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vol.138「シンギュラリティが実現したとして、私たちは恩恵を受けられるのか問題」

人工知能はどこまで進化するのか。人間はどう備えておけばいいのか。「すこしだけアンテナを張っておくテーマ」のひとつです。

前回のあらまし:
・AIが最も得意なのは 記憶と計算と高速処理だ。苦手なのは、質問すること。失敗すること。感情的になること。
・だから人間はその領域の能力を鍛えるのがいい。向こう10年や20年は使える能力だ(仮説)。
・それを実現したのが「ドラえもん」。ドラえもんの提供価値は「問題解決」ではなく「感情処理」だ。

続きで、これらの仮説を考えるベースとなった、少年時代の妄想と、読んだ本(いわば元ネタ)の話をします。


◆ヤマシタ少年の妄想と、父の答え。

子どものころ、晩ごはんを食べながら、こんな話をしたことがあります。

ヤマシタ少年:
・将来、人間どうしが直接殺し合う戦争から、ロボットが代理で戦う時代になるんじゃないか。
・そして人類は先に滅びて、残ったロボットどうしが戦い続ける。
・最終的には動くロボットもいなくなって、コンピュータが時々通信で情報交換し合う。シーンとした地球になると思う。

ヤマシタ父の答え:
「いやそうはならないと思う。科学技術、特に軍事技術が平等に提供されることはなく、国家が独占する。ほとんどの人間は、相変わらず働かされるし殺し合う世界のままだろう」

小学生か中学生だったか記憶があいまいだけど、少年相手にふつうにシビアなことを答えたなと、後で思ったものです。

◆「ドラえもんの価値は感情処理」の元ネタ。

前に読んだ本の読書メモから。

・知的な行動は2つの行為を駆使している。「探索」と「評価」です
・「目的を持つ」とは意味と物語で考えるということ

・コンピュータができることは2つだけ。「とても簡単な計算」と「覚えること」
・コンピュータのリソースは限られており、すべての手を調べない

・機械学習=値の調整そのものを、コンピュータに自動的にやってもらう
・プログラマの主な仕事は、勉強そのものでなく、勉強の仕方を教える
・「知性」は目的を設計できる能力。「知能」は目的に向かう道を探す能力

『人工知能はどのようにして「名人」を超えたのか?』(山本一成)より要約


「そもそも、コンピュータとは何か」
「強いプログラムは強い指し手にしか書けないのか」
「人間の思考から離れることでAIは強くなった」
「なぜ囲碁だけが特別なゲームだったのか」
という構成で、読みすすむほどに惹かれた一冊でした。

山本さんは将棋ソフト「Ponanza(ポナンザ)」の開発者です。
・将棋だけでなく、ゲーム全般と人間と計算機の歴史
・「どうやって」だけでなく「なぜ」の疑問への答え
をやさしく解説しています。

「これまでの経緯」と「なぜそうなのか」、つまり「全体背景」を知ることはいつでも、理解を深め、興味を維持する二大要素だと考えています。

「将棋ソフトが強くなった要因」を整理してみると、

(1) 常に成長する。後戻りがない
(2) 疲労しない。集中力が低下したりしない
(3) ITコストの低廉化で、時間あたりの経路探索量が格段に増えた
(4) 複数のソフト間で公開しあい、真似しあって、成長しできる
(5) 内部で常時、何万回も対戦を行い、学習して強くなる

つまり最初から「人類はいつか追い越される」状況にあった。そのことに囲碁界も将棋界もしばらく気づいてなかっただけ、ということになります。当時の将棋連盟会長のコメント等、歴史ドキュメンタリにもなっていて、非常に面白かった。

なお、将棋や囲碁ソフトは、単機能のプログラムであり、「人口知能」と呼んでよいかには議論があるそうです。

いずれにせよ、将棋や囲碁、オセロのような
・「現在の状態」がdigit(有限な分散した数値。整数ではないけど整数的)で、
・「次の選択肢」もdigit(有限)で、プレイヤー2人で一回ずつ交替で行動(選択)するもの

において、人間はソフトにもう勝てない。再逆転は起こらないのだとわかります。

◆「シンギュラリティ」に私たちは触れられるのか問題。

将棋や囲碁のソフトから言えることは、
・量的な処理で、人間はコンピュータに勝つことはもうない
・ただし、現時点、きわめて限定的な機能にとどまっている
ということです。

レイ・カーツワイルによると、
・指数関数的な成長率そのものが、指数関数的に成長している。未来のテクノロジー予測は、「今日の予測」でしかない
・人間のテクノロジーと人間の知能が融合する。人間の脳の限界を、人間と機械が統合された文明によって超越することができる
・2030年代~40年代頃には、人類を超える人工知能が出現し得る。われわれはサイボーグ、「人体3.0」になる。
(『シンギュラリティは近い』より意訳)

つまり、生きているあいだに、シンギュラリティが実現する、ということになる。
※「成長率」は、「ムーアの法則」のような「●年で◆倍に性能が向上する」といった指標。

ひとつ勘違いをしていたのが、私は「人類vs人工知能」という構図を勝手に想像していた。子どもの頃の妄想もそうです。
カーツワイル氏は「人類+人工知能」になる、と言っています。

一方で、歴史上、現在まで、あらゆる技術や発見は、平等に提供されなかった。

・公開される情報はつねに、実際の最先端技術よりは旧い
・はじめは例外なく高価である。または秘匿、独占される
という鉄則があります。
文字も、活版印刷も、外洋船も、飛行機も、最初に使えるのは「権力者」か「お金持ち」でした。

A.「近い将来、私たちはサイボーグになる」=人類全体が恩恵を受ける、置き換わっていく 説と、
B.「その技術は、力を持つ少数が独占する」=広がることはなく、人類の大多数はいまのまま 説。

どちらの説が打ち克つのか、まだよくわかっていません。
父は後者の説を採っていたわけですが、私の予想は、インターネットやパソコン・スマホと同じように、時間差で商用化されて提供されていく、です。

答え合わせできるぐらいまでは、長生きしたいと思っています。


前回も述べたように、科学技術の発展に関する未来予想はまあ当たらないもの。その前提で、「それでも考えてみることに意味がある」と考えています。

最後までお読みくださりありがとうございます。



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