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狩猟免許取得ABC

狩猟免許を取得する 

狩猟免許試験

罠や網や銃といった法定猟具を使って狩猟をするためには、まず狩猟免許が必要だ。しかし、試験はだれでも受けられるというわけではなく、以下の条件に当てはまる者には受験資格がない。

  1. 試験当日に網猟免許及びわな猟免許にあっては18歳に、第一種銃猟免許及び第二種銃猟免許にあっては20歳にそれぞれ満たない者

  2. 精神障害又は発作による意識障害をもたらし、その他の狩猟を適正に行うことに支障を及ぼすおそれがある病気として環境省令で定めるものにかかっている者

  3. 麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者

  4. 自己の行為の是非を判別し、又はその判別に従って行動する能力がなく、又は著しく低い者

  5. 鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律又は同法に基づく命令の規定に違反して、罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から3年を経過しない者

  6. 法第52条第2項第1号の規定により狩猟免許を取り消され、その取り消しの日から3年を経過しない者

1は年齢制限で、5と6は前科や免許取り消しに関すること、2から4は医師の診断書を提出して該当しないことを証明しなければならない。

狩猟免許を取得すると、「狩猟免状」が発行される。
A4 サイズの大きいもので、運転免許証などと違って携帯する必要はない

狩猟免許は都道府県が認定する国家試験なので、住所地の都道府県で受験することになる。試験の日程や会場については、各都道府県のホームページで確認することができる。以前は年間1〜2回程度だった狩猟免許試験だが、現在はもっと多く実施しているところもあるようだ。東京都など、時期によってはすぐに定員となってしまう場合もあるそうで、受験の申し込みにはある程度余裕をもったほうがよいだろう。

申し込みは都道府県庁の窓口に直接出向くか、都道府県猟友会を通して申し込むことになる。都道府県猟友会の連絡先は、上部総括団体である大日本猟友会のホームページから確認するのが手っ取り早い。

47都道府県中、ホームページをもっている都道府県猟友会は24あるが、そのなかには問い合わせフォームや、各種書類がダウンロードできるところもあるようだ。それ以外は電話で問い合わせたり、書類を取りに直接出向い
たりする必要がある。

ハンターになる以上、地元の猟友会には何かと世話になることも多く、常識的にも一度あいさつしておいて損はないはずだ。もちろん、猟友会には入らずに狩猟をすることも可能だが、それについては後述したい。

試験の流れ

試験の内容は「知識試験」「適正試験」「技能試験」の3つに分かれており、まずはペーパーテストで知識試験が行われる。狩猟および鳥獣保護管理に関する法律や、猟具の取り扱いなどについて30問が出題され、90分以内に21問以上正解で合格となる。午前中はこの知識試験だけで、合否は午後に即日発表、合格者は次の段階に進むことができる。

次の適正試験では、視力、聴力、運動能力などのテストが行われる。視力は銃猟免許なら両目で0.7、わな猟と網猟免許なら両目で0.5以上が必要だ。もちろん矯正視力でもかまわないので、その場合は自動車運転免許証と同じように「眼鏡等使用」という文言が狩猟免状に追記される。ちなみに片目しか見えない者でも、他眼の視力が前述の数値以上あり、かつ視野が左右150度以上あれば問題ない。実際に筆者の知り合いにも片目のハンターがおり、猟場ではだれよりも確実に獲物を仕留めるし、スキート射撃では平気で満射を出したりもする。ウソのような話だが、視力のよい若手でもかなわないほど、スゴ腕のベテラン片目ハンターが実在するのである。

聴力の試験は、10mの距離で90dbのブザー音が聞こえれば合格だ。判定法としては、受験者と試験官が対峙し、音が聞こえたら片手を挙げるだけでOK。

さらにシンプルなのは運動能力の試験で、片足立ちをしたり、両手を挙げて手を開いたり閉じたりする。健康な肉体さえあれば、ここまでの試験はそう難しくないはずだ。

一番大変なのが技能試験だが、これは免許の種類によって内容が変わってくる。罠と網猟の場合、いくつかの猟具が並べられ、どれが合法でどれが違法なのかを答えなければならない。例えば、同じく獲物の足をとらえるタイプの罠でも、くくり罠は合法的な法定猟具であり、とらばさみは禁止猟具。それらをキチンと見分けられる能力が要求されるのだ。

