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夫婦生活の拒否は離婚原因になるのでしょうか?色々と事情はあるのですが--連載10

(1)相手方配偶者から(夫婦生活)セックスレスを理由に離婚請求をされています。

確かに、もう何年も夫婦生活はありませんが、お互いに求め合わなかったですし、夫婦の問題として話し合ったこともありません。けれど、相手方は離婚のみならず慰謝料も払えと言っています。払う必要はあるのでしょうか。また自分が悪いのでしょうか。色々と理由があるので、単にセックスレスだけを理由にされるのは違うように思います。

上記のような相談も度々受けることがあります(月に100を超える離婚と修復の相談をお受けしますが、数年前と比べると以前よりはだいぶ減ってきているようには思いますが。)。

(2)レスを理由に離婚は成立するのでしょうか?

結論からいえば、離婚原因にあたることもある、もう少しいえば、離婚原因の要素の一つにあたることはある、という若干曖昧なものとなります。

連載を読んでいただいている方は、ピンと来ているかと思いますが、セックスレスが仮に離婚原因に該当するのであれば、民法770条第5項の“婚姻を継続し難い重大な事由”にあたります。


なお、婚姻を継続し難い重大な事由に該当して離婚となるには、不貞のようなハッキリとした離婚原因と同程度のレベルが要求されます。

ですので、セックスレスのみを理由として進めるのは難しく、その他の原因とセットでの扱いとなってきます。
なので、弁護士さんが、「裁判をしたら勝てますよ」と言う場合には、それ意外の原因・要素から判断をしているのだと思います(とはいえ、なるべく裁判にはしたくないわけですが)。

それ故に、離婚原因の要素の一つにあたることはある、という話しになるわけです。いずれにしても、原因の一つにはなるわけですから、状況によっては慰謝料も認められる余地はあります。

ちなみに、夫婦関係には問題なく、普段から仲が良いのに、夫婦生活だけを理由なく拒まれ続けた・・、というのであれば、問題になる余地はあるでしょうが、もともと夫婦関係が悪ければ、そんな気にもならないでしょうし、「性欲は夫婦関係に関係ない。拒まれ続けたのだから、慰謝料を払ってもらいたい」というのは理由にはなりませんから、あくまで状況に応じて判断されるというのは、当たり前のお話しです。

(3)仲が良いがために話題には出せないものでもあるわけです

とはいえ、仲が良いが故に、なかなかセックスレスについて夫婦の間で話題にできないという問題は、暗黙の中に隠れてはいます。

やっぱり人っていうのは、愛情を求める生き物ですし、愛情を求める以上は、パートナーであるからこそ、その愛情のエッセンス的なものを注いでもらいたいとは思います。

けれど、その注いでもらいたいものというのは、人それぞれですから、愛してると言ってもらいたい人もいれば、そうでない人もいるし、スキンシップを求める人もいれば、そうでない人もいるわけで、そこが噛み合っていなければ、たとえ仲が良いと思っていても、確認し合わないと、次第にズレは生じてもくると思います。そして突然の離婚請求・・、青天の霹靂・・、そういう事になる場合もあります。

なお、セックスレスとは違いますが、性的に不能(子どもを作ることができない)であることを隠して結婚をしてしまったケースでは、それを問題として、離婚請求が認められたものはあるようです。

(4)依存と異性関係とセックスレスとの関係

ちなみにですが、前述の愛情のエッセンスとは違った話になりますが、セックスレスなど、特に今まで微塵にも問題に挙がっていなかったのに、急な、とってつけたような理由で、離婚を迫られる場合、または突然別居をしたいという話が出ることも多く、そういう場合には、相手方配偶者に異性関係のあることは、残念ながら多いものです。

「内の夫、妻に限って…」と言われる方もおられますが、実際、ご相談に来られた方の話しが、今ひとつ離婚原因がはっきりしない場合に、「本当のところは?」と聞きますと、「実は付き合っている人ができて・・」という話しがよく出てきます。この点はプロでなくとも気付くところですが、相手方を信じたいという気持ちや、傷つきたくないという気持ちが、真実を見ないようにしているところもあるかもしれません。

当職も、無理に異性関係に繋げたいわけではありませんが、お話をお聞きしていると、誰かと比較されたような話が相手方から出てきている事があり、その場合には、異性関係が無いとしても、好きな人がいたり、離婚をすればその人にアプローチができるんじゃないかと考えている方は案外多いものです。

いずれにせよ、話のつじつまの合わない部分や、腑に落ちない点がある場合にそこに浮気を当てはめて考えてみると、やけにしっくりくることがあります。ただ、疑いを持った場合でも、すぐに言い寄ったり追求したりする事は避けてください。

修復をされたい場合には、それが遠のいてしまうかもしれませんから。また別の連載でお話しをしていこうかと思いますが、ご夫婦の間で依存関係のあるような場合には、お互いの間で、気付かない内に、気持ちのエネルギーの奪い合いをしていることもあり、そしてどちらかの方がエネルギーを吸い取られ切ってしまい、そしてエネルギーの自己回復ができない程の状態になってしまえば、外からエネルギーを貰いたくもなってしまいます。それも一つの浮気の原因だったりもします。

(5)証拠の取得は慰謝料請求のためだけのものではありません

なお、修復を目指す場合でも、証拠は集めておかれた方がよい場合もあります。それは慰謝料を請求するという話だけではありません。

明確な原因が分かれば、修復したい気持ちを伝える時に、何が原因なのかという点がはっきりと分かっている場合と、そうでない場合とでは、伝え方に差が出てくるからです。

分かっていない時は自分の主張にブレが出てきます。それは理由が分からないからです。けれど、理由が分かっていれば、軸をもって修復の話をしていきやすくもなります。

もちろん、今は修復を目指したくたくとも、一度離婚の話しが出た以上、その後、自分の気持ちがどう変わってゆくかは分かりませんから、その事も重要ではあります。離婚の話ばかりをしたくはありませんが、ただ、くどいようですが、法律は証拠しか信じないところが多々あります。たとえ相手方が悪くとも、ご自身の将来や生活を守れるのはご自身しかいませんから、相手を責める前にご自身としてできる準備をしてゆければよいかもしれませんんね。

いずれにせよ、夫婦問題に悩まれたら、当職へ相談を寄せてください。何かの糸口を見つけられるかもしれません。

行政書士松浦総合法務オフィス 離婚と修復のおきがる相談室

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