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舟を編む | 三浦しをん | ☆☆☆☆

三浦しをんだと無条件に星4つ付けてないかお前?と思う方がいるかもしれませんけど、あの家に住む4人の女みたいなタイトルの本については最後まで読みきれませんでしたので、私の中では当たりとハズレがあるのかも、とちょっと思いました。

これは当たりです。ヒットです。

声を出して笑ってしまう

小説って、想像力を掻き立てるものだから、抽象的すぎるとふわっとしたものになってしまうし、具体的すぎると想像力がほとんどいらないものになってしまうから、そのさじ加減ってとても難しいと思うんです。
三浦しをんは、私の目線では具体的に寄ってる方で、それこそ伊坂幸太郎と同じレベルというのを感じます。
多分、その目線が、私にとって心地よいんだろうなぁ。読んでて楽しいです。
三浦しをんに限って言うと、声を出して笑ってしまうシーンが多いんです。
私の中で想像する、登場人物たちの動きが、とてもシュールだったり、小気味よいリアクションだったりして、とても面白いですね。

今回、主人公となる馬締。言動が怪しいし、多分一緒に仕事すると「うわ、使えなさそう…一緒に仕事すんのめんどくさそう…」って思わせるような風貌で、言動で、だったりします。
住友生命のCMに出てくる、瑛太がやってる役の人のイメージです。
偏見でしょうけど。
対照的に見える西岡や岸辺がいるから余計に、馬締の怪しさがひしひしと伝わってきます。
そこが面白ポイントなんだろうなぁ。

そうか。キャラクターに愛着が湧くっていうのも、伊坂幸太郎に通じるものがありますね。私は、そういうキャラが登場する小説が好きなのかもしれない。まほろ駅前も、やっぱりあの二人は好きだし、刑事も、ヤクザも、変な風俗嬢みたいな二人組も、みんな愛着があって、あの街に住んでみたいとすら思わせてくれます。

そういうとこだね。

言葉を紡ぐ難しさ

これは13年にも及ぶ歳月をかけて、一つの国語辞典を作っていく話です。
だから、言葉の定義とか、言葉と言葉の違いとか、そういうのが沢山出てきます。

難しいですよね。多分、私が普段間違って使っている言葉が沢山あるはずで、そういうところを考えると、ちょっと恥ずかしくなります。

私たちが普段使っている言葉に人生を賭けて作り上げる。
そんなこと、余程言葉に対して情熱を持っていないと、人生を賭けて対峙することなんてできませんよね。すげぇよなぁ。

私は、なにかに人生を賭けて対峙することなんてあるのだろうか、とふと、自分の足元を見つめ直すきっかけが生まれたような、読後感でした。

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