罠や網の種類を見分けたあとは、実際に試験官の前で架設を行って、技能試験は終了だ。

これが銃猟になると、実際に銃の取り扱いなどを行うことになる。第二種では空気銃、第一種では空気銃と散弾銃の構え方や分解結合ができるかどうか、試験官の前で実演する。もちろん、使うのは模擬銃で、本物の銃から発射機能を取り除いたダミーだ。しかし、うっかり矢先(銃口)を人に向け
てしまったり、何気なく引き金に指をかけてしまうと減点になる。
事故を起こしてしまう可能性があるような人では、合格は望めないというわけだ。

技能試験で使われる模擬銃。
本物の銃から発射機能を取り除いたいわゆる「デコイガン」だが、ズシリと重く、迫力がある

さらに、銃猟免許の適正試験には、「距離の目測」という聞き慣れないテストがある。これは、猟場で銃を撃つ際、自分が放った弾がどこまで飛んでいくのかを把握し、その範囲内に危険がないことを確認する必要があるためだ。第二種では300m、30m、10mを、第一種では300m、50m、30m、10mの距離をそれぞれ言い当てなければならない。実際の試験では屋外に出て、試験官から「あそこの信号までは何mありますか?」などと聞かれるので、その距離を答える。

40mなどという中途半端な答えはないので、これは冷静に考えればわかるはずである。

鳥獣判別試験

そして、すべての免許に対して行われるのが、鳥獣判別試験だ。狩猟というのは、どんな動物を獲ってもよいというわけではない。ハンターが合法的に獲れる動物を狩猟鳥獣と呼び、指定されているのは鳥類26種と獣類20種の合計46種のみ。それ以外の動物を獲ったら法律違反となってしまうため、狩猟鳥獣の判別は重要なスキルなのである。

試験の方法は、鳥獣の姿が描かれたイラストを使う。試験官が提示したイラストのパネルを見て、5秒以内に狩猟鳥獣か否かを答えるのだ。例えば、マガモの姿が描かれたパネルなら「獲れます」と答え、それがもしオシドリなら、「獲れません」と答えなければならない。もしも非狩猟鳥獣を手にかけてしまった場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられることになるため、慎重な判断が必要なのである。

事前講習会

ここまで読み進めてきた読者のなかには、「適正試験はともかく、知識試験や特に技能試験には合格できる気がしない」という感想をおもちの方が多いかもしれない。罠や網、まして銃など触ったこともない、という人がほとんどだろうし、ぶっつけ本番でやるのは難しいと思うのも当然だ。

だが安心してほしい。狩猟免許試験には事前講習会という制度があり、これを受けることによって合格率が飛躍的に向上するのだ。これは都道府県猟友会が開催するもので、ほとんどの場合、試験と同じような会場で、同じ猟具や鳥獣のイラストを使い、同じテキストで予習が行われる。ある意味、至れり尽くせりともいえる制度なので、これを受けない手はない、というか、受けなければ合格は難しいかもしれない。事前講習会を受けた人の合格率は90%以上といわれているが、実際問題、筆者の周りで落ちたという話は聞いたことがない。

申し込みは都道府県猟友会で受け付けている。
各地で免許の種類などによって講習料金に違いがあるが、狩猟免許試験よりも前に受講できるように申し込むのが一般的だ。狩猟免許を取得するためには、事前講習会と試験、合計2日間の日程が必要ということになる。

罠猟の試験では各種わなの取り扱いを理解しておく必要がある。
右は「くくりわな」、左は「筒式イタチ捕獲器」

※当記事は『狩猟生活』2017VOL.1「狩猟免許取得ABC」の一部内容を修正・加筆して転載しています。

Profile
こぼり・だいすけ

27歳で散弾銃を所持し、その後、狩猟免許を取得。 第一種銃猟・わな猟・網猟と3種の狩猟免許を持つ。これまでに扱ったナイフは200本以上、所持した銃の合計は30丁と、豊富な知識と経験を活かし2013年からライターとして活動を開始。国内ではほぼ唯一の狩猟・銃・ナイフの専門ライターとして、狩猟専門誌などで執筆を続けている。現在、一般社団法人栃木県猟友会の事務局長を務める。 趣味はオートバイ。共著に『狩猟用語事典』(山と溪谷社)がある


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