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minneのユビキタス言語「minne辞典」の浸透と運用の工夫

こんにちは。
GMOペパボ株式会社のハンドメイドマーケットサービス「minne」でデザイナーをしております、sziaoreoです。

こちらの記事ではペパボのデザイナー組織の中で開催されている「Designer's MTG」第21回、情報アーキテクチャスキルエリアのナレッジシェアで発表した「minneのユビキタス言語『minne辞典』の浸透と運用の工夫」の内容をご紹介していきたいと思います!

「minne辞典」とは、minneのユビキタス言語の中でも特にユーザーコミュニケーションで扱われる言葉や表記についてまとめた用語集です。

文字通りただの用語集であれば、使う言葉を集めて、表記のOK・NGを記載するだけで完結します。 しかしminne辞典では、チームメンバーに業務で自然に使ってもらうための工夫を施しています。
その結果、言葉の定義を具体的に可視化した図やラインティングの際の注意事項など、さまざまなコンテンツを含んだデザインシステムになりました。

施した工夫の指針は大きく分けて3つです。

❶ 誰がどのように使うのかを考える

minne辞典は2つの役割を持ちます。

  • 1つ目は、働いているメンバーが「あれ?どの言葉を使うのが正しいんだっけ」と迷った時やレビューの時に意思決定のスピードを向上させたり、判断の揺れを防ぐ役割

  • 2つ目は、新しくチームに入ってきたメンバーに早い段階で「minneとはどんな存在か」を「言葉」という切り口でも理解してもらう役割

「存在を言葉の切り口でも理解してもらう」とはどういうことかというと、
例えばminneは以前、リブランディングの過程で作品を販売するページの呼び方を「ギャラリー」から「ショップ」に変更しました。これは「ハンドメイド作品の販売を一種の働き方としても捉えてほしい」「より販売を意識したハンドメイドに目を向けてほしい」という意図によるものです。

呼び方が変わるだけで、ユーザーも、minneで働くメンバーも、ページの見方やアプローチが変化するはずです。「何をどう呼ぶか」を知ることで、「何を大切にしているか」が分かりやすくなり、ユーザーコミュニケーションの解像度が上がります。

このような考え方から、minne辞典の冒頭にはまず「minneを端的に説明する自己紹介文」のフォーマットを記載しています。
「私たちminneは何者か」の理解を促し、各メンバーが説明を行う際に内容に揺れが生まれるのを防いでいます。

❷ 言葉を本当の意味で理解してもらう

minne辞典を読んだメンバーが表記のOK・NGが「わかる」だけでなく、得た知識を業務に生かせるようにならなければ、結果的に意味をなしません。

例えばminneでは「出品」ではなく「販売」を使うことを知ったとしても、ユーザーに案内したり機能追加を考える時「どのステップが販売なのか?」「販売のステップでは具体的に何が起きるのか?」を理解し、他のメンバーとも認識を揃えた上でコミュニケーションを行わなければ結局混乱が起きてしまいますよね。

メンバーに言葉の理解を促すために実際に施している内容としては以下のようなものがあります。

まず言葉の一覧には表記のOK・NGだけでなく、意味や範囲なども示す。
例えばminneでは、minneのユーザーになることを「新規登録」ではなく「会員登録」と呼びますが、この項目の備考には「会員登録によってできるようになること」の例なども記載しています。

また使用頻度が高く、重要な言葉に関する説明は一覧表から切り出してさらに詳細に記載し、必要に応じて図を用意し構造を視覚化する。
例えばminneで取引されるものは基本的に作品と呼びますが、カテゴリーの区切り方では呼び方が変わるので、それを図で示しています。

取引フローではステップが細かく、購入者と販売者の視点ごとに呼び方が変わるので、こちらも図を使って示しています。

図にするためにはその構造がきちんと整理されている必要があります。
うまく図にできない時は構造や名付けを再検討する必要があるということなので、名付けを考える時にも図に起こす作業はとても役に立ちます。

