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『乙夜之書物』と『政春古兵談』

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加賀藩の兵学者・関屋政春が収集した武辺噺集『乙夜之書物』『政春古兵談』に関するあれこれ
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#明智光秀

『乙夜之書物』に見る明智光秀の告白

『乙夜之書物』に見る明智光秀の告白

 『乙夜之書物』では、明智光秀は、謀反の企てを、重臣たちに、篠村八幡宮ではなく、亀山城で告げたとする。

【現代語訳】 明智光秀は謀反を企て、「6月1日に丹波国の亀山城(京都府亀岡市荒塚町)から出陣して、中国地方に向けて出陣する」とお触れを出して、軍勢を亀山城に集めた。
 この時、斎藤利三は、丹波国の居城・黒井城と亀山城の中間に位置する笹山城(兵庫県丹波篠山市北新町)にいて、6月1日の昼頃に亀山城

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『乙夜之書物』にみる「本能寺の変」

『乙夜之書物』にみる「本能寺の変」



■『乙夜之書物』(上)95条 ※Recoの翻刻
一、天正拾年の春より、中国毛利家為退治、羽柴筑前守秀吉、備中の国ゑ発向して、同国高松の城をかこむ。為後巻と、毛利右馬輝元五万余騎にて出張して秀吉に対陣す。依是、為加勢、惟任日向守光秀可下向旨被仰出、信長公も頓て御出勢可在と也。又、四国為退治と三七信孝を大将として織田七兵衛信澄、長岡越中守、筒井順慶、丹羽五郎左衛門、堀久太郎、池田勝入、以下各先、大

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この土日は

この土日は



菅野俊輔『真相解明「本能寺の変」』(青春新書)
萩原大輔『異聞 本能寺の変』(八木書店)

を読み返して、今までの記事を加除修正する。

【今までの記事】

◎本能寺の変

『乙夜之書物(いつやのかきもの)』にみる「本能寺の変」
https://note.com/sz2020/n/nf71ad0ba9b95
「光秀折檻事件」(『政春古兵談』と『乙夜之書物』)
https://note.co

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萩原大輔『異聞 本能寺の変』

萩原大輔『異聞 本能寺の変』

 『乙夜之書物』も、『政春古兵談』も、学者は存在を知っていたが、翻刻が無いため、検討が後回しにされてきた。萩原大輔氏が読んだところ、「本能寺の変」の時、明智光秀は本能寺にいなかった、鳥羽にいたと書いてあることが分かった。これが史実であれば、今まで書かれた歴史小説や、制作されたドラマは史実ではないことになる。
 ちなみに、学説は、「明智光秀は、13000人の兵で本能寺を取り囲み、織田信長を討った」で

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明智光秀の謀反表明(『乙夜之書物』)

明智光秀の謀反表明(『乙夜之書物』)

 ──明智光秀は、いつ、誰に、どこで織田信長を討つと表明したのか?

 2020年NHK大河ドラマ『麒麟がくる』では、明智光秀は、亀山城で重臣たちに謀反を表明すると、刀を抜き「間違っていると言うのであれば、今すぐわしを斬れ」と言っていました。

 通説では、「羽柴秀吉への援軍だ」として兵を呼び寄せて亀山城から出陣し、途中の源氏の足利高氏(後の尊氏)の倒幕挙兵地・篠村八幡宮(京都府亀岡市篠町篠)で源

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「光秀折檻事件」(『政春古兵談』と『乙夜之書物』)

「光秀折檻事件」(『政春古兵談』と『乙夜之書物』)

斎藤利三は、

 ──今度謀反随一也。(『言継卿記』天正10年6月17日条)
 ──かれなと信長打談合衆也。(『天正十年夏記』天正10年6月17日条)

と言われた人物である。「信長打(信長討ち)」(織田信長殺人事件)の主犯は明智光秀、実行犯は彼の家臣たち(中心は丹波衆)で、最重要人物は斎藤利三だというのである。斎藤利三は明智家の家臣をまとめる家老であるから最重要人物なのであろうが、山科言継が、な

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明智弥平次≠明智左馬助別人説

明智弥平次≠明智左馬助別人説

1.通説(同一人物説) 三宅(明智)弥平次と明智左馬助は同一人物で、明智光秀の叔父・明智光安の子である。

 弘治2年(1556年)9月26日の明智長山城の落城の際に自害した明智光安は、子・岩千代(後の明智光春)を明智光秀に託したという。明智長山城からの脱出に成功した明智光秀一行は、桂郷谷汲村に住む叔父・山岸光信(実は明智光秀の父・明智光綱の弟で、山岸家に養子に出された)を頼り、明智光秀は、妻子や

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『乙夜之書物(いつやのかきもの)』にみる「本能寺の変」

『乙夜之書物(いつやのかきもの)』にみる「本能寺の変」

「私が住む富山市には江戸時代に宥照寺という寺があり、光秀を祀る塚と墓が築かれていた。寺は明治時代に廃絶し、いまは跡形もないが、光秀重臣の明智左馬助の兄弟が住職だったため、光秀の塚を築いて供養したと伝わる。私がこの光秀塚について調べていた矢先に出くわしたのが、「乙夜之書物」の記述だった」(萩原大輔氏談)

※宥照寺(富山市辰巳町)の光秀塚:当時の住職が明智光秀の兄だという。(出典『越中奇談集』)

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