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vol.107「相談を受けたときの心得みたいなもの:やりがいの源泉を相手に設定しない。」

「誰にでも特技・とりえはあるもの。自分自身に置き換えてみると、『人の話を 反応しながら聴いて 内容を整理する能力』がそれに当たる」という切り口のお話を何度かしてきました。

過去に、別々のコミュニティ・違う人から「話しやすいよね/話していてストレスがない」という意味のことを言われたことが何度かあり、自己評価(自己満足)のみというわけでもない。他者からも その能力を評価(少なくとも認識)されていることになります。

性格がいい/人格者だ、とは違って、もともとの思考の癖、プラス訓練で、たまたま私の場合はその能力が強化(強調)されてきたのだと考えています。


◆相談を受けたときの心得、みたいなもの。

1.聴く技術

①さえぎらずに聴く【重要】
ワンセンテンスを、途中でさえぎらずに聴く。最後まで聴く。一文が終わっても、しばし待つ。段落がとぎれるまで聴く。
悩んでいるとき、相談ごとを抱えているときは、考えながら言葉が出ます。
ひととおり、話が出しきるまで聴く。

②反応する
相づちを打つ。軽くうなずく。真剣な話にはだまって深くうなずく。深刻な話にはため息をつく。首を振る。
要するに「あなたの話を受け止めていますよ」というサインを出す。
無言のときにノンバーバルでサインを出すのは、とても重要だし、とても有効な手法です。言葉で返すのとは違う情報が伝わります。「言葉より情報量が多い」といってもいい。

③「視線」を意図する
話を聴きながら、相手の目を見る。または顔の周辺を見る。テレビ会議のときは、映像も確認するが、意識してカメラをときどき見る。視線があったように感じる。
視線をそらすことも含めて、意図して行動する。

2.受ける技術

④間(ま)を取る【重要】
即答しない。沈黙の時間を取る。黙考する。
ポーズとして黙るだけでなく、実際に考える。考えているあいだ、黙る。
聴くときは視線を合わせる。考えるとき・話すときは時おり視線をはずす。

⑤否定しない【最重要】
否定しない。頭ごなしに言わない。茶化さない。からかわない。馬鹿にしない。
異論、反対意見を述べるときは、クッション言葉をはさむ。(例:「言いにくいこと言っていい?」「賛成してもらえるかはわからないけど」)
否定しないことは最優先事項です。

3.返す技術。

⑥質問する
登場人物、関係性、背景など、不明な点があれば質問する。特に「誰が言ったのか・思ったのか」(本人なのか相手なのか)、事実なのか推測なのかはきちんと把握する。
詰問にならないように留意する。

⑦確認する
相手の話の内容を、「これこれこういう理解でよいか」と質問する。
こちらの言ったことが伝わってるか確認する。賛成か反対かは別にして、理解や定義が噛み合ってるか確認する。納得感があるか、そこは意見が異なるのか確認する。

⑧我を出さない【重要】
お説教しない。一家言を持ちださない。「俺に言わせればさぁ」などと言わない。ダメ、絶対
自分の経験談、過去の話を引用するときは、「自分の話をしてもいい?」と一言ことわる。※ずいぶん受け取りがちがいます。
とにかく、色気、我を出さないこと。「聴く場」は、私やあなたの承認欲求を満たす場ではありません。

4.クロージングの技術

⑨「持ち時間」を確認する
はじめる前に今日の持ち時間を確認する。長くなるときは確認を入れる。
制限時間になったらいったん終了を提案する。
相談する側はかならず「時間は大丈夫です」と言うもの。「そろそろ終わりにしたいです」とは言いにくい立場です。
「彼/彼女とは信頼関係があるから大丈夫だ」はいったん忘れる

⑩「次回の権利」を伝える
いつでも再開できること、「次回の権利」があることを告げる。進展や結果を知らせてくれれば、何か返せるかもしれない、と伝える。
その場合も強制はせず、判断は任せることを添えます。

