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どこかの誰か、一人

「小説はな、一人一人の人間の身体に沁みていくだけだ」
「小説で世界なんて変えられねぇ。逆転の発想だ。届くかも。どこかの誰か、一人」

これは、伊坂幸太郎さんの小説『モダンタイムス』に登場する伊坂好太郎の言葉だ。

割と昔に読んでいたんだけど、最近ふと思い出した。

素敵な言葉だなぁと思う。



世界を救いたいとか、人を変えたいとか、熱い想い・志を持ってる人にこの1年たくさん会ってきた。

彼らはすごい。
尊敬している。
彼らの仲間になれるように努力した時もあった。

でも、しんどかった。
気持ちが付いていかなかった。
そして、離れた。

今は、善意だろうが人に介入しすぎるのは良くないんじゃないかと考えている。
正直、人の人生に踏み込むことに少し恐怖心もある。

それまでやってたことから逃げた後、
どうしようか。
とぼんやり考えながら、何もせず、効率とか社会的意義とかを完全無視した、のんびりとした日々をしばらく過ごしていた。

そして、ある時冒頭に書いた『モダンタイムス』の言葉をふと思い出した。

行動させるんじゃなくて、ただただ人間の身体に沁みて、溶けていく。
人の人生に大きく影響を与えることもなければ、世界を変えることもない。

でも、沁みていく。

いいなぁ、こういうの。

そんな小説を書きたいとは思ってないけど、そんな人間がいてもいいんじゃないかな。

自分の言動とか行動が、身近な人に、どこか知らない人に、ただ沁みて溶けていったら、それってものすごく素敵なことだと思う。

夢や目標みたいな、そんな大層なことじゃなくて、あえて言うとしたらスタンス?みたいなもの。


届くかも。どこかの誰か、一人

これくらいが、ちょうどいい。

#コラム #エッセイ #伊坂幸太郎 #それでいいんじゃないかな

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