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火曜日しばらく雑記帳・31:ゲーム理論

物理学に適用される帰納法はいつでも不確実である。なぜかといえば、これは宇宙の普遍的秩序、すなわち我々の外にある秩序、に対する信念に基づいているからである。これと反対に数学的帰納法、すなわち出直し法による証明は必然的に服従を強制する。なぜかといえばこれは理知自身の一つの性質を肯定したものにほかならないからである。
ポワンカレ「科学と仮説」p.35-36


■今年は洋書の読書量がだいぶん少ないことになりそうだ。ちょっと本の選択を間違えたかな、という反省があるものの、こればかりは仕方ない。ギブアップしたくない程度に面白く、比較的読みやすく、しかしぐいぐい引き込まれて捗ることもない、そんな本もあるし、そんな本との出会いもあるものだ。

今年の後半になって読み始めた今年7冊目になる "Algorithms to Live By" だが、ようやく最後の章 Game Theory に来たが、まだあと 10 ページほど本文を残している。さすがに今週中には読み終えることができるだろう。

全部で11章、それぞれのトピックはなかなか読み応えあって、どれも馴染みのあるものだから読みやすい。しかも、ちょっと私が迂闊にも知らなかったことや発見もあるので面白い。

最後の章の「ゲームの理論」も、ちょうど今日読んでいたところが面白いかった。

通常、ゲームの理論は協力ゲームであれ非協力ゲームであれ、情報完備か不完備か、多人数か、ということもあるが、基本的に、それぞれが持っている情報や交換する情報を元に合理的に意思決定することが前提で検討されている。複数の人間がいたときに、個人の合理性を追求して意思決定した結果、かえって個人にとっても全体にとっても不合理な意思決定になってしまう、それがなぜなのか明らかにされる。

「囚人のジレンマ」とか「価格引き下げ競争」とかいろいろ例を耳にすることがあるだろうし「ナッシュ均衡」といったキーワードを耳にしたこともあるだろう。

本書 "Algorithms to Live By" は、ゲーム理論の比較的単純な例を挙げるにとどまり理論の詳細についての解説はされない。システム思考の類型「共有地の悲劇」に触れる程度でさらっと表面をなでた感じだ。しかし、その理論的帰結をどう改善するのか、というところに紙数を割いていて、そのへんが個人的には新しい視点だったので面白く読んでいるところだ。

各々が合理的に意思決定することで全体あるいは個人にとってもかえって不合理な帰結になるのが理論的に不可避であるならば、そもそも非合理的な意思決定になるように促せばよい。

怒り、喜び、欲、感情に流されて意思決定することはそれほどネガティブなことではない。あるいは、倫理・道徳や法律による規制も同様だ。全体的にはポジティブに働くことも往々にしてあることで、最近では進化によって獲得してきたものとして積極的に評価する動きもあるそうだ。

なるほどー、と思いつつ、やっぱり基礎の教養として、全然身につかないゲーム理論を復習しておこうかなと本棚から引っ張り出してきてパラパラ頁を繰ってみた。少々、黴臭い。

不合理な帰結は、Gameのルールで決まる。合理的な帰結に導くには、一見不合理なメカニズムをルールに導入すればよい。Mechanism Designという。進化によるMechanism Designというセクションを読んでいる。
右の本は引っ張り出してきた入門書。武藤滋夫著「ゲーム理論入門」

2002年のちょうど今頃購入して読んで以降、度々見返しているが「前提条件にしたがって丁寧に場合分けして利得と損失を計算するだけじゃん」と簡単にわかった気になってしまうわりに、そのような丁寧な作業が面倒ですぐに飽きてしまう。だから、その深遠な理論に分け入る前の入門の段階で、門をちょっと開けて中を覗いて、その前にとどまっているそんな感じだ。

困ったものである。


今月から週に2日平均で会社に行くようにと連絡が来たので、洋書の読書については、これから少し捗るかもしれない。今年2桁冊はすでに無理そうだが、9冊はなんとか達成したいところだが黄信号だ。


