見出し画像

Travis JapanのSTAYに想う“続けることへの挑戦と覚悟”

ジャニーズJr.の7人組グループ、Travis Japan(通称トラジャ)。今年の年明けから約半年間かけて巡った全国ツアーで、SMAPの名曲「STAY」をカバーした。

トラジャは現在、「+81 DANCE STUDIO」というYouTubeチャンネルで、JOHNNY'S CLASSICSというコンセプトの下、先輩方の曲をダンスでカバーするパフォーマンスを行っている。

私はこれまで+81についていろんな考察をしてきたが、その中で、“歌ではなくダンスのカバーだから受け入れられている”という持論に触れた。


この動画を開けば好きな人の声を聴くことができ、その声で踊るJr.を見ながら、まるで卒業アルバムをめくるかのように輝いていた「あの頃」を思い出すことができるからだ。

そんな中、2021年10月1日のザ少年倶楽部で「STAY」を披露した。
テレビで放映されることで、きっとトラジャ担以外やライブに未参戦・未視聴のトラジャ担、最近気になりはじめた方にも観ていただけたと思う。

トラジャはとにかく上手いし、歌詞もいいのでジンとくる。けれど、そうではなくてもっとこう……私だけだろうか。この曲は、SMAPの曲は「例え本人の声じゃなくとも歌いつづけてほしい」と思うのは。


消えゆく未来と消せない過去

2006年の「Pop Up ! SMAP」というアルバムに収録されている「STAY」。
このときSMAPは15周年だった。10年後、解散を目の前に、ベストアルバムのファン投票の中でもNo.1人気になったこの曲は、まるでSMAPを体現しているかのようだ。
みんながものすごく仲がいいわけではないけれど、でもSMAPはずっとSMAP。そう思っていた。

国民アイドルになるまで、決して順風満帆ではなかった。売れない時代、メンバーの脱退や逮捕……すれ違いや言い争いもあったと思う。それでもいろんなことを乗り越えてきた。

それでも、最大の壁は乗り越えられなかったのだ。

Let you know 大事なのは続けること
楽しいだけでいれない時も

このフレーズを歌っていたのは誰でもない、リーダー・中居正広。
あのとき、5人は、6人はどんな思いだったのだろうか。


メンバーの気持ちは実際に知ることはできない。けれどあの解散騒動で納得しているファンは、私が知る限り皆無だった。正直メンバーが納得しているとも到底思えない。

だから未だに傷も癒えず、美談にすることも出来ない。嘘でも「これで良かったんだよ」なんて言いたくもない。

あんな形で消えてしまうなんて、夢にも思わなかった。
SMAPはこの先も、たった5、60年だけでも一緒にいるんじゃなかったのかって。
"STAY"という言葉とは裏腹に、未来が消えた瞬間だった。

私は母がファンなので、子どもの頃からずっとSMAPを聴いて育った。けれども、たくさんの曲や思い出、そんな過去を残して、SMAPは魔法がとけたかのように消えてしまったのだ。

あの時、不自然なほどSMAPの痕跡はなくなり、後輩たちにカバーされることもない時期が続く。SMAPに興味がなくてもジャニーズファンであれば、そうでなくても聴いたことのあるあの曲も、あの曲も、あの曲も。

もう二度と、SMAPの曲を歌われることはないのだと思っていた。

それが変わり始めたのは、ハッキリとは覚えていないが多分中居くんが退所したころからだと思う。
SMAPの過去曲がテレビで流れるようになり、中居くんとジャニーズ事務所の後輩が堂々と絡むようになっていた。KinKi Kidsを筆頭に、Kis-My-Ft2やSixTONES、そしてV6。など。

まさかだった。
そんなことは今までありえなかった。どれだけ事務所に貢献していようともジャニーズでは事務所を退所すると、まるで初めから存在していなかったかのように、触れられることはほぼなかった。

けれど、ここ最近その変化は顕著だ。中居くんはそのために退所したのかな、なんて都合のいいことを思ってしまうこともあるほど。

そのタイミングで、トラジャがSTAYをカバーしたのだった。


終わりのないゴールまで走り続けること

「続けることは大事」だと思っていても、実際は難しいことの方が多い。特に明確なゴールがないときは終わりが見えないからだ。

一般人であれば「定年まで頑張ろう」とか「目標貯金額まで頑張ろう」などあるかもしれない。
けれどアイドルはどうだろう。定年もなければ周年すら、10年の次は15年、20の次は25、30……と終わりが見えてこない。自分の人生を振り返ったとき、続けるか辞めるかの分岐点に立つことは決して珍しいことではない。

近年、事務所からの退所やグループの脱退、休止、解散が相次いでいる。

長年アイドルとして走り続けてきてくれた。やりたいこととはいえ、つらいことの方が多いと思う。私たちファンのために、何度も自分を犠牲にしてまでアイドルを続けてくれた自担に感謝こそすれど、責めることはできない。寂しくはあるけれど。

本人たちが望むのなら、納得するのならそれでいい。

そう無理やり自分に言い聞かせることもある。
でもSMAPは違う。無念の方が大きい。納得できないことの方が大きい。諦められないことの方が、遥かに大きい。

そういった無念や傷、後悔、希望……いろんなものを背負った「STAY」という曲をカバーすることは、+81で既存のファンの心を昇華したようなものではなく、むしろ自分たちへの、トラジャの道しるべのようにもきこえた。

メンバーもファンも、これから先に待ち受ける未来は輝かしいになると信じている。
けれど、それが一体いつまで続くのか? 栄光が過去のものとなるのではないか? 特にデジタルコンテンツ社会の現代において、消費のスピードや量は格段にあがり、新しいものがどんどん生まれる。今は輝いているかもしれないけれど、歳を重ねて自分たちがその立場になったとき、痕跡はどうやって残していくのか?

果たして自分たちはいつまで続けられるのか?

――続けさせてもらえるのか?

続けることは大事、でも難しい。ましてトラジャは7人グループ。全員の足並みを揃えて見えないゴールと戦いつづけ、走り続けることはできるのだろうか。

続けたいという願いがあっても、叶うのだろうか。


この曲はよく結婚式で歌われているけれど、ザ少年倶楽部でも例にもれずタキシードを着て歌っていた。
同じくタキシードを着て歌う「White Love」という全く世界観の異なるこの曲がファンヘのラブソングなのだとしたら、もしかしたらSTAYは“これから先もずっと7人でいることの誓いの証”なのかもしれない。

今7人で一緒にいることが本当に楽しくて幸せで、ずっと一緒にいたいと思っているTravis Japanだからこそ、続けることへの挑戦と覚悟を背負っているのかもしれない。

だからこそTravis Japanはゴールを決めたのだ。
「5、60年」でもなく、「永遠」でもなく、「鼓動止む その時まで」。
アイドルとしての”Travis Japn”の鼓動が止むまで。そして一人の人間としての鼓動が止むまで。

誰のためでもない、自分たちのために。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?