見出し画像

どうして人は間違いを起こすのか

どうして人は間違いを起こしてしまうのか。どの本を読んでも、人間にはエラーが起こり、それを認識できないことが多々証明されてしまっている。今日は3つの本を参考にした。

1つ目は、失敗を隠さずに学習や進化の機会として取り込んでいく難しさと、その必要性をあらゆる観点から論じる本。

2つ目は、私たちは誤りをどう考え、どう感じるかに注目し、間違いとの付き合い方を前向きに論じる本。

3つ目は、実際にオバマ政権時代にビンラディンを確保する時のプロセス等を引き合いに、成功した際の意思決定の物語を説明される良い本。


1.そもそも人は間違いを認識できない
2.人は無意識的に自己防衛をする
3.人は失敗を反映できない
4.自分に批判的な目を持ち続ける
5.間違いから向き合うことから逃げない
6.エラーに陥らないために
7.まとめ


1.そもそも人は間違いを認識できない

多くの場合、人は自分の信念と相反する事実を突きつけられると、自分の過ちを認められるよりも、事実の解釈を変えてしまう。次から次へと都合のいい言い訳をして、自分を正当化してしまうのだ。時には完全に無視してしあうことすらある。

失敗の科学

これは認知的不協和というが、自分の信念と事実とが矛盾しているときに、間違いを認めずに、否定をし、正当化をし始めてしまう。認知的不協和が恐ろしいのは、自分が認知的不協和に陥っていることに滅多に気づけない点にある。

ダートマス大学の経営学教授、シドニー・フィンケルシュタインは、名著「名経営者が、なぜ失敗するのか?」で、致命的な失敗を犯した50社強の企業を調査した。すると組織の上層部に行けば行くほど、失敗を認めなくなることが明らかになった。

失敗の科学

皮肉なことに、幹部クラスに上がるほど、自身の完璧主義を詭弁で補おうとする傾向が強くなる。その中でも、通常一番ひどいのが CEOだ。例えば我々が調査したある組織のCEOは、45分間の聞き取りを通してずっと会社が被った災難がいかに自分以外の人間によりもたらされたかを並べ立てた。

失敗の科学

特に経営者は認知的不協和を受け止められないという。研究では最も失敗から学ぶことができないのは、最も失うものが多いトップの人間だったという。

2.人は無意識的に自己防衛をする

私たちは誰でも、何かを尋ねられた時は必ず3つの答え方の中の一つで応じる。答えを知っているときは、正解を答える。答えを知らず、自分は知らないことがわかっているときは、わからないことを認める。もう一つは答えを知らないのに知っていると思っている場合、自信を持って根拠のないことを答える。

まちがっている

私たちは自分が知らないときにということを知るのが苦手で、それを回避するために話を無意識に作り出すという。

他人がこちらの信念を否定すると、相手にはちゃんとした情報がないと考える。あちらの信念を否定しているときは、自分にはちゃんとした判断力があると考える。相手が執拗にこちらに反対してくるときには、今度は「頭悪いんだ」の思い込みに移る。

まちがっている

信念を否定されると、相手をバカにするのだ。心の習慣は、自分が遭遇する最初の証拠が真実について決めてであり続けることになり、それを守ることにより偏りを起こすのだ。

自分が信用している人からの情報を自動的に受け入れる傾向があるのと同じだけ、馴染みのない人、一致できない人からの情報は自動的に否定する。

まちがっている

ということもあるように、確信にすがったほうが、楽で安心なので、そちらに流れがちなのだ。私たちの誤りに対する抵抗は、少なからず、確信があまりに少なく、あまりに感情が多いまま取り残されることへの抵抗なのだ。

3.人は失敗から学ぶことができない

「クローズドループ」とは、失敗や欠陥に関わる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象や状態を指す。逆に、「オープンループ」では失敗は適切に対処され、学習の機会や進化がもたらされる。

失敗の科学

というように、「クローズドループ」ではなく、「オープンループ」の状態を作り、失敗から学んでいく必要性を説いている。

失敗から学ぶには二つの要素が不可欠だということだ。一つ目はシステム。失敗はいわば理想と現実のギャップだ。(中略)。二つ目に不可欠な要素はスタッフだ。

失敗の科学

まずシステムだが、これは見送られがちだ。

1601年、ジェームズ・ランカスター館長は、海上で死者を出す最大の原因だった壊血病を防止する実験を行なった。彼は4隻のうち1隻の船員に一日スプーン3杯のレモン汁を飲ませた。すると他の3隻では、航海の中間地点までに船員278人のうち110人が壊血病で死亡したが、レモン汁を飲ませた一隻の船員は全員が生き延びた。

