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出会った一冊を大切にするために、読んだときには、雑多な所感をわずかでも言葉にして残すよ…

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出会った一冊を大切にするために、読んだときには、雑多な所感をわずかでも言葉にして残すようになりました。noteに少しづつ載せていこうと思います。

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【自己紹介】T2について

男性、既婚、2人の子持ち アポロ11号が月面に着陸した年生まれ かなり歳がいってからランニングをはじめ、休日は山を走ったりしています。トレイルランニングというスポーツですが、追い込んで走るより、景色を眺めながらのんびりやるのが好きです。 読書も同じで、好きだけど読むのが遅い。たくさんは読めないので、せめて一冊との出会いを大切にしようと思っています。 限定はしていませんが、選ぶ本のジャンルは偏っているかもしれません。昨今のキーワードは、紀行、山岳、哲学、文学あたり。もう少

    • 【読書】『オリンピックと商業主義』

      P13 オリンピックに対して、我々には二つの立場が提供されている。 一つは──こちらが多数派だが──オリンピックを、古代オリンピックから続くアスリートの崇高な祭典ととらえ、舞台裏の事情はさておいて、テレビの前に(あるいは観客席に)座るという立場である。 もう一つは、舞台裏の事情に目を向け、オリンピックにまつわる利権のシステムを追求し、国際オリンピック委員会(IOC)が掲げている理念との馬鹿馬鹿しいほどの乖離を指摘して、近代オリンピックを批判するという立場である。 (略) 前者

      • 【読書】石川憲二『海洋資源大国めざす日本プロジェクト! 海底油田探査とメタンハイドレートの実力』

        昨今話題の海洋資源メタンハイドレート(※ この読書メモは、2014年に書きました)。資源貧国「日本」の起死回生の一手と過度の期待をよせ、本書にその開発技術や計画に関する内容を予想していた自分には、ややあてが外れた感じがしました。でも、別の……もしかするともっと大きな収穫があった気がします。 著者の石川憲二さんは、国内資源開発の話題性に飛びつくのではなく、日本のエネルギー戦略のあるべき姿を冷静に見すえています。 近頃はやりの自然エネルギー(風力や太陽光)への妄信を戒め、地球

        • 【読書】百田尚樹『永遠の0』

          市立図書館で借りました。予約したときにすでに数百人待ちで、それからたぶん半年は待ったと思います。さすが人気作。(※) でも、その割りには本がきれい。ほぼ新品で、とても数百人が読んできたようには見えず「あれっ?」と思ったのですが、裏表紙の見返しを見ると「これは寄贈本です」と書かれていました。 もしかすると、あまりの待ち行列を見かねた誰かが、または、あまりに感動した誰かが、それか、たくさんの人々が太平洋戦争と特攻隊について知るべきだと思った誰かが、市民にプレゼントしてくれたの

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        • 【読書】石川憲二『海洋資源大国めざす日本プロジェクト! 海底油田探査とメタンハイドレートの実力』

        • 【読書】百田尚樹『永遠の0』

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          【読書】米原万里『魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章』

          豊富な海外経験と語学知識に基づく米原万里さんのエッセイ集。読むと自分まで海外を旅した気分になります......紀行文とはまた違った意味で。それに、くだけた文体で親しみやすい。 ── 言葉と概念は、そう簡単に切り離せないぞ、という確信を裏付ける事例がゴマンとあるのだ。(P58) ── 「エビス」は、ロシア語ではfuckの命令形に相当する。 「カツオ」は男根を意味するイタリア語の響きに限りなく近い。 以上シツコク尾籠な話ばかり立て続けに紹介したが、こういう異言語間の駄洒落

          【読書】米原万里『魔女の1ダース―正義と常識に冷や水を浴びせる13章』

          【読書】あさのあつこ、ほか『風色デイズ』

          上の娘が学校のハンドボール部に入っていて、しばしば試合を見るのですが、ルールや戦術が分かってくると、これが結構おもしろい。恥ずかしながら、大声で応援したりします。 この本は、「ハンドボール」のキーワードで、図書館ネットを検索していて見つけました。予約して、2ヶ月くらい待ったでしょうか。スポーツをテーマにした短編7作品を収録しています。 はらだみずき「おれたちがボールを追いかける理由」サッカー 梅田みか「眠れる森の美女」バレエ 川島誠「ハンド、する?」ハンドボール 大崎梢「

          【読書】あさのあつこ、ほか『風色デイズ』

          【読書】百田尚樹『風の中のマリア』

          市立図書館で予約したのですが、人気があって2ヶ月待ち。 著者、百田尚樹さんは放送作家出身の人気作家で、『永遠の0』などでも知られている……ということを、世評にうといぼくは全然知らなくって、この本は、テレビで紹介されているのを妻が見て、勧めてくれました。 たぶん、山でスズメバチに会った話を、ぼくがしょっちゅうするからだと思います。 小説ですが、ちゃんとオオスズメバチの生態に沿ったストーリーになっていて面白い。これを読むと、オオスズメバチの生態そのものがドラマチックに思えて

          【読書】百田尚樹『風の中のマリア』

          【読書】梨木香歩『家守奇譚』

          以前読んだ『村田エフェンディ滞土録』は、どうやら、この『家守奇譚』のスピンオフ作品だったようです。知らずに読んでいました。筋書きに大きな絡みは無いようですが、世界観や時代設定は同じということのようです。 ── もの悲しいような熱のとれた風が吹いてくる。さすがに夕暮れにもなると、晩夏は夏とは違うと気がつく。(P66) ── 黒い小さな虫が腕の辺りを歩いて肘の近くで止まった。そのままそこに馴染んだ、と思ったらほくろになってしまった。(P84) ── 夏の野山はその生命力でこ

