守られている
夫が運転する車に乗っていた。
体調が悪かったので、寝てて良い?と聞くと、
「いいよ、着くまで寝ときぃ。
…安心して、目が覚めても天国じゃないから」
と、よく分からない冗談を言う。
どうも、と目を閉じて、
うつらうつらしていた。
キキーーーっっ
「うわっ、あぶねぇ!」
夫の声とすごい急ブレーキに訳もわからず目を開けると私の左側から白い軽自動車が突っ込んでくる。
距離的に、
これ完璧にダメなやつだ。
衝撃に備えて、シートベルトをつかみ体を硬くした。
……が、衝撃はこなかった。
私の席からは、相手の車がめり込んでいるように見えるが、手のひら一枚の差で止まっていた。
神様、仏様、どうもありがとうございます。
口から出てきたのは、そんな言葉。
相手の車から、「ププッ」と、ごめんね、みたいなクラクションの音がして、何事もなかったかのように、離れていく。
私は寝ていたので真実は知らないが、夫曰く、向こうが死角からつっこんできたらしい。
運転を続けながら、夫が思い出したかのように「あっ」と言う。
「あまりの衝撃に思考停止してたけど…車から降りて……
相手の無事を確認する必要があったね」
車から降りて…のところで、何をするんだと聞いていたが、相手の心配をしていた。
何はともあれ、あの変な冗談が本当にならなくて良かった。
何かに守られているなと感じることがある。
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