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【新刊紹介】ヤマケイ文庫『完全版 日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?』--沖縄県・西表島のカマイから北海道・礼文島のトドまで、日本各地のジビエを食べ歩く 田中康弘

沖縄県・西表島のカマイから
本州のクマ、シカ、イノシシ、ノウサギ、ハクビシン、カモ、ヤマドリ、
北海道・礼文島のトドまで
各地の狩猟の現場を長年記録してきた
‟田中康弘渾身の日本のジビエ紀行”完全版!!
2023年5月17日発売

【仕様】
◆書名:完全版 日本人は、どんな肉を喰ってきたのか?
◆発売日:2023年5月17日
◆判型:文庫判/並製本
◆ページ数:384ページ(カラー16ページ)
◆定価:1,155円(本体1,050円+税10%)

肉を食べに南へ北へ(「はじめに」より)

 20年以上前に秋田県の阿仁マタギと知り合って一緒に山へ行くようになって以来、私はさまざまな猟場へと足を運び取材した。その過程で強く感じたのは、狩猟が地域の食文化と密接に関わっているということだった。狩猟に携わる人は山菜やキノコ、魚にも興味を持つ人が圧倒的に多い。狩猟と採集はセットなのだ。そして手に入れた獲物はきちんと食べる。そのような当たり前のことが、実は地域の食文化を受け継ぐ上で大事な要因だと思われた。現在は山間の集落からでも車で1時間も走ればスーパーがあり、都心となんら変わらない食生活ができる。そのような時代において、目の前のフィールドで山菜をキノコを魚をそして肉を探し求めるのは、趣味性が強いと思われがちだ。しかしそれらの行為は、本来その地で生き抜こうとする人間としては当然のことなのである。
 日本列島へ人類が入ってきたルートは、主に3つあると考えられている。サハリン経由で北海道、半島経由で九州北部、そして島伝いで九州南部である。偶然であるが、今回の旅はこれらに重なる部分が多い。日本人がどこから来て何を食べて日本人になっていったのか。もちろん、そんな高尚な学問的探求心ではなく、知らない土地を歩き、話を聞き、そして食べて理解したいのである。〝論より証拠〟ならぬ〝論より食〟なのかもしれない。
 とは言っても、本書は決して安っぽいグルメ企画ではない。狩猟とは、自分の命を繋ぐために危険を伴いつつ他者の命を奪う行為である。生きるために太古の昔から人々が行ってきた最も重要な行為が狩猟なのだ。現在日本でどのように猟が行われ、そしてどう獲物は食べられているのか。その現場を疲労困憊覚悟で歩いてみようと思う。

レバニラ炒めといえば大衆中華料理の定番、王道である。豚レバーを使うのが一般的だが、別にシカレバーを使っても何ら問題ない。新鮮なものなら臭みはあまりないから美味しくいただける
大物となると慣れた猟師が複数かかっても簡単には引き出せない。
獲れた喜びと大変さは同時にやってくる(長野県川上村)

【目次】

・はじめに 肉を食べに南へ北へ
1 南の島カマイ 西表島(沖縄県八重山郡)
2 秘境の村のイノシシ猟 椎葉村(宮崎県東臼杵郡)
3 山中のシカ肉のレストラン 宇目(大分県佐伯市)
4 貉と呼ばれるタヌキ・アナグマ 長湯温泉(大分県竹田市)
5 畑荒らしのハクビシン 穴内(高知県安芸市)
【Column】肉を喰ってきた日本人
6 北陸のカモ撃ち 白山、小松(石川県)
7 箱罠で肉を獲る 大津(滋賀県)/岡崎(愛知県)
8 シカの内ロースにやられる 川上(長野県南佐久郡)
9 肉も喰うけどモツも喰う 丹沢(神奈川県)
10 ツキノワグマの狩りと食 阿仁(秋田県北秋田市)/白山(石川県)/奈良俣(群馬県みなかみ町)
11 ウサギは何処へ行った? 阿仁(秋田県北秋田市)
12 厳寒の礼文島のトド猟 礼文島(北海道礼文郡)
・おわりに 肉食の旅を終えて
・文庫版あとがき 

田中康弘(たなか・やすひろ)
1959年、長崎県佐世保市生まれ。島根大学農学部林学科、日本写真学園を経てフリーカメラマンに。主な著書に『山怪』『山怪 弐』『山怪 参』『山怪 朱』『完本 マタギ 矛盾なき労働と食文化』『鍛冶屋 炎の仕事人』(いずれも山と溪谷社)、『シカ・イノシシ利用大全』(農文協)、『ニッポンの肉食(ちくまプリマー新書)』(筑摩書房)など多数

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