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vol.123「『正しい』とはなにか。みんな「報われたい」と持っている。」

前回の話、「多様性を認める、とは何か。『存在を否定しないこと』だと思っている。『理解すること』ではない」の続きです。


◆正しさとは何か

「正しさ」とは何かを説明するのはとても難しい。定義することすら難しい。「わかる」よりも厄介かもしれない。
いま言えるのは、そもそも一つではないし、人それぞれに存在すること。また一人の人にとっても、時間の経過や価値観の更新にともなって変わりうるということだ。

正しさ(的な何か)が人それぞれに存在するとき、「どんな意見でも、尊重し認められるべきか」という問題がある。
ひとまず「ある正しさが別の正しさに干渉しようとするとき、干渉されない権利が勝つ」と考えている。正しさを受け入れるかどうかはその当人が決める、ということだ。

では、干渉されない権利が侵害されようとしたら、周囲はどうするか。あいだに入って制止するのが良いように思うけれど、助けを求められてないときは?
当事者間に力の差が大きいと思えるときは?当の本人が「介入してほしくない」と意思表示したら、その「自由」との衝突をどうするか。
いろいろ考えていると、よくわからなくなってくる。

◆「私だったら」の真実と虚構

「介入」の派生形で、「代理戦争」がはじまるケースがある。
AさんとBさんの問題だったのが、CさんとDさんのように、第三者どうしが意見を戦わせはじめる事象のことだ。
小学校のホームルーム(帰りの会)でときどき起こっていたし、大人になって、会社という組織で、近隣の人付き合いで、親戚が集まった場でなにかのはずみに、起こってたと思う。
実際は、第三者が当事者の視点を理解したうえで代弁するのは、なかなか難しい。

また、人の書いたSNSを読んで、「その場面に遭遇したら、私だったらこうするだろう」と言いたくなることがある。
人生のイチ場面、緊迫した場で何を選ぶかは、そこに至るまでの経緯、長い場合はその人の半生とセットだ。「私だったら反論する」「その前に逃げ出してる」「さっさと見捨てしまえば」は、そうそう言って良いものではない、と考えている。
その人の抱えている前提条件、見えない圧力、制限された思考、心の闇、そういったものが、他者にはわからないから。
いまのところ、「代理戦争」と「私だったらどうしていた」には、反対の立場だ。

◆「わかりやすさ」の毒。

「わかる」に関して、佐渡島庸平さんがこんな話を書かれていた。

・エンタメで重要な没入感に、欠かせないのが「わかりやすさ」だ。
・わかりやすさを追求すると、どうしてもこぼれ落ちるものが出る。
・観客は気づかないが、当事者は気づき、傷つくことが起こり得る。
・だから、繊細なものを安易にエンタメ化しないよう意識している。

本題はこの後に続くのだけど、納得するところ多く、引用・要約した。こぼれ落ちるものとは、単純化や美化(物語化)によって起きる"歪曲"のことだろう。

「わかるから代弁して発信してあげているのだ」という行為の持つ"毒"がよく表された話だと思う。レベル感、深みは違うかもしれないが、「わかるわかる」の持つ危うさだ。簡単に「わかる」と言わない謙虚さ、わきまえを備えることの大切さを思った。

◆みんな「報われたい」と思っている。

多様性(等)の問題の当事者はもちろん、関わる人たちも、人は皆、多かれすくなかれ「報われたい」と思っている(仮説)。

自説を説いたら、相手が変わってほしい。"心を入れ替え"てほしい。「わかるよ」と言ったら肯定的な反応をしてもらいたい。心配してあげたらお礼を言われたい。
自分の意見をなにかの媒体で(たとえばこのnote記事で)表明したら賛同されたい。できれば賞賛を受けたい。

極端にいうと、「10努力したら、10報われるはずだ」という錯覚から起こる現象だ。

◆多様性=「美しい感動秘話」ではない
多様性、たとえばLGBTQ、生老病死や障がいを、身近に置き換えてみると、決して美しいおとぎ話ではないと気づく。

子どもの頃、病気で(というか半ばは老衰で)入院した祖父や祖母のお見舞いに何度か連れていかれた。とても嫌な、違和感のある場だった。元気なころとすっかり変わった、反応しない祖父母を見るのも嫌だったし、病院の、独特の匂い、同室のお年寄りたち全体の雰囲気が苦手で、毎回はやく終わってほしかった。
あとになって整理すると、「老い」や「死」に対するおそれ、嫌悪だった。映画やテレビドラマでは「こぼれ落ちる」部分だ。

これは為末大さんだったと思うけど、「多様性を受け入れるとは自分にとって不快なものを受け入れることである」と端的に書かれていた。とても納得感のある定義だ。
「多様性を認めるとは存在を否定しないこと。理解することではない」は、ひとつにはここから発想を得ている。


「わかる」の毒、「正しさ」の持つあやうさは、もうすこし分解・展開したい。

最後までお読みくださりありがとうございます。


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