さらにminne辞典を使いこなすための工夫として、ライティングの際の注意点も記載する。
例えば、過去minneでは「おすすめ」という言葉が使われすぎていたことから、そのタッチポイントでの意図が曖昧になってしまうケースが多く見られました。
このことから「おすすめ」以外のボキャブラリーも獲得していこうというライティング方針が生まれましたが、この理由を明記しておくことでテキストレビュー時に当事者の作業的・心理的負担を軽くすることができます。

❸ 表面的な統一だけが正義ではない

使う言葉を整理していると、「統一すること」に囚われがちです。
しかし用語集の本来の目的は「ブランドが意図した体験を生み出すこと」なので、サービスとしてより内外のコミュニケーションを改善するためにあえて複数の呼び方を用意するケースもあります。

例えば、minneにはメンバーがピックアップした作品を集めたコンテンツを見せる手段として、「特集」「簡易LP」「リッチLP」があります。
過去「ハンドピック」「新ハンドピック」などの呼称も混在して混乱を招いていたので、この3つに呼び方を統一しました。

しかしユーザーからすると(毎日更新される特集は別として)簡易LPとリッチLPは見た目に少し差はあれど、両方とも「何らかのイベントに合わせて作品とコンテンツが集められたページ」です。
「では簡易LPもリッチLPも『特設ページ』で統一!」としてしまうと、この2つはメンバーにとっては用意するための工数も準備も全く違いますから、認識に齟齬が起きたまま施策を進めて途中で混乱が起きてしまう可能性があります。
「特設ページって軽い方?重い方?」という確認が追加で生まれ、新たにハイコンテクストな言葉が生まれてしまう可能性さえあります。

そこでユーザーコミュニケーションの時に使う言葉のルールと、チーム間でのコミュニケーションの時に使う言葉のルールで分けることにしました。

minne辞典の中では以下のように記載しており、状況によってその時使用したい言葉が変化する場合、ケース別の対応を記載したり利用イメージも合わせてつけることで柔軟に対応できるようにしています。

用語集を作ると、「こういうケースはどうしたらよいですか?」「こういう時どうしても変になっちゃって…」などの相談が高い確率で出てきます。

その際は「統一すること」に囚われず、「サービスとして一番コミュニケーションやその速度が改善する」ことを考えると最適解を導き出せるはずです。要はその呼び分けのルールがきちんと構造化されていて、きちんとわかるようになっていればいいわけで、それも用語集の役割なんですね。


「minne辞典」の浸透と運用の工夫まとめ

実際にシステムとして機能して役に立つことや、メンバーに業務の中で自然に使ってもらえるようにするために…

❶ 誰がどのように使うのかを考え…

新しくジョインした人に向けて、言葉を切り口にminneを理解してもらうツールとしてもminne辞典を扱いました。

❷ 言葉を本当の意味で「理解」してもらうために….

必要に応じて一覧表以外にもコンテンツや図を用意して、より業務に生かせるツールを目指しました。例えば…

  1. 表記のOK・NGだけでなく、その意味や該当URLなどを記載する。その言葉が示す事象がどの範囲までを示すのかなども併記する。

  2. 使用頻度が高く、重要な位置付けの言葉に関する説明は、一覧表から切り出してさらに細かい説明をつける。また必要に応じて視覚的にも把握できるようにする

  3. ライティングの観点からの注意点も記載

❸「統一」に囚われず….

あえて複数の言葉や呼び方を残すなどで、サービスのコミュニケーションの質と速度を改善させる方法を模索しました。


「minne辞典」の現在

職種関わらず、さまざまなメンバーが販促企画やエンジニアリング、UI設計などでテキストやラベリングのレビューの際に意思決定基準としてminne辞典を活用してくれています。
さらに最近では他のメンバーからも自主的に「新しくこの言葉を統一したい」といった検証や辞典への追加作業が行われるようにもなりました。

デザインシステムを用意することはそもそも大変なプロジェクトですが、それを長期的に運用し、チームの中で機能する状態を整えるのはより難しく骨が折れる作業です。それを少しでも効率化するために、様々な仕組みを用意していくことも、ある種のデザインと言えそうです。


以上、「minneのユビキタス言語集『minne辞典』の浸透と運用の工夫」をご紹介しました! 少しでも対ユーザーやチーム間コミュニケーション改善のお役に立てたら幸いです。


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