          【読書】梨木香歩『家守奇譚』

          【読書】小島剛一『漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」』

          先ごろ読んだ小島剛一さんの『トルコのもう一つの顔』の続編です。 ── トルコ共和国では首相が政治の実権を握っている建前になっており(実はこの時代には軍部が国政を牛耳っていた)、大統領はほとんど名誉職である。(中略)トゥルグット・ウザル氏は、「自分はクルド人だ」と言えば投獄される時代にクルド人であることを黙秘して政界入りし、トルコ共和国の大統領になった人だ。(P141) ── トルコでは、大概の多党制議会のある国と違って、国粋主義は右翼の占有物ではない。(P214 注釈)

          【読書】小島剛一『漂流するトルコ―続「トルコのもう一つの顔」』

          【読書】永田雄三『西アジア史 2 イラン・トルコ』

          山川出版社 新版 世界各国史シリーズの西アジア第2巻です。西アジアの第1巻はアラブ、第2巻がイラン・トルコ。 とりあえず、トルコ周辺の地域史をざっと押さえようという程度のノリで読んだのですが、前提知識のない中、外国の歴史を通読するのって、なかなか骨が折れますね。とても全ての時代は覚えられない。 抜粋は「第八章 現代のトルコ,イラン」からです。 ── 1918年10月30日、オスマン帝国と連合国のあいだにムドロス休戦協定が結ばれた。そしてその協定はただちに実行に移され、ボ

          【読書】永田雄三『西アジア史 2 イラン・トルコ』

          【読書】小島剛一『トルコのもう一つの顔』

          著者の小島剛一さんは言語学者の方です。この本は紀行文として気軽に読めますが、ベースには言語学研究というしっかりしたテーマがあって読み応えがあります。 ──「君がすっかり好きになってしまったよ。今日は家内が実家に帰っていて家に誰もいないんだ。泊まりにおいでよ」と一人旅の男が初対面の人に言われた場所が、たとえば……西ベルリンの動物園とかパリのテュルイリー公園だったとしたら、同性愛に興味のない人はさっさと逃げたほうがいい。(中略)しかしそれがトルコの地方都市や農村部だったら、どの

          【読書】小島剛一『トルコのもう一つの顔』

          【読書】安東みきえ『ワンス・アホな・タイム』

          下の娘が読み聞かせをせがむので、毎週のようにいっしょに公民館の図書室へ行って絵本を借りています。(※) だいたいパパが予約した1冊と、娘がその場で選んだ2冊の計3冊を借りるのですが、家へ帰るとすぐに読んでほしがるものだから、なんだか借りた意味がないくらいあっという間に読み終えてしまいます。 そんなにお話が好きなら絵本よりもうちょっと長い話を、パパが以前から好きだった童話作家、安東みきえさんの本で読んでみようか……ということで、この本『ワンス・アホな・タイム』を書店で取り寄

          【読書】安東みきえ『ワンス・アホな・タイム』

          【読書】松谷浩尚 『イスタンブールを愛した人々―エピソードで綴る激動のトルコ』

          タイトルから想像したような情緒的な内容だけではなく、オスマン帝国末期から共和制初期にかけてのトルコを取り巻く世界情勢や外交政策にまで触れられていて、興味深く読みました。 先日読んだ梨木香歩さんの小説『村田エフェンディ滞土録』の歴史的背景が見えてきます。なるほど、「山田氏」は実在の人物をモデルにしていたのですね。 ほか、覚えておこうと思った情報をひとまず2箇所だけピックアップ。 ── 共和制初期のトルコ外交は「内に平和、外に平和」という言葉で表現される。祖国解放戦争で独立

          【読書】松谷浩尚 『イスタンブールを愛した人々―エピソードで綴る激動のトルコ』

          【読書】W・G・ゼーバルト『アウステルリッツ』

          ── 時間というものは、とグリニッジ天文台の観測室でアウステルリッツは語った。われわれの発明品の中でも飛び抜けて人工的なものなのです。(P98) 建築史家アウステルリッツが、ヨーロッパ各地の建築と自身の半生に絡めて語る戦争と暴力の歴史。聞き手である「私」が綴ってゆきます。小説とも回想録ともつかない独特な作風です。 これといった大きな展開があるわけでもなくひたすら長く続く独白のような文章なのに、なんだか熱に浮かされたみたいに読み続けてしまいました。回想に回想が重ねられて、い

          【読書】W・G・ゼーバルト『アウステルリッツ』

          【読書】梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』

          エフェンディというのはトルコ語で学者などに用いる尊称のようです。考古学留学生、村田くんのイスタンブール滞在記という形で、英国人の下宿の女主人や、ドイツ人・ギリシャ(希臘)人の同居人たちとの国や民族を越えた交流、友情が描かれます。19世紀末、オスマン帝国末期という時代設定がおもしろい。 梨木香歩さんは、短い言葉で読者の心をつかみますね。以下は登場人物の希臘人ディミトリスの台詞です。後者は引用らしいのですが。 ── 人は過去なくして存在することは出来ない。 (P27) ──

          【読書】梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』

          【読書】ブルース・チャトウィン『ウィダの総督』

          19世紀の西アフリカで権勢を誇った奴隷商人とその末裔の物語。『パタゴニア』に続くブルース・チャトウィンの2作目の長編です。主人公の奴隷商人シルヴァには、デ・ソウザという実在のモデルがいるようです。 奴隷商人というと世界史の授業では悪の権化ですが、ブルース・チャトウィンは、こういったことを善悪二元論で単純化しません。良いも悪いもともかく書いて、余計な評価は加えない。両面合わせて人間であり、だから面白いのだと、そんな姿勢が感じられます。 ここで描かれる主人公は、極彩色の欲望と

          【読書】ブルース・チャトウィン『ウィダの総督』