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東方の万華鏡:ウセイン・ベキロフ, サープ・マデン, マイク・スターン, Usein Bekirov, Sarp Maden, Mike Stern

ウクライナのジャズ・ピアニストで作曲家の ウセイン・ベキロフ Usein Bekirov (*1) と出会ったのは、今年の4月末にリリースされたシングル、"Eastern Kaleidoscope" という曲だった。

ジャズ・ギタリストのマイク・スターンが好きなのでフォローしているのだが、彼が参加した新曲としてレーダーにひっかかったのが最初だ。

そして、つい最近に、この曲が収められたアルバム ”Hands" がリリースされた。


マイク・スターンは、マイルス・デイヴィスの "The Man With the Horn" で抜擢され、一曲目の"Fat Time"のリード・ギターが印象的だ。マイルスバンドでの活躍やステップス・アヘッド、その後、ブレッカー・ブラザーズでも素晴らしい演奏を聴かせる。たとえば、1992年のバルセロナでのライブ、名曲の "Song for Barry" もちろん、マイク&ランディのブレッカー兄弟のブリブリ吹きまくりソロもいいし、デニス・チェンバーズの手数の多いパワフルなドラムスも最高だ。そして、9' 45" あたりからのマイク・スターンのソロが聴ける。クリーンなトーンでのうねうねソロから導入、次第に盛り上がり、後半に入って歪スイッチを入れて疾走していく、めちゃめちゃカッコいいのだ。

・・・この動画、そのうち削除されるかもしれない。

マイク・スターンというと、ソロ・アルバムも出ているし、もちろん、パット・メセニー、ジョン・スコフィールド、ビル・フリゼルらと並ぶスターのギタリストだが、どちらかというと名脇役という感じだ。隠し味的なバッキングもそつなく、ソロも大きくはずすことはなく、アクロバティックなテクニックを見せつけるところがあるわけでない。ぱっと見ると、テレキャスターでペンタ一発系か、という姿に見えるが、実はヤマハの特注ギターで、縦横無尽にスケールを駆け巡るフレーズはまさしくジャズだ。

しかし、この人のギターは、フレージングも音色もマイク・スターン節というのがあって、聞き間違えることのない特徴がある。

Eastern Kaleidoscope も、ふと耳に入って来たときに、「あれ?これってマイク・スターンじゃん」とすぐにわかった。なぜ、ウクライナのピアニストと共演をしたのか踏み込んで調べていないのだが、最近、精力的にいろいろなミュージシャンと共演しているらしい。このように新しい世界を開いてくれるミュージシャンは大好きだ。

さて、これをきっかけに、Usein Bekirovを聞いてみると、なかなかいいではないか。強烈な民族色があるわけではなく、軽くハーブかスパイスが効いた感じだ。ちょっとやみつきになる。


さて、ニューアルバムの "Hands" では、2曲目と5曲目でマイク・スターンがギターを弾いているが、その他の曲は違う。あれ、このギターもちょっといいな、と思ったのが4曲目。サープ・マデン( Sarp Maden )というギタリストが参加している。柔らかいメローな音色でニュアンスたっぷりの余裕を感じる演奏だ。

検索してみると、トルコの有名なジャズ・ギタリストらしい。

この人もつい最近にアルバムをリリースしている。"Aperlai"だ。

トルコのジャズ・シーンはまったく不明だが、素晴らしい楽曲と演奏が揃っている。こちらも、あまり強い民族色は感じさせないが、私の好きなオリエントから中近東の香りがしていい感じだ。

YouTubeでもいくらかいい演奏が上がっている。最近はちょっと調べると姿を見ることができるのがいい。たとえば、2014年のこれ。

2014年の アルバム"Küçük Sır"(*2) もなかなかいい感じだ。

ウクライナのとある会社と仕事をしたことがある。私達が過去に開発して別の会社に販売した製品を戻入するから、それを改造して自分たち向けに再販してくれ、というのだ。しかし先方が求める特性は、一般的には改造の範囲を超えるものだったので、対応が難しかった。

すると、自分たちでその製品を分解して電動ドリルで穴をあけて改造して、ほら、この通りで出来るから、このとおりに作ってくれ、と言って来たのだ。私達は、そんな乱暴なやり方じゃ改造後の品質を保証できないしダメだ、と押し問答。

そんなやりとりが続いて埒があかず、先方の社長、技術者と営業さん、そして私達サイドの現地営業とが数名がやぁやぁやぁと来日して押しかけてきて、数日間、ああでもないこうでもないと激論を交わした。結局、結論は出なかった覚えがあるが、方向性は合わせることができ、最終日の晩遅くに、横浜の居酒屋に皆で繰り出した。

宴が盛り上がってくると、一人一人順番に立ち上がって盃を片手に高々と掲げ、各々、長々と演説をした。とにかく頑固で、アプローチは乱暴だったが、エネルギッシュな人達だった。最終的には上手くまとまって、商売の規模はそれほどでもなかったと思うが、面白い仕事だった。

ウセイン・ベキロフもサープ・マデンも雰囲気は、あのときの先方の方々を思い出すところがある。

そのころ、クリミア半島をめぐるロシアとウクライナとの紛争が始まっていたので、こちらからの訪問はかなわなかったのが残念だった。



■注記
(*1) Usein Bekirov - どう発音するのだろうか。本投稿では、英語発音でベタ読みしてウセイン・ベキロフとしたが、違うかもしれない。発音を確かめるサイトを探してみたがすぐにはわからなかった。どなたか、ウクライナ語がわかる人がいれば教えてほしい。修正すべきであれば、後から修正するつもりだ。

(*2) Küçük Sır トルコ語を勉強しなければ。。。



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