失敗の科学

これは重大な発見だった。以降の航海で不要な死を防ぐ方法が見つかったのである。しかし、イギリス海軍がこの発見に沿った新たな食事のガイドラインを制定したのは、驚くべきことに194年も後のことだった。

失敗の科学

さらに、英商務省が商船隊向けに同様のガイドラインを制定したのは264年後の1865年になってからだった。

失敗の科学

時代が違うので現代にこのタイムラインは参考にはならないと思うが、情報が使用に適したシンプルで効果的な形に置き換えられるまでに時間がかかるようだ。

(チェックリストを導入すると)カテーテル挿入から10日間の感染率は11%から0%に下がった。この結果に注目してチェックリストを導入したミシガン州では、18ヶ月で1500人の命が救われ、1億ドルの医療経費削減となった。

失敗の科学

ちなみに、医療事故のケースでは、シンプルだがチェックリストが効いたようだ。

4.自分に批判的な目を持ち続ける

バイアスの罠から抜け出すためには、科学的マインドセットが欠かせない。肝心なのは、自分の仮説に溺れず、健全な反証を行うことだ。我々はつい、自分が「わかっていると思うこと」の検証ばかりに時間をかけてしまう。しかし、本当は、「まだわかっていないこと」を見出す作業の方が重要だ。

失敗の科学

「批判的なものの見方を忘れると、自分が見つけたいものしか見つからない。自分が欲しいものだけ探し、それを見つけて確証だと捉え、持論を脅かすものからは目を背ける。このやり方なら誤った仮説も(中略)都合のいい証拠をなんとなく集めることができる」

失敗の科学

自分への批判的な目を持って科学的に学ぶ癖をつけなければいけない。

「真の無知とは、知識の欠如ではない学習の拒絶である」

失敗の科学

会社を経営する立場であるからこそ、失敗から学ぶシステム作りと、自分自身が失敗から学ぶ人になりたい。

5.間違いから向き合うことから逃げない

人がその自分の過去の信仰を間違いと認識すると、「その奴隷的従順のガラスは砕けるー元に戻せないほどばらばらになり、継ぎ合せないほどめちゃくちゃになっている」

まちがっている

仮に確信を砕かれると、心中穏やかではないものだ。この本でも、キリスト教を信じていた信者が、その信仰の間違いに築いて、自分の芯が何かわからなくなって追い詰められる話も記載されている。

自分の相手には相手の別個の内面世界があることがわかるまで、話を聞いて、聞いて、聞かなければなりません。

まちがっている

追い詰められるのではなく、自分は他の人とともに生きることを理解しなければならないという。

他の人の世界観に関心を持ち、それによって動くためには、その間、自分自身の世界観を放棄しなければならない。小説のような愛といっても通常の意味とは違う。自分と似たものの中で牧歌的に暮らすということではなく、差異の中で穏やかに喜んで暮らすということだ。通常の人間の領域を超えたところから与えられるのではなく、苦労して、ゆっくりと、手間をかけて獲得される。

まちがっている

このように、差異の中で楽しく暮らすことが大事なのだ。実生活で間違うという経験はそもそも経験としてかけているものではない。驚き、まごつき、魅了、刺激、愉快、喜びなどが間違いの楽観理解を成している。

実生活で間違う経験の幅を考えに入れるには、楽観と悲観の2つのモデルを対峙させるのだ。そうやってまちがいを受け入れて前向きに捉えて進んでいくことが大事なのだ。

6.エラーに陥らないために

「決定者」に必要なのは、意思決定の才能ではない。必要なのはルーティーンや習慣なのだ。

世界が動いた「決断」の物語

この本では冒頭で言い切っている。

複雑な意思決定に取り組む人々の集団を見ていると、そこには素晴らしいドラマと深い感動があることがわかる。しかし、そのスローな熟考の物語は大抵、激しいスピーチや軍事侵攻、ドラマチックな商品の発売など、もっと突発的な出来事の陰に隠れてしまう。人は複雑な意思決定の結果まで早送りして、そこに至る経過を飛ばしてしまいがちだ。