5.見返りを求めない

⑪見返りを求めない【最重要】
金銭や物品はもちろん、お礼の言葉も期待しない。感謝や尊敬を強要しない。チラリとでもにおわせない。

⑫効果が出ることを求めない
うまく行くこと、解決することを前提にしない。
アドバイスを受け入れることも期待しない。アドバイスを採用しなかったら気分を害するぐらいなら、しないほうがマシ。期待すると、そうならないとき相手のせいにしたくなる。
やりがいの源泉を相手に設定しない【最重要】。

6.フォローのしかた

⑬状況うかがいの連絡をいれる
前述したように、相談を受けたあと、基本的には、進展や結果の連絡を強制しない・相手の判断に委ねるのがいい。
委ねるのがいいのだけど、例外ルール(場合わけ)を設けています。
「主体性を尊重して放置していたら、取り返しのつかない深刻な事態になっていた」を防ぎたいからです。※それ自体が押し付け、介入なのかは結論が出ていません。

(1) 連絡をくれるタイプの場合
長い付き合いがあるなど、相手の性格・気質がわかっていて、(本来は)こまめに連絡をくれるはずのとき。連絡がありそうなのに、間(あいだ)が空いて、無応答のとき。
「便りがないのは悪い便り」と仮定して、「その後、どうですか?」と連絡を入れてみる。

(2) 自分のほうがそのテーマに詳しい場合
「詳しい」というとなんだか偉そうだけど、相手よりも経験の種類が多い・調べた量が多い・考える時間が長いテーマのとき。起こりそうな状況を言えたり、対策の選択肢を挙げてみたり、で手伝える可能性があるとき。
「思いついたので追伸です」のように、メッセージを送る。

(3) 「ほかに相談相手がいない」と判った場合
話を聴くなかで、またその後で、「ほかにこの件では相談する相手がいない」と判ったとき。特に、「直接の利害関係がなく、守秘義務を遵守する=心理的安全性の確保される話し相手」がいないとき。
一人で抱えこんで悩むリスクが高いから、不定期連絡を入れてみる。相談相手がほかにいれば、しゃしゃり出る必要はない。

いずれのケースでも、【一方的に・淡々と】メッセージを送る。電話やLINEでなく、【読んだかどうかも含めて相手が選べる】メディアで送る。

◆まとめ。

7.「話を聴く効果」は必ず起きる

「誰かに話を聴いてもらう効果」がまったく生じない人はいません。「一人で考えたほうが必ず良い決断ができる人」もいません。
単に喋って確認質問を受けるだけで、状況が好転するか、後悔の少ない決定になるか、先延ばしにせず決めるか、メリットが出る可能性は高い。

「ほうっておくべきだろうか。出しゃばり過ぎかもしれない」「でも、事態が悪化してから知ると悔いが残りそうだしな」と、くよくよ悩みながら、それでも時々口出しするようにしています。
「やりがいの源泉を相手に要求しない」と、「自分の納得感、後悔の少なさをどう確保するか」の、常にブレンドです。

人生は、「それぞれに正しそうな理の中からどれとどれを採用して、そのブレンド比率をどうするか問題」だと考えています。

8.うまくハマるときの共通点

もちろん、常に出来ているという話ではなく、わすれずに意識したとき。紙に書き出して、目の前に置いているとき。よほど気をつけていると、しばしのあいだ効果が持続する。
「話しやすいですね」(喋ってしまった)
「ストレスがないよ」(心理的安全性がある)
となるようです。

それと、相性の問題。
もともと相手に好意をもっているとき。敬意を払っているとき。相手の能力(魅力)がそもそも高いとき。考えるのを手伝っているだけのとき。
この事象が起きる。
「おかげで考えがまとまったよ。ありがとう!」
となります。
こちらはほとんど何もしていません。


「聴く技術」は、「話す能力」と同じかそれ以上に価値(たとえばお金)を生む、と仮定を立てている。できれば、加齢や老害で衰えさせたくない能力のひとつです。実践練習と改良を続けたい。
賞味期限の長い、終わり(完成)のないテーマ、定期的に整理してシェアします。

最後までお読みくださりありがとうございます。


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