■ちょいと先週の金曜日に京都で用事があったので、木曜日の晩の新幹線で京都に帰って週末と月曜日まで自宅でゆっくりと過ごした。

2022/10/29 夕食 米沢牛のステーキに長野のひやおろし
2022/10/31 夕食 鯛の塩焼きに Anne de Joyeuse Camas Pinot Noir 1000円強の安旨ワイン。
ところで、Vin de Pays d'Oc - 南仏のピノ・ノワールというのはちょっと珍しい気がする。
南仏ワインといえばグルナッシュが好きだが、ワイン全体ではピノ・ノワールの枯れたそっけない味が好きだ。


10月31日は京都から必死のパッチでリモートワーク、妻と夕食を食べてから晩遅くの新幹線に乗って新横浜の事務所にまた出稼ぎ、火曜日の今日は朝いちから川崎のラボに出勤した。

弁当をつめているときに「あれ?なんかへんだな。」と思ったのだが、ふと気が付いてみれば、ご飯とおかずをいつもと逆に詰めていることが判明。

2022/11/1 昼食 鶏と青梗菜とインゲンの地中海風、カリフラワー、ほうれん草、だし巻きに麦ごはんにふりかけ

まったく我ながらボケている。

■音楽

1.若手の女性ドラマーの Roni Kaspi というミュージシャンがいいという情報をもらった。この方は、アヴィシャイ・コーエンのトリオのドラムスを叩いている。

次の記事が参考になる。

注目は新加入の若き女性ドラマー、ロニ・カスピ!アヴィシャイ・コーエン新作『Shifting Sands』│Musica Terra (musica-terra.com)


次の動画 "Read" は2年前で若干20歳のときのものだということだ。

この人も新しい感覚を感じさせる。面白い。



2.秩父英理

Beyond the Moment (日本テレビ系全日本大学女性駅伝中継テーマ曲)というのが流れていた。作曲家・ピアニストということだが、なかなか魅力的な曲を作ると感じた。

ジャズの名門「バークリー音楽大学」を首席で卒業。若手ジャズ作曲家の登竜門といわれる「ハーブアルパート・ヤングジャズ作曲家賞」を2年連続、「ISJAC/USFオーウェン賞2020」受賞!日本人初のトリプル受賞という快挙を成し遂げた

[2022/9/5 Tower Records ONLINE] 秩父英里|ジャズの名門バークリー音楽大学を首席で卒業し海外の作曲賞を受賞するなど数々の快挙を成し遂げ世界でも注目されている作曲家/鍵盤奏者のデビュー・アルバム『Crossing Reality』

今年、ついこの間にリリースされたデビュー・アルバムが "Crossing Reality" なんて魅力的なタイトルだろうか。

管楽器のアンサンブルが心地よく、媚びるところのない新しい感覚が魅力だが、それでいて押しつけがましいところがなく、何度聴いてもいい。


3.カリフォルニアのシンガーソングライター、Sara Niemietz(サラ・ニエミエツ)を最近知った。つい先週にリリースされたばかりの14曲入りのアルバム "Superman" も軽快でいい曲が集まっている。

昔のAORの雰囲気を残した音作りと、明るくて少しスモーキーな声が魅力だ。


4.やはりシュレヤ・ゴーシャルはいい。ボリウッドのプレイバックシンガーとしての活躍で、毎週のように新曲が流れてくるが、先週の曲は特によかった。

何度も繰り返し聴いている。


■土曜日の午前中のジョギングは、気温は低く走りやすいし、紅葉も黄葉も楽しめ、学園祭や古本市など人の賑わいもあってとてもよかった。ただ、ちょいと身体が重く感じられ普段よりもゆっくり目に 15.2km 走った。

2022/10/29 京都・国際会館
実績 562.6km 計画比 101.5% 2022年のゴール 670km まであと2か月。順調だ。
京都の百万遍にある知恩寺で開催されていた古本まつり
以前の人出がかなり戻ってきた


そういえば、先週に読了したベルクソンの「創造的進化」の第四章のまとめを日曜日に投稿しようとしたけれども、うまくまとめることができず、月曜日も気が急いて仕事優先、結局、今週の日曜哲学愛好家の記事は見送った。もう少し書いては消し書いては消しのプロセスが必要だと思っている。


「忙しい」は理由にならない、ということはわかっている。



■関連 note リンク

"Algorithms to Live by"はなんと8月の末から読んでいる。2か月以上かけてまだ読み終わらずしかもギブアップするつもりもない、というのは珍しい。内容についてこれまで何度か書いているのでリンクを貼っておこう。


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