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vol.055「戒め8か条:仕事は『自分の権力を確認する場』ではない。」

人は、行動を変えることで、いつでも変われる。
「無記名 改善してほしいこと アンケート事件」からすこしして、オフィスの壁に、張り紙をしました。

当時は少人数の独立拠点で、上司は遠方にいて、いわば監視の目がない。裸の王様なり勘違い暴君になる可能性のある環境でした。(すこし大げさに例えると、『地獄の黙示録』のマーロン・ブランド、『ア・フュー・グッドメン』のジャック・ニコルソン)

張り紙は、それを踏まえた、自分あての戒め。あらかじめフロアのみんな(他の部署含め)にさらして、宣言することで、自身への抑止効果を狙ったものです。

各項目を、解説してみます。


自分への「戒め8か条」解説 ※実際のものと、すこし表現を変えています

1.部下は上司の感情のはけ口ではない。

感情的に、あるいは逆上して、部下を怒鳴りつける。当人はカッコいいつもり、イケている指導のつもりでいる。だけど相手は尊敬も納得もしていない。 
「君のためを思って」ではじまるアドバイスが、的を射ることはない。
都合のいい言い訳、自己陶酔だ。
このセリフを上司に言う人はまずいない。ということは、自分でもわかっていて、相手を選んで、気持ちよくなっているだけだ。

2.貴方の個人的な趣味、気分、機嫌は関係ない。

上級上司に説明するための稟議書に時間をかける。「てにをは」や、見栄えの注文ぐらいしか言えない。企画を通すのに影響のない、個人の趣味に走る。
気分の悪さを露骨に出す。「オレはいま機嫌が悪い」と自分で言う。(←この世で一番ダサいセリフのひとつ)
周囲からは痛々しく見られていると思ってまちがいない。

3.任せたら「権限再分担」の感覚を持て。

意思決定を経て、部下に任せる。
気になって途中で口を出す。報告をさせる。
責任分担で認められているのに、下級管理職の決定を上級管理職がくつがえす。

いちど任せたら、その権限、裁量は部下にあるのだ。正当な根拠なく取り上げてはいけない。

4.「やる気」や「根性」を問うな。「意識しろ」は無責任。

「やる気」や「心がけ」など「反論、反証のしようがないもの」をベースにしない。反証のしようがないものは使ってはいけない。

・目に見えないもの、数えられないもの。叱責する側の解釈に依存するもの。(例:「やる気をみせろ」「根性を出せ」)
・具体的な行動に置き換えられないもの。次のアクションがわからないもの。(例:「頑張ってない証拠だ」「真剣さが足りない」)
・定性的、かつ、理屈の上では必ず正しいもの。反論のしようがないもの。(例:「世界は平和がいい」「目標は達成すべき」→「お前はそれに反対なのか」)

といった言葉は使わない。使ったらパワハラだ。
反証可能な土台で話すのを「科学的な態度」といい、反証できない土台で話すのを「精神論」または「宗教」と言っていい。

5.後づけで怒るな。先に言え。

失敗やトラブルが起きてから、「だから反対だったんだ」と怒り出す。
上級上司に問われて「実は私も心配していたのです」と逃げる。責任を回避する。

先に言わずに後から「聞いてない」は、部下の意欲を削りとる、もっとも効果的な方法だ。
「私も聞いていませんでした」は「私は報告・相談をしやすい雰囲気をつくっていません」と宣言しているのに等しい。

管理職の仕事は、たとえ完全に事後報告で寝耳に水だろうと、起こった結果に責任を取ることだ。

6.材料の揃わない状況で判断するのが上司の仕事。

仕事をするうえで、判断材料がそろうことなどない。
万全に揃って、外れのない判断をするのなら、誰でもできる。上司が居る必要はない。
材料の揃わない状況で、それでも判断するのが上司の仕事だ。制限時間内に、回答ボタンを押すのだ。そのために部下より高い給料をもらっているのだ。
「十分な判断材料が揃う」ことは永久にやってこない。

7.会社は「自分の権力を確認する場」ではない。


 
上司の究極の仕事は、エースストライカーではない。監督ですらない。
理想は審判だ。レベルの高い試合が行われるようにするのが仕事だ。プレイが流れているあいだは、なるべくホイッスルを吹かないのが、良い審判だ。

一時的な預かりものにすぎない権限を確認したくて、ホイッスルを吹く。ゲームをとめる。
選手をベンチに呼び戻す。報告書をつくらせる。日報を書かせる。立たせたまま、椅子を勧めずに報告を受ける。

「何のために自分はここにいるのか」という視点を失わないこと。

8.社長に釈明できないことはするな。家族の前で言えないことは言うな。

やっていいことかどうか、迷ったらこれ。

部下を立たせて叱責する。好き嫌いで接する。仕事でなく人格を否定する。トラブルから逃げる。公私混同する。飲み会を強制する。容姿に言及する。体に触れる。男性上司なら女性社員を個別に誘う。

「その言動は、社長に明るく堂々と釈明できることか」
「相手の家族、または自分の家族が隣で見ていて、言えるか」
と考えると、たいていは間違いがない。


以上、「中間管理職の、戒め8か条」でした。
自分宛に書いたものですが、ご参考になれば幸いです。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。


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