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狩猟免許取得ABC

銃を所持する

銃砲所持許可までの流れ

  1. 所轄警察署生活安全課に行き猟銃等講習会の申し込みをする(6,900 円)
    ~事前に電話をして、担当者にアポをとるとよい~

  2. 猟銃等講習会を受講、考査に合格し「講習修了証明書」を受け取る(3 年間有効)~空気銃の所持許可申請はこの時点でできるので7へ

  3. 散弾銃の場合、所轄警察署生活安全課に行き射撃教習の申し込みをする(8,900 円)~1回目の身辺調査が入る~

  4. 所轄警察署生活安全課に行き「教習資格認定証」を受け取る(3 カ月間有効)~同時に「猟銃用火薬類譲受許可証」を発行してもらう(2,400円)~

  5. 射撃教習(30,000 円前後)を受講、考査に合格し「教習修了証明書」を受け取る(1 年間有効)~考査はクレー25枚中2枚から3枚当てれば合格~

  6. 自分の買う銃を決める(中古銃なら50,000 円前後から)

  7. 所轄警察署生活安全課に行き所持許可申請をする(1丁目の申請10,500 円。同時に行う2丁目以降6,700円)~ 2 回目(空気銃は1回目)の身辺調査が入る~

  8. ガンロッカー、装弾ロッカーを用意する(40,000 ~ 50,000 円)~空気銃には装弾ロッカーが必要ない~

  9. 許可が下りたら所轄警察署生活安全課へ行き「猟銃・空気銃所持許可証」を受け取る(60 日間以内)

  10. 銃砲店などから銃の譲渡を受ける(3カ月間以内)

  11. 所轄警察署生活安全課へ行き当該銃の確認を受ける(14日間以内)

1銃1許可

罠と網猟なら、あとはそれぞれの猟具を用意すればよいだけだが、銃猟や罠猟の止めを銃でやるなら、狩猟免許とは別に銃の所持許可を取らなければならない。

銃に関することを細かく定めた法律を、「銃砲刀剣類所持等取締法」略して銃刀法と呼ぶが、その第一章第三条に、こんなことが書かれているのをご存じだろうか。「何人も、次の各号のいずれかに該当する場合を除いては、銃砲又は刀剣類を所持してはならない」ある意味、出オチというか、身もふたもない文言ではある。つまり、われわれ日本国民は、銃を所持することをそもそも禁止されている、ということだ。しかし、「次の各号のいずれかに該当する場合を除いては」という部分に注目してほしい。

「次の各号」にはかなりの数があるようで、警察官や自衛官が職務のために使う場合をはじめ、捕鯨に関係することや演劇に使用する場合など、意外なものもたくさんある。なかでもハンターに関係があるのは、「狩猟、有害鳥獣駆除又は標的射撃の用途に供するため、猟銃又は空気銃を所持しようとする者」という部分だ。狩猟や射撃をやる、という目的があれば、銃の所持許可が下りるというわけだ。言い換えれば、銃の所持は権利ではなく、銃刀法上は例外であるということで、ここがクルマの運転免許などと大きく異なる点だろう。

クルマの免許を取得すれば、それはクルマを運転する権利を有したことになる。運転するしないはその人の自由だが、銃の場合、何かに使う必要があって許可を受けるわけだがら、ちゃんと使っていないと許可を取り消されることもある。

狩猟の世界では、ペーパーハンターは原則的に存在しないのである。また、運転免許なら区分に応じていろいろなクルマに乗れるし、だれかのクルマを借りることもできる。しかし、銃はその人に対して所持許可が下りるので、銃の貸し借りはできない。

これを「1銃1許可制」といい、別の銃が必要な場合はそのつど、所持許可申請の手続きをしなければならないのだ。

銃の所持許可を出すのは、都道府県の公安委員会だ。実際には、住所地を管轄する警察の生活安全課が窓口になる。狩猟免許のときと同じように、銃の所持にも欠格事由といって、許可を受ける資格がない場合がある。

これについては狩猟免許とは比較にならないほど多くの項目があるので、代表的なところだけを抜粋してみよう。

1、猟銃については20歳、空気銃については18歳に満たない者
2、精神病者、麻薬、大麻若しくは覚醒剤の中毒者又は心身耗弱者
3、住居の定まらない者
4、銃砲刀剣類を不法に所持して罰金刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
5、集団的に、又は常習的に暴力的不法行為、その他の罪に当たる追放な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認められるに足りる相当な理由がある者
6、破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者

