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100年の孤独/放哉に想う〈Vol.30〉

汽笛海へならし空へならし

尾崎放哉全句集より

船はどんな乗り物よりも旅情を感じさせてくれます。船窓から遠く港の明かりを見ていると、どうしたわけか無性に家が恋しくなったものです――。

放哉が日本から朝鮮半島へ渡ったのは、1922年(大正11年)37歳の5月でした。不退転の決意をもって旅立った放哉でしたが、思うに任せず翌23年秋には帰国の途に就いています。途中、妻の馨に心中を迫ったという話ですが、その真意は定かではないそうです。ただ、失意の底をさまよっていたことは、当時の年譜からみて想像に難くありません。
放哉のこころの汽笛は海へも空へも、いまだ響くことはなかったようです。




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