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知っていれば人を見るのが楽しくなる行動経済学

行動経済学は非常に面白く、ビジネスのみならずあらゆる人間関係で重宝するエッセンスが多い。

人間がかならずしも合理的には行動しないことに着目し、伝統的な経済学ではうまく説明できなかった社会現象や経済行動を、人間行動を観察することで実証的にとらえようとする新たな経済学。

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様々な書籍から、理性的な判断と違うことを感情的に判断してしまうことがわかる。

「理性は常に感情の奴隷でしかない」

デイヴィッド・ヒューム

という言葉があるように、自分のことを理性的だと思っている人ほど、感情の支配に気づかないんだと思う。

わたしたちは不合理なだけでなく、「予想通りに不合理」だ。つまり不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される。消費者であれ、実業家であれ、政策立案者であれ、私たちがいかに予想どおりに不合理かを知ることは、より良い決断をしたり、生活を改善したりするための出発点になる。

予想どおりに不合理

というように、まずは人間の不合理さを理解することが、人間と生きていく出発点になると言える。


1.情報は見せ方で意思決定を変えられる
2.タダにすると判断価値が市場価値から社会価値へ変わる
3.お金を払うときには無意識に勘定科目分類をする
4.一度所有するとその価値が爆上がりする
5.アンカリングを打たれたら終わり
6.不合理さに対抗するためのコミットメント


1.情報は見せ方で意思決定を変えられる

同じ意味を持つ情報であっても、焦点の当て方によって、人はまったく別の意思決定を行うという認知バイアスのことである。 情報のどこにフレームを当てはめるかによって、意思決定が異なるというフレーミング効果でもある。

「手術をするかどうか」の選択で、医者からの「生存率95%」と「死亡率5%」という提示、中身は同じなのに受け取る印象が異なる。同様に、豚肉の表示で「赤身80%」と「脂肪20%」は意味は同じだが、後者の表示ではお客が逃げてしまう。

経済は感情で動く

言っていることは全く同じなのに人は全く違う印象を持つ。

値の張るメイン料理をメニューに載せると、例えそれを注文する人がいなくても、レストラン全体の収入が増えるということだ。なぜだろう?大抵の人は、メニューの中で一番高い料理は注文しなくても、次に高い料理なら注文するからだ。

予想通りに不合理

価格の見せ方を工夫するだけで収益を変えることができる。

2.タダにすると判断価値が市場価値から社会価値へ変わる

様々な実証実験がなされていくのだが、例えば店頭でリンツのチョコ(高価)かハーシーのチョコ(安価)を「お一人様ひとつまで」と売り出したところ、リンツ15セント、ハーシー1セントのときはハーシーを買う人の割合は27%だったが、リンツ14セント、ハーシー0セントにすると、ハーシーを買う人の割合は69%までアップしたらしい。

無料の本当の魅力は恐れと結びついている。無料のものを選べば、目に見えて何かを失う心配はない。ところが、無料でないものを選ぶと、まずい選択をしたかもしれないという危険性がどうしても残る。

予想通りに不合理

というように、無料は失う恐れをなくすので価値を上げる。

そのほかにも、路面でキャラメルを1ドルであげる時とタダであげる時を比較する実験では、1ドルの時は58人/hが、3.5個を持って行ったところ、タダの時は、207人/hが、1.1個持って行ったようだ。先ほどのチョコの時と同じように、ただになると4倍ちかく持っていく人がふえる。一方ただは持っていく量は減る。

キャラメルが無料の時、学生たちはずいぶん自制したわけだ。もっというと、ほぼ全員がごく単純な社会規範の決まりを適用していた。

予想通りに不合理

というように、タダは市場的交流ではなく、社会的交流に切り替える。

わたしたちは二つの世界に住んでいる。一方は社会的交流の特徴をもち、もう一方は市場的交流の特徴を持つわたしたちは、この二種類の人間関係にそれぞれ違った規範を適用する。また、これまで見てきたように、社会的交流に市場規範を導入すると、社会規範を逸脱し、人間関係を損ねることになる。

予想通りに不合理

というように、これらの二つの世界の存在を理解することは大事だ。

例えば私がタイヤの交換を手伝ってくれと頼めば、多分あなたはこう考える。「そうだな、ダンは大体においていいやつだし、ちょっと手伝ってやるか」だが、私がこう頼んだらどうだろう。「タイヤの交換を手伝ってくれないかな。えーと、3ドルでどうだい?」するとあなたはこう考える「おいおい、冗談じゃない。なんてやつだ!俺の時間にそんな価値しかないっていうのか?」つまり、私が頼み事をして、そこに3ドルを持ち込んだ場合、あなたは「そいつはいい!ダンを手伝ってやれる上に、3ドル稼げるぞ」とは考えない。

