこう。
これまで知らなかったのだが、ピアノの Jacob Karizon もなかなか良い印象だ。
たとえば、去年リリースの "Wanderlust" から "Subject to Change"。
ピアノ・トリオにシンセを効果的に重ねて空間の拡がりを感じさせ、旋律が容易にバックに溶け込まず際立つソロもいい。
3.イスタンブール出身のパーカッション、Berke Can Özcan(ベルク・キャン・オズジャン) ノルウェーのトランペット奏者 Arve Henriksen を迎えてシングル "Snake Behind Valley" 、聞き慣れない不思議な感覚の音空間が特に印象的だった。
ベルク・キャン・オズジャンのソロ・デビューアルバム、2020年の "Mountains Are Mountains" を聴いてみた。ゴングやビブラフォンなどいろいろなパーカッションによるリズムを重ね、不思議な音空間を作り出す。
なかなか面白いミュージシャンを見つけてしまった。
4.ウクライナのピアニスト、ウセイン・ベキロフの新しいアルバム "SATO" がよかった。バックのミュージシャンが、ランディ・ブレッカー(tp)、アダ・ロヴァッティ(ts)、マイク・スターン(g)、デニス・チェンバース(ds)といえば、ブレッカー・ブラザーズ・バンド・リユニオンではないか。
先週リリースされたシングル"High Ground"が耳にとまったのだった。
オリエントの雰囲気たっぷりのテーマがちょっとクセになる。
5.北京生まれの中国の女性歌手、梅朵(Méi duǒ)。優しい歌声に癒される。是非、聴いてみてほしい。
もう一曲、望海高歌(wàng hǎi gāo gē)とのデュエット「爱把两颗心连一起」も貼っておこう。
言葉も楽器も中国の雰囲気がたっぷりでありながら、どこか懐かしい古い日本の歌謡曲を思い出させる、なんだかほっとしてしまうのは私だけだろうか。
■木曜日の晩から京都の自宅に帰っていた。金曜日は京都のリビングからリモートワークでいつも通りのアップアップの一日、土曜日は朝から13.8km 走った。だいぶんマシにはなってきたが、まだまだ暑い。蝉の鳴き声のボリュームも下がって、ツクツクボウシの声が聞こえ、黄色がちらほら見え始めた樹々、赤とんぼ、萩の花も見かけ、夏の終わりをそこここに感じる。
なんとか、この暑かった夏もうまく乗り切れそうだ。以前は京都の真夏の昼、一番暑い時間帯に 15km から 20km走って "feeling alive." などとうそぶいていたが、一昨年に友人に真剣にたしなめられてから、なるべく朝早く、日陰を選んで走り、自重して距離は少し短めになるようにしている。
今年の3Qの着地は、無理せずとも、計画少しビハインドでいけるだろう。そうすれば、今年のゴールも見えてくる。
■意識の存在を意識するには意識が必要、と先週、先々週に書き散らかした。
自らの存在がいかなるものか、見るものの立場からは永遠に私達にはわからないのだろう。では、はたして、有限の時間と有限の空間と有限の関係性の中に生き、そして見るものであり見られるものとして生きる、そんな私達に「我在り」を観ずることはできるのだろうか。逆に「我が無い」状態を観ずることができるのだろうか。
私達はどこから来てどこに行くのだろうか。
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