火曜日しばらく雑記帳・番外編 #2:2023 Wrap Up / Book Reading
私が読むスピードは平均よりは速いと思っているし、それなりに読書もしているつもりでいて、趣味は?と聞かれれば音楽鑑賞と読書、と答えたりもするが、読書家というほどには読んでいないように思う。
年間数百冊も読む人もいるらしいし、月間数百冊という人もいる。読書量が多いといえば内藤陳や佐藤優が有名だ。
そういえば一昨年の年末にこんな記事を書いていた。
■自分の書いたことを読み返してみて改めて反省している。今年は洋書5冊ということになりそうだ。日本語の本は勘定していないが、例年になく少ない。
量が少なかったこともあるが、今年は私の読書を見直すことになったと思う。それは、湯浅泰雄の「身体論」を読んでみてどうにも感想をうまく書けなかったことによって思い知らされた。
途中まで読んだところを書いたのが3月5日だった。
ここに書いたとおり、年始に読んだ柄谷行人の「力と交換様式」とともに、このような書を論じるには、私ではあまりに力不足だと強く感じたことだった。
入門書から少し踏み込んで、歯ごたえのある本を読んでみたわけだが、それなりの覚悟が必要であることを改めて思い知ったのだった。
まずは論の前提となっている複数の過去の著作について十分に読み込んで理解しておく必要がある。さらには、それらがどのように一般に論じられているかを幅広く知り、そうしたうえで柄谷行人や湯浅泰雄の独自の視点と新たな解釈を理解する必要がある。それらの土台のうえに新たな概念や知識が組み立てられているのだから、生半可なことで理解はできない。
とはいえ、身体の二重構造と心の二重構造、主体と客体、意識と無意識、錯覚、記憶、時間と空間、修行、仕事、などなどあれこれ考えながら読むのは楽しい。うまく表現はできないけれども、心の中でゆっくり消化している何かがあるような気がしている。理解はとても十分とは言えないかもしれないけれども、確実に私に影響はあたえているとは思う。
考えるというのは対象をつかんで離さぬことだ。忘れないようにしたいと思う。
■洋書では、バレエの歴史を振付師によって綴られた "Ballet & Modern Dance" がなかなか興味深かった。
感想を書こうといいながらこちらもうまく書くに至らず。知ることによって楽しみが深くなる。それは間違いないと思う。今年の3回バレエを見に行ったが、この本を読んだことによっても、ぐっとまた親しみがわいた。来年もこの手の本に一冊は手を出そうと思っている。
■軽い小説、しかも評判のやつでも、と、Dan Brown の "Origin"を読んだ。残念ながらサプライズも新しいアイディアもなく登場人物に魅了されるわけでもなく、イマイチと言わざるを得なかった。ファンや作者には申し訳ないが。感想は雑記帳に書いておいた。なるべくポジティブに書こうと努力はしている。
■そんな一年を締めくくるべく、今年 5 冊目になる洋書は、馴染みが多少ある素粒子物理学の一般向けの一冊、ヒッグス粒子の予測と発見にまつわる "Elusive: How Peter Higgs Solved the Mystery of Mass" を読んでいる。
重力の起源を説明するヒッグス粒子は、1964年、ピーター・ヒッグスが35歳のときに予想した素粒子だ。最近になってジュネーブにある CERN (欧州原子核研究機構)のLHC (Large Hadron Collider:大型ハドロン衝突型加速器) によって存在が確認され、ヒッグスはフランソワ・アングレール氏とともに 2013 年にノーベル賞を受賞した。
ヒッグス場による自発対称性の破れによってあらゆるものが質量を持つ。そして、なかでも質量がゼロの光子に相当するとても重たい粒子が存在するという。それがヒッグス場を作るヒッグス粒子だ。
理論の予測から約50年、膨大なエネルギーと費用を費やして、データ取得そのものも 2010年から2012年の3年かけ、その詳細な解析によって、ようやくその存在が認められた。
ヒッグスはノーベル賞受賞が決まったときに、メディア・サーカスから逃れるために姿をくらましたということだ。
理解の程度はともかく、登場する単語や理論の名前、煌びやかな理論物理学のスターたち、馴染みがあるせいかとても楽しく読める。こういう本をわからないながら貪るように読んでいた高校生のころに戻った気分で、わくわくしながら読んでいる。
他、ビジネス書では "The Bullet Journal Method"、そして "The Culture Map" もとても興味深かった。
■そういえば、今年は SF や探偵小説を読まなかった。
良き本を読むことは、良き人との会話と似ている。新しいことを知り、相手のことを聞き、相手に映る自分自身を見、語りかける。そうして私は変っていく。
私達はどこから来てどこへ行くのだろうか。