世界が動いた「決断」の物語

我々が受け取る表層情報は、大抵成果が出た瞬間の武勇伝に集約されるが、本当はそこに至るプロセスが成功を手繰り寄せる。

人が日常生活で次々と下す決定は、大体ほぼ狭帯域(中略)しかし人生で本当に重要な決断、難しい選択は、単一の尺度だけで理解することはできない。複数の変数が含まれるだけではなく。その変数は全く異なる枠組みに基づいている。

世界が動いた「決断」の物語

決定力!世界を導く4つのステップでは人間のエラーを科学的に証明していたが、この本では実際にそのエラーを乗り越える時に行うことがわかる。

アウトサイダーを招き入れることでチームはより優秀な刑事になり、手掛かりに対してより注意深くなり、自分が持つ隠れたプロフィールを進んで共有するようになった。多様な集団の方が優秀な刑事だった。ー同質の集団よりも正しい容疑者を特定する回数が多かったーが、自分たちが下した決定に対する自信ははるかに低かった。多様な集団の方が正しい決断を下す可能性は高いが、同時に、自分たちは間違っているかもしれないという考えに抵抗がなかったのである。

世界が動いた「決断」の物語

決断における初期のエラーである"視野狭窄"と"確証バイアス"を防ぐためには、多様な意見が出る集団にした方がいいのだが、そうすると組織内に不確実性が増す。外部を入れるべき。

ビンラディンに関する決定では、最初の屋敷の偵察から急襲そのものの最終計画まで、プロセスのほぼあらゆる段階で分析官は自分が提示している評価にどれくらいの自信を持っているか採点するようにはっきり指示された。

世界が動いた「決断」の物語

自信のレベルを採点するように指示することは、様々なレベルで生産的な戦略であるとわかる。その理由は情報がどれだけ真剣に受け止められているかを他人が判定できるからだけでなく、何かについて自分がどれだけ確信しているかを考えるという行為そのものが、見落としている可能性のある事柄について考えるきっかけになるからである。

世界が動いた「決断」の物語

オバマは前政権の大量破壊兵器に関する失策を踏まえ、多面的・客観的に物事を捉えようとし、不確実性を重視していたことがわかる。個々人に自分を客観評価させるべき。

「分析がどんなに厳密でも、想像力がどんなにたくましくても、人に絶対できないことは、自分が決して思いつかないことのリストを作成することだ」とノーベル賞を受賞したトーマス・シュリングが述べている。

世界が動いた「決断」の物語

どんなに頭が良くてもクリエイティブでも、人は自分が持つ素材外のものは調理できない。なので、まずは素材を網羅的に増やすべきなのだ。

レッドチーム(敵の行動を模倣する役割)はビンラディン探しに不可欠な要素だった、イラクの大量破壊兵器捜査の時のような、意思決定を揺るがす盲点や確証バイアスをどうにか避けようと、当局は意図的にこの手法を行使した。

世界が動いた「決断」の物語

ライターが集めたレッドチームには新鮮な目でプロジェクトを見られるように、調査に全く関わっていなかった新たな分析官が2人はいった。そして、ライターは様々な事実が現場の状況にぴったり適合するような別の解釈を47時間以内に考えだすよう指示した。

世界が動いた「決断」の物語

レッドチームを入れて、フラットに逆の立場のシナリオを準備している。

全ての変数をマッピングし、思い込みについて「レッドチーム」を行い、様々な選択肢のしなりをを作ることができるか、結局最終的な決定は大抵科学より、芸術に近いことがわかる。マッピングと予測ーそして会話に持ち込まれるしてんの多様性ーによって、当初見えていなかった新しいありえる選択肢が開拓されたり、最初の直感が間違っていた理由を確認できたりする。このやり方でオバマのチームは例の屋敷に彼らの宿敵がほんとうに住んでいる可能性をだんだん理解するようになった。

世界が動いた「決断」の物語

この本は、マッピングをし、予測をし、決定するという3ステップについて話をしているが、ここまでの内容はマッピングのごく一部の抜粋。

他にも専門家はチンパンジーより未来を予測できない話や、決断をする際のデフォルトネットワークの話もとても興味深かったが、自分は基本決断は直感で即決しがちなので、大事な意思決定の場合はきちんとこういったステップを踏もうと思った。

7.まとめ

人は間違いを認識できないので、間違うパターンを科学的に理解しながら、自分をその科学のフレームにはめた時にまちがっていないかを見つめる。どんなに嫌な感情が湧いても逃げないという繰り返しだなぁと思った。

この記事が参加している募集

最近の学び

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?