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【読書】坂口安吾『堕落論』

同じ『堕落論』をタイトルとする選集がほかにもたくさん出ていますが、ここで読んだのは新潮文庫のものです。

著者について解説で「代表作というものがなく、エッセイが小説的で、小説がエッセイ的」と書かれていました。

「なるほどそういう作風か」となんとなく納得したものの、正直なところ、一読しただけではちゃんと「坂口安吾」を読めた気がせず、と言うか、ちゃんと内容理解もできておらず、結局、要再読リストに入っています。まいったな。積読もいっぱいあるのだけど。

一応、印象に残ったところをピックアップしておきます。

収録『教祖の文学』で、友人をボロクソに批判していますが、厳しい言葉で語られる生への肯定が、なんだか自分にはとても心強く感じられました。P121で引用されている宮沢賢治の「眼にて言う」という詩にも惹かれるものがあります。

それから、『続堕落論』(P100)に次のような文章があります。

「私の近所のオカミサンは爆撃のない日は退屈ねと井戸端会議でふともらして皆に笑われてごまかしたが、笑った方も案外本音はそうなのだと私は思った」

当時の日常の空気感が伝わってきて興味深い。戦時下を体験したことのない自分は、戦争を非日常の切り口でしか見てこなかったかもしれないと気づかされました。

力不足でまったく読み込めていないながら、どうしてか坂口安吾という人に興味だけはわいており、他日の再読を期する次第。ほかの作品も読みたいけど、ちくま文庫の全集はもう絶版のようです。図書館でも当たってみますか。

(2011/12/10 記、2023/12/24 改稿)


坂口安吾『堕落論』新潮社(2000/5/30)
ISBN-10 4101024022
ISBN-13 978-4101024028

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