実際にはまだまだたくさんあるので、興味のある方は調べてみるとよいだろう。これだけ見ても、狩猟免許の取得よりハードルが高いということがわかると思う。

1の年齢制限で空気銃は18歳から許可が下りることになっているが、狩猟免許は20歳からなので、これは標的射撃に限られるということだ。2は狩猟免許と同じで、医師の診断書を提出する。3は当然のことで、4は過去の犯歴、5は暴力団関係者か否かということで、これも当然だろう。

意外なのは6かもしれないが、要するに現状で自己破産をしている人には許可が下りないということだ。これを証明するには「身分証明書」という書類が必要で、市区役所ですぐに発行してくれる。免許証などのいわゆる「身分証明書」とはまったく違うものなので、注意が必要だ。

破産していない、ということを 証明するのがこの「身分証明 書」だ。
普通はあまり使わな い書類だが、住民票などと同 程度の手間で簡単に入手可能


銃砲店の役割

何かと大変そうな銃の所持だが、これから始める人にとっては何をどうしたらよいか途方に暮れてしまうかもしれない。そこでまず、最初に行くべき場所が銃砲店である。
 
銃砲店は、申請に必要な書類をそろえてくれたり、いつどこに行って何をすればよいか、所持許可申請に関するすべてのことを教えてくれる。銃というのはお金があっても所持許可がなければ買えないものなので、銃砲店がお客さんに銃を売るためには、まず所持許可を取ってもらわねばならない。

銃砲店にとって、所持許可申請のアドバイスも仕事の一環というわけで、たいていのお店では親切ていねいに対応してくれるはずだ。また、どんな銃が売られていて、値段はいくらなのか、将来所持する銃を少しずつ選定するのも楽しい時間だ。

所持許可取得後、銃砲店とは長い付き合いが始まる。相性の合う銃砲店を見つけて、二人三脚で歩んでいければベストだろう。

猟銃等講習会

まずは所轄署の生活安全課に出向いて、手数料6,800円を支払い、「猟銃等講習会」の申し込みをする。

書類は警視庁や各都道府県警のホームページからダウンロードするか、前述のとおり銃砲店で入手して、あらかじめ記入しておこう。猟銃等講習会の申し込みというのは、単に書類を提出するだけの行為ではない。これから何度となく足を運ぶことになる生活安全課への初見参でもあり、担当者との初顔合わせ、という重要な側面があるのだ。

この段階で、担当者からいくつか質問を受けても不思議はない。例えば、「あなたはなぜ銃を所持したいんですか?」と聞かれる可能性もある。これはある意味当然のことで、銃刀法で禁止されているにもかかわらず、あえて銃の所持許可が欲しいといっているのだから、明確な返答が必要だ。

いうまでもなく、ここは「狩猟をするためです」と答えるべきだろう。さらに、罠猟の止めに使うのか、空気銃猟をやりたいのか、散弾銃を使いたいのか、所持したい銃とその目的をはっきりと伝えられればベストだ。

猟銃等講習会の申し込みが受理されると、「猟銃等取扱読本」という冊子が手渡される。当日はこれをテキストにして講習が行われ、最後に考査(テスト)を受けるわけだが、隅から隅までくまなく熟読し、完全に記憶しなければ合格は難しい。

講習は午前から始まり昼休憩をはさんで午後4時前まで、その後、1時間の考査が行われる。
 
問題は50問、○×の2択式で45問以上正解が合格ラインだ。内容は銃刀法に関することや銃の運用方法、人や銃に対する欠格事由事項、所持許可更新の時期など、多岐にわたる。数字にまつわる事柄も多く、所持できる銃の最低限の全長や銃身長、最大の装弾数、各銃種の最大射程距離など、覚えなければならない数字が山ほどある。

また、「以上」「未満」「超えるもの」など、前後の言葉によって同じ数値でも意味が変わってくるため、単なる丸暗記ではなく完全な理解が必要だ。

考査の結果は合否のみが通知され、合格者には「講習修了証明書」が即日手渡されるが、得点数は伝えられない。問題用紙を持ち帰ることもできないため、仮に落ちたとしても、どこをどう間違えたのか明らかにできないのがツラいところだ。

気になる合格率だが、筆者の周りで実際にあった例では、「5名中1名合格」「7名中3名合格」「18名中6名合格」という結果だった。最高でも約45%、低い場合は実に20%ということになり、やはり狭き門であることは間違いない。いまは実用的な参考書や問題集なども出版されているため、それらをうまく利用して最善を尽くしたい。空気銃のみを所持するなら、この時点で所持許可申請が可能になる。

