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マジック・タッチ 5: スティーヴ・ヴァイ Steve Vai "The Audience Is Listening"

ギターを右手と左手の両方で弾けるギタリストがいる、ということでスタンリー・ジョーダンへの想いを、だいぶん前に語った。両手でギターを弾くって当り前じゃないの?と思った人は、過去記事を読んでほしい。タッピングなどの近代現代のギターの奏法を駆使して、ピアノのように両手でギターを弾くことができることを言っている。

マジック・タッチ:スタンリー・ジョーダン|Shimamura, T.|note

じゃ、片手でギターを弾くこともできるんだよね、と言う人がいれば、次の曲を視聴してほしい。スティーヴ・ヴァイだ。

2020年12月末に右の肩を手術、2021年の1月に左の手首を手術、回復の途上だった1年前、左手一本で(しかも手術後ちょっと手首のサポータも痛々しい)明るい飄々とした顔でこの演奏、やっぱりこの人は鬼だ。いちおう、ギターを固定するために右手でぎゅっと握っているらしいのと、最後に一発、右手でジャラン "Ouchi!!" というのがいかにもシャレだが、やっぱりこの人はすごい。

日本のTV番組「医龍」の挿入歌にも使われていたということで知っている人もいるかもしれない。

泣く子も黙るスティーヴ・ヴァイ、鬼才フランク・ザッパに見いだされ、なんとザッパの曲のスコアをザッパのために耳コピで起こしていたと聞いたことがある(裏とってないので記憶違いのガセねたかもしれない)。

1985年にデヴィッド・リー・ロスが人気絶頂だったヴァン・ヘイレンを脱退し、自分のバンドを組んだときにギタリストとして加わったのがこの人。1986年リリースの "Eat 'Em and Smile" はなかなか衝撃的だった。ギターでおしゃべりができる、と評判になった。1曲目の "Yankee Rose"のイントロだ。

なかなかいい動画が見つからなかったが、1988年の "Just Like Paradise"

真っ赤なハート型の3本ネックのギターを弾いているのがスティーヴ・ヴァイだ。かっこいい。

私が一番好きなアルバムは最初のソロアルバム、1990年の"Passion And Warfare" だ。

最初の掛け声や、8曲目 "The Audience Is Listening" で登場する女性は、実際に彼の高校の時の先生だということだ。

この曲は、ビデオ・クリップも、CGっぽいアニメーションに時代を感じさせるところがあるものの、素晴らしくいい。

この曲も冒頭で、先生とギターでおしゃべりしている。"So, Happy!"。幼いスティーヴ少年を演じている生意気そうな雰囲気たっぷりの少年は今はもう40歳をゆうに超えていることだろう。どんなになっているんだろう。

彼は、いろいろな有名ギタリストとの共演も多く、私が気に入ってよく聴いているのは、オーストラリアの女流凄腕ギタリスト、オリアンティ(*1)との共演だ。

ターコイズブルーのネイルでオシャレ、金色に輝くポール・リード・スミスのギターをバリバリ弾きまくるオリアンティと、茶系迷彩色のアイバニーズの7弦ギターを余裕たっぷりに弾くスティーヴ・ヴァイのバトルは、二人のギターの音作りも演奏スタイルもお互いに余すところなく発揮していて見ごたえ聴きごたえがある。いくら聴いていても飽きない。

地上に降りてきた神として私が崇めるアル・ディメオラとの共演もある。1998年の "The Infinite Desire" の 10曲目 "Race with Devil on Turkish Highway" (*2)だ。

この共演だけでなく、ライブでもゲストで加わったり、イヴェントで共演したり、交流はずっと続いているようだ。つい最近、二人の対談がライブ配信された。残念ながら時間がなくてちゃんと見れていないが、あとでじっくり視聴するため(自分のため)貼っておく。

ヘビメタ・ハードロック系の音楽も縁あって有名どころはだいたい聴いてきたと思うけれども、どちらかというと、こういうギター・インストの方面に流れがちで、スティーヴ・ヴァイの先輩の海坊主、ジョー・サトリアーニなんかが好きだ。Surfing with the Alien なんてタイトルも面白いではないか。

彼のアルバムでは1989年リリースで、これも少し古いが、"Flying In a Blue Dream" が好きでよく聴いていた。


最近では女流の若手でイスラエル出身でアメリカで活躍中のニリ・ブロシュにぞっこんだ。

ニリ・ブロシュはFacebookでも、自宅スタジオからの練習など、トレードマークの Beaming Smile 笑顔とともに精力的に投稿していて楽しませてくれるが、なんといっても、やはりアイバニーズの7弦ギターをメインに、正確でメカニカルな演奏がいい。

さて、そんななか、スティーヴ・ヴァイが最近注目のギタリストを5人あげた記事が出ていた。

Steve Vai names 5 contemporary guitarists who are taking the instrument to the next level | Guitar World

なんと、そのなかの二人、Matteo Mancuso(マッテオ・マンクーゾ)とYvette Young(イヴェット・ヤング)は私のこのシリーズですでに取り上げていた。なんだか鼻高々だ。


そういえば、デイヴ・リー・ロスのバンドのハート型した3本ネックのギターを上に紹介したが、最近、やはり3本ネックの The Hydra というギターを完成させ、その演奏をリリースしている。

なんちゃって的な外観ではあるが、ベースとギター、そしてハープをうまく組み合わせたギターだ。

ギターはなんでもありで、なかなか面白い。



■ 注記
(*1) オリアンティもなかなかカッコいい。

ジミ・ヘンの Voodoo Chileを演奏したライブ動画が好きでよく聴いている。ちなみに途中のソロ 3':00あたりから、左手一本で弾いている。

(*2) アルディメオラの名曲、"Race with Devil on Spanish Highway" のセルフ・カヴァーというべきか、どこがTurkish なのか、と少し突っ込む向きもあるかもしれないが、まぁ広い心で見てほしい。

Spanish Highway はライブアルバムで聴くのがおすすめだ。"Tour De Force-Live"の5曲目。

ちなみに 4曲目は "Egyptian Danza"、これも素晴らしくいい曲なのだが、どこが Egyptian なのか、と少し突っ込む向きもあるかもしれないが、こちらもその点は広い心で聴いてほしい。

■ 関連 note 記事

ハープギターは、ひょっとしてブームになるかもしれない、とにらんでいる。


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