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インドの音楽・サントゥールの響き:シヴクマール・シャルマ、ザキール・フセイン、ジョン・マクラフリン "Remember Shakti"

サントゥールという楽器をご存じだろうか。ペルシャ発祥の楽器で、イランやインドの古典音楽で登場する。多数の弦を平行に張った台形の木製筐体を、水平に置き(*1)、両手に持った木製のスティック状の撥で叩いて演奏する。木琴や鉄琴の変形のようにも見えるし、あるいはピアノの原型にも見える。

1990年ごろに買ったLPとCD。LPのジャケットの3人の真ん中がシヴクマール・シャルマで、インドらしく組んだ足の上に載せている台形の楽器がサントゥールだ。

この楽器を始めて知ったのは、35年ほど前だったかインドの古典音楽を少し齧ったときに、シブクマール・シャルマという人の演奏の聞いてのことだ。今、改めて調べてみたら、もともとはインドの古典音楽で使われた楽器ではないらしく、シヴクマール・シャルマが導入したらしい (シヴ・クマール・シャルマ - Wikipedia)。

上の写真のCDは Spotify でも見つかった。Rag Madhuvanti と Rag Miara Tilang の2曲入りでそれぞれが36分あまりの長さだ。

Rag (ラーグあるいはラーガ)はインドの音楽の旋法で、ラーガごとに使われる音階と旋法が決まっているという。どの時間帯にどのラーガを使うのかが決まっているなど、西洋音楽における音階と調性と比較して高度で複雑だと聞いたことがある。

基本的には即興演奏で、最初の導入は、サントゥールやシタールなどのメインの楽器からゆっくりとゆったりと試し弾きで探るような感じからスタートして、機が熟してくるとタブラなど他の楽器が入ってきて即興のやりとりをしながら後半にはいるにしたがって一緒に盛り上がっていく。ときには演奏時間が1時間を超えるようなときもある。

聴く側もその場を共有して、ゆったりと構えて聴き、だんだんと引き込まれて一緒に盛り上がってくのがよい。もっとも私のようにラーガがなんたるかもわからないまま録音された音源を聴いているだけというのは不真面目な態度としかしいようがないのだが、下手な雰囲気音楽よりぐっと具合がいいし、音色や音楽の流れに身を任せて聴いているだけでも単純に楽しめると思う。

他にもたくさんの曲がレコーディングされていていくらでも聴くことができるが、上に紹介した曲は、ザキール・フセインがタブラを叩いている。この人も超有名な人で長く活躍している人だ。リーダー・アルバムもたくさんあるし、参加しているアルバムも数知れないほどある。

2019年の "Tabla and Beyond" を選んでおこう。タブラ奏者という枠を超えた彼の音楽の一端を楽しむことができる。

しかし、ここは私が天上の神と崇めるジャズ・ギターのジョン・マクラフリンとの共演盤をあげるべきだろう。私が一番好きなのは、Remember Shaktiと名付けられたユニットだ。

"Saturday Night In Bombay"の2曲目はシヴクマール・シャルマのサントゥールの演奏も聞くことができる。

西欧の有名ミュージシャンでインド音楽に傾倒した人は何人もいるが、ここまで入り込んだ人はジョン・マクラフリンその人をおいてないと思う。なにしろ、インドのトップミュージシャンをスタンダードな編成で集めてユニットを組み、インド音楽を作曲し演奏活動したのだ。

シャクティは、数多く多岐にわたるジョン・マクラフリンの活動の一部なので、活動は断続的なのだが、2020年にも6曲いりのアルバムが出た。

相変わらずの複雑な曲の構成、エキサイティングな技の応酬とドラマティックな盛り上がり、いつまででも聴いていられる。


さて、サントゥールといえば、イラン出身でトルコで活動している Hamed Hbibpour と、トルコのミュージシャンで民俗楽器のサズ奏者、オズグル・ババとの共演でいいのがあるのを1年前だったか見つけて、以来、これもよく聴いている。おススメだ。


騒々しい世の中ではあるが、それだけに、こういう素朴な響きを聴いているとほっとして、いつの間にかサントゥールの響きの虜になっていることだろう。


■注記

(*1) 水平:
弦を含む面が、地面の面に対して概略平行、かつ、身体の軸(背骨)に対して概略垂直である状態を指している。写真と動画を見ればわかることではあるが。

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あと、インドといえば、ボリウッドのプレイバックシンガー。


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