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門前仲町「たにたや」さんと、季節のお弁当を考える。(その10 芒種)

「芒(のげ)ある穀るい稼種(かしゅ)する時なればなり」

すこしわかりやすくしますと、「芒(のげ)」とは、米や麦などイネ科の植物が実った時、その果実の先端にある「針状の突起」のことを指しています。イメージすると分かるのですが、ひとつひとつの実の先端から、針のように細く伸びているものが「芒」。

そして「稼種(かしゅ)」。「稼ぐ種」と書きますが、ポイントは「稼ぐ」の「稼」なんです。辞書を読み解くと、

1、うえる(植) (穀物を育てるために、種子や苗を地中に埋める)
2、うえつけ  (穀物を育てる為に、種子や苗を地中に埋める事)
3、耕作 (田畑を耕して穀物・野菜などを栽培すること)、農業の仕事
4、実り ( 草木や穀物などが実を結ぶこと)、実った稲の穂


といった、実は「農の営み」にまつわる語源なのです。つまり「芒種」は、「芒のある穀物の種まきをする時期」ということになります。

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今回のお弁当は、10回目/24節気。いよいよ、種の植え付けが始まりました。これまではより風土、「その土地のことを知る」という意味で、たにたやさんのこれまでの料理や内容、そしてお弁当から生み出される新しいアイディアは、平たくいうと「これまでの実績の振り返り」をいただいた、という感謝の気持ちです。僕も今年の2月から5月の間で、2週間ごとに、おいしくお弁当をいただくことで、その振り返りができていたかと思います。

一方で、お弁当をつくりはじめたたにたや谷田さんでは「変化」が生まれました。実は、次のお弁当を、先に告知して予約のお弁当を作り始めたのです。そして、さらに「酒のあて」として「ワインとお酒のアテ詰め合わせ」を始めました。これまでは、その時まで、「待つ楽しさ」から抜け出て、どんなものが出来上がってくるのかの「楽しさの欠如」が起こり始めたのです。

なるほど「先読み」「準備」をし始めたわけです。これには理由があります。二十四節気でもそうですが、世の中には「段取り」が存在していて、自ずと、その「段取り」に乗っている自分(ぼくら)が存在していた、もしくは存在しているからこそ、できることがあるのだと。

もう少し言うと、この流れが「好きか嫌いか」という部分が重要です。

最初に「芒種」と書きました。

「芒のある穀物の種まきをする時期」

いずれの穀物も「生まれること」が、命のスタートで、これまで人間はその「生まれる行為」について、止めることはありませんでした。もちろん「人口減少」「高齢化対策」ということで「生まれてくること」が減少しているのは確かですが、新しい命が生まれることについては歓迎であり、むしろ尊いものだと感じています。

僕は「creative start」(クリエイティブスタート)が大切だと思います。つまり、ゴールが大事なのではなく、その過程(プロセス)ではなく、スタートだと。オペレーションや段取りは当たり前で、それよりも何より、「スタート」することが大事だと感じています。

もちろんこのお弁当のプロジェクトは「始めたこと」が大事でした。だからこそ「続けていくこと」「段取りしていくこと」「調べること」「振り返ること」が発生し、だから「次はこうしよう」「やっぱりやるべきじゃなかった」という、また「未来のスタート位置」が見えてくるのです。

谷田さんも「人材を登用したい」「新しいプロジェクトを進めたい」と気合が入っていましたが、「全てはスタート」だと思っています。

僕は「始めるスタート」「やめるスタート」を経験し続けていますが、「スタート」していないと、この場にいない自分が存在しています。先日も、とあるプレゼンテーションで、あるスタート位置にたどり着いたら、そこにまた新たなスタートすべき、プロジェクトが現れました。「ああ、仕事がないのではなく、企画ができないのでなく、能力がないのではなく、ダメダメでもなく、すべてスタートを切った自分がいたから」と思ったのです。

だからこそ「クリエイティブ・スタート」が、2021年の自分のテーマだと思っています。

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