射撃教習

次に、散弾銃を所持する場合、「射撃教習」という実技試験を受けるが、射撃場の備え付け銃で実際にクレー射撃をやる。だがその前に、一時的とはいえ本物の銃を手にする(所持する)わけだから、その人が銃を所持しても大丈夫かどうかの射撃教習認定が警察によって行われる。

この申し込みに8,900円がかかり、1回目の診断書が必要になる。精神科医やかかりつけ医など、一定の基準を満たす医師に診断書を書いてもらうわけだが、最終的に所持許可が下りるまで実はもう1回、診断書が必要になる。診断書の料金は病院によってまちまちなので、リーズナブルな病院を見つけたり、かかりつけの医師に確認しておいたほうがよいだろう。

ここで申請者に対する1回目の身辺調査が入るが、勤務先や、場合によっては、ご近所などに警察から聞き込みが行われるため、近しい人には事前に知らせておいたほうがよい。いつも酔って暴れている、などの悪い評判がない限り、数カ月で「教習資格認定証」が発行される。同時に、射撃教習で使う弾を買うための「猟銃用火薬類譲受許可証」を発行してもらうが、これに2,400円がかかる。

教習資格認定証をもらったら、射撃場に射撃教習の予約を入れる。費用は射撃場にもよるが3万円ほど。これも銃砲店に相談すれば近い射撃場を教えてくれるはずだ。射撃教習はトラップ射撃とスキート射撃の2種目から選べ、トラップなら25枚中2枚、スキートなら3枚のクレーに命中させれば合格となる。
もちろんいきなり撃つわけではなく、最初に座学を行って、銃の分解結合、安全な取り扱いなどについての講習を受ける。狩猟免許試験のときの模擬銃とは違い、ここでは本物の銃を扱うわけだから、射撃指導員のいうことをしっかり聞いて真剣にやらなければ危険だ。

筆者は以前、教習射撃で銃を暴発させ、即刻退場となった人を見たことがある。幸い、ケガ人は出なかったが、射撃指導員も本当に大変だなと思ったものだ。

本物の銃を扱うので、撃つ瞬間以外には、けっして引き金に指をかけてはいけ ない。
ここを間違えると大きく減点され、合格は難しい

考査に合格したら「教習終了証明書」が発行される。これをもらったら、あとは所持許可申請をするだけだ。

所持許可申請

前述のとおり、銃の所持は免許ではないため、申請にはあらかじめ所持する銃が決まっていなければならない。もうすでに銃砲店とも仲よくなっているはずだし、自分が買う銃も絞り込まれているだろう。この時点でガンロッカーと、散弾銃なら装弾ロッカーも必要で4〜5万円ほど。

すべての書類がそろったら生活安全課に出向き、10,500円を支払って所持許可申請をする。2回目の身辺調査が入ることになるが、すでに教習資格認定の時点でクリアしているわけだから、ここはスムーズにいくはずだ。
 
所持許可が下りたら、警察で「猟銃・空気銃所持許可証」を受け取り、それを持って銃砲店に行き、銃を引き渡してもらう。ちなみに、銃砲店にはこの時点で銃の代金を支払う場合が多い。

「猟銃・空気銃所持許可証」。
空気銃は猟銃のカテゴリーに入らないが、当然ながら狩猟用として使うので、少々ややこしい


やっと念願の銃を手にして感無量、となる前に、ここでもうひとつ手続きがある。銃を受け取ってから14日間以内に、警察に銃を持参して確認を受けなければならない。許可を受けた銃と相違ないか、全長や銃番号を確認するのだ。

かくして、所持許可証に「確認」の印鑑が押され、晴れて銃はあなたのものになる。

ここまでにかかる日数は、ケース・バイ・ケースだが、およそ半年間は見ておいたほうがよいだろう。

「猟銃・空気銃所持許可証」は手帳になっている。
所持する銃の情報が記載されているページ。銃ごとに別々のページに書き込まれる

※当記事は『狩猟生活』2017VOL.1「狩猟免許取得ABC」の一部内容を修正・加筆して転載しています。

Profile
こぼり・だいすけ

27歳で散弾銃を所持し、その後、狩猟免許を取得。 第一種銃猟・わな猟・網猟と3種の狩猟免許を持つ。これまでに扱ったナイフは200本以上、所持した銃の合計は30丁と、豊富な知識と経験を活かし2013年からライターとして活動を開始。国内ではほぼ唯一の狩猟・銃・ナイフの専門ライターとして、狩猟専門誌などで執筆を続けている。現在、一般社団法人栃木県猟友会の事務局長を務める。 趣味はオートバイ。共著に『狩猟用語事典』(山と溪谷社)がある