予想通りに不合理

お金を出すと、社会的交流ではなく、市場的交流になってしまい、善意ではなく価値の交換になってしまう。

3.お金を払うときには無意識に勘定科目分類をする

とある実験だと、160ドルを払ってチケットを2枚購入したが、劇場で紛失していたことに気づいた人は、9/10の人が観劇を見合わせたが、160ドルの現金を用意して劇場へ行き、チケットを買おうとしたら現金を忘れていることに気づいた人は、半数以上が代わりにクレカで決済をしたという。

前者は「娯楽」の勘定。後者は「一般」の勘定で会計をしたという。いわば"心の会計"の違いなのだ。

「小遣い」の勘定一つを見ても、女性は自分の小遣いをさらに9つの心の勘定、ここでは「心理的出納袋」に分類する。日用必需品、小さな贅沢、文化、教育、へそくり、安全、服、化粧、お出かけ、雑費、より良い暮らし、の9袋。

Mind over money

とあるように、確かにお金を払うときに何と比較するのかという心持ちは全然違う。

4.一度所有するとその価値が爆上がりする

プレミアムのバスケットの試合のチケットに抽選して当選した人と、外れた人とでチケットの価値をどう評価するかの実験が行われいる。

チケットが外れた学生たちは一枚に約170ドル払う意志を見せた。この学生たちが払うといった金額はウィリアムの場合のように、お金の他の使い道(スポーツバーの飲み物や食べ物に使うなど)によって調整されていた。一方、チケットが当たった学生は一枚のチケットに約2400ドルを要求した。こちらの学生たちは、ジョーセフのように、この経験が重要で、生涯忘れない思い出になるだろう。

予想通りに不合理

というように、チケットの評価額が14倍違う。

しかし、本当に驚くべきは、これだけの学生に電話したのに、買う側が支払ってもいいと思う全額でチケットを売ろうという学生がただの1人もいなかったことだ。これはどういうことだろう。抽選の結果が出る前は、喉から手が出るほどバスケットボールのチケットを欲しがっている学生の一群があった。ところが、結果が出た途端、学生は二つのグループに分かれた。チケットの所有者と、非所有者だ。試合の素晴らしさを想像する学生と、チケットの代金で買える他のものを想像する学生との間に感情の隔たりが生じた。

予想通りに不合理

このように一度所有をすると、感情は体験と機能に分離し、その評価価格は14倍異なるのだ。

5.アンカリングを打たれたら終わり

これは価格交渉などで、先に価格を提示すると、それがアンカーになりそれを起点に交渉が進むので、先に言ったもん勝ちということだ。これはアンカーを先に打たれたらもうダメなようで、

(もし相手が提示してくる価格が本当に高いとき)相手にアンカーを下ろされる前に用意していた価格に集中するのが正解だろう。相手の出た値段を巡って争う限り、同じくらい低すぎる値段で対抗したとしても双方とも最初のアンカーに係留されていることに変わりはない。それなら交渉を一旦白紙に戻して、新たな出発点から再交渉する方がいい。

Mind over money

ようだ。ただ、

アンカリングが特に強力になるのは、人がその状況に慣れていない時、情報源が信頼できる時、気分が落ち込んでいる時と考えられる。面白いのは最後の発見で、背景を探ると人は気分が落ち込んでいるときは認知プロセスに普段よりも神経を使うという事実がある。この場合、神経を使ってもろくなことにはならない。高い値段の理由になる情報を探し始める。

Mind over money

新参者は気をつけなければいけない。

滑り出しから黒真珠を世界最高級の宝石として「アンカリング」したおかげで、以後ずっと黒真珠にはその価格がついて回ることになった。これと同じで、わたしたちは新製品をある価格で買うとその価格にアンカリングされる。

予想通りに不合理

黒真珠はこのアンカリングにより価値が出たものであるようだ。

6.不合理さに対抗するためのコミットメント

これらの人間が無意識で行ってしまう不合理に対してどう対応するか。そのためには、あらゆる日常シーンに置いてコミットメントが重要であるという。コミットメントによって生まれる合理的感情が自分をコントロールする能力や他人の合理的感情を見極める能力を養うという。

例えば未来の自分に対する影響を考えて、現在の行動を決める。わざわざ金を出してスポーツジムに行くのがいい例だ。長期的な欲求(痩せたい)と短期的な欲求(おいしいもの食べたい)が食い違っているような事象に対して、行動の自由を自ら制限し、選択肢を排除することができる。

自己コミットメントを行えば、誘惑が突きつけられる前に、短期的な欲求に屈してしまった時の代価を釣り上げることができる。

愛と怒りの行動経済学

という抑止が働くようだ。自己コミットメントによって合理的感情を捉えていくことが、より生存確率を上げることができそうだ。

本日の参考文献


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