見出し画像

さくらんぼとプロハイカーと公衆浴場

なんのこっちゃのタイトルだが、今回の旅は濃い出会いがあって、自分としては結構な長文です。

関東が梅雨入りした6月6日。
どしゃぶりの雨の中、初夏の「ジャムの旅」もスタートだ。

今回は久しぶりに相棒のJeepと一緒に山形県上山市へ向かう。
これからが旬のさくらんぼが待っている。

首都高から東北道へ。

それにしてもものすごい雨だ。

雨音に負けずに車内でスピッツを歌っていたら、埼玉あたりで喉をやってしまった…。
今回の旅はさくらんぼがテーマだけに「チェリー」は特に力が入った。


山形県は誰もが知るさくらんぼの産地だ。

「佐藤錦」「紅秀峰」「紅さやか」「月山錦」「ナポレオン」など。

特に「佐藤錦」は高級フルーツの王様として、長年君臨し続けている。

しかし今回のお目当ては「紅さやか」。

この「紅さやか」という品種は「佐藤錦」の受粉樹でもある。
「佐藤錦」どうしでは結実しない。
「紅さやか」の花粉が必要なのだ。不思議だね…。

「佐藤錦」や「紅秀峰」の影に隠れてあまり知られていない「紅さやか」だが、酸味がしっかりあって、果肉まで綺麗な赤色をしている。
(サワーチェリーのような強烈な酸味ではないが…)

「紅さやか」ずっと眺めていたい。美しいね…。


山形県上山市の「黒田果樹園」さんに到着。

4月に視察させていただき、生産者の黒田潤さんの物作りに対する誠実な姿勢、そのプロフェッショナルさに大変感銘を受けたのだ。

その時の記事はこちらから↓


「紅さやか」はちょうど今が旬真っ盛り!

もう少し後だと、色が黒っぽくなり酸味も和らいでしまうのだ。
(生食ならちょうどいいけどね)

これから「佐藤錦」「紅秀峰」の順で旬が巡ってくる。
今はそのための摘果、色づけするための葉摘み作業で大忙しだ。

この葉摘みという作業。
果実のまわりの葉を落とし、太陽の光を当てる。
また上の葉は落とさず残す。
さくらんぼの色の素となるアントシアニンなどの養分を蓄えるためだ。

果実のまわりの葉を摘む作業。
高い位置には脚立を使って。


降り続く大雨で気温も低い中、今回も農園でテント泊だ。
今回から新しいテントだから、雨漏りの心配はいらないだろう。

去年、梅雨の宮崎県では朝起きたら枕元に水溜りができていた。
テントの中で溺れるなんて、そんな間抜けなことになりたくない。

大雨の中、いきなりテントを張り出した僕にスタッフさんたちも興味深々だ。

そのスタッフさんの中にトレイル好きの男性がいると聞いた。

「トレイルとかされるんですか?僕も山登りとか好きなんですよ〜!」

男性「はい。一応プロのハイカーとしてやらせてもらってます。」

「…」

軽口たたいた自分が恥ずかしかった…。
(いや、プロって…。なんでさくらんぼ農園にいるんだ⁈)

どうやら繁忙期の時だけ、お手伝いとして働いているそうだ。

いただいた名刺の裏には、今まで歩いてきたトレイルの距離数が記されていた。
とんでもない距離だ。

合計22,000km ⁉︎  地球半周分じゃないか!


こんな機会はめったにないので、アメリカのトレイルの話をたくさん聞かせていただいた。

いつか行ってみたい憧れの「ジョン・ミューア・トレイル」

そこにはまだ知らない素晴らしい世界が広がっているんだろうな…。

「いつかいつか…」は永遠にやってこない。

選択に悩んだ時はいつもそう考える。

いつ行くの?

「今でしょ‼︎(みなさんご存知のセリフね)

さすがに今は無理だけど必ず行くぞ。

いつか…。

プロハイカーの斎藤さん。優しい方だったな…。


雨の中、農園内を散策したり、テントを張ったりしてたら身体が冷えた。

山形県上山市は「かみのやま温泉」という温泉街があるらしい。

なら入るしかないでしょ。

「二日町共同浴場」
通称あいさつ浴場と呼ばれる公衆浴場と出会う。

「あいさつ浴場」ってなんかいいね…
見つけるのに苦労した…

観光客向けというより、昔から地元の人たちが日常的に利用しているお風呂という感じ。

その入浴料、なんと150円‼︎
いや、安過ぎやしないか…。

頭を洗う場合は洗髪料としてプラス150円。
それでも300円。

夜9時前ということもあって貸切り状態。
テンションが上がる。

浴槽が2つあってぬるい湯と熱い湯があるみたいだ。

とりあえずぬるい湯に足を入れてみたが「熱っ!」と予想通りの展開。

昔ながらの銭湯あるあるで、湯の温度は常連のおじいちゃんが支配している。
むやみに水を足すなんてのは野暮だ。

なんとか肩まで浸かり、タコのように茹で上がっているところに常連らしきご老人が登場。

そのご老人、なんの躊躇もなく熱い方の湯船にドボン!(すげー…)

「そっち熱くないですか?」

アホみたいな質問だが、この公衆浴場という独特の雰囲気のおかげか、なんのためらいもなく話しかけていた。

「そっぢはぬるぐてだめだ。」(これがぬるい…⁈)

「こっぢに入んなぎゃだめだ。」

少々濃いめの山形弁だが理解した。

悶絶するぐらい熱かったが、ご老人と2人で大笑いしてたら気持ち良くなってきた。
これぞ裸の付き合い。大人の仲間入りだ。

そんな中、続けて入ってきたのは頭にどぎつい緑色のタオルを巻いた、ムッシュかまやつ似のご老人。

もう出会う人が次から次へと濃すぎて処理できない…。


ご老人2人の会話が始まった。

「○△では補助金で新しい銭湯が□×◎で○△□で…」

一部山形弁が聞き取れないが、どうやらこういう内容らしい。

「新しくできた銭湯は入浴料だけで350円もするらしいなぁ〜。」

「そこそこ取るな〜。」(350円でもかなり安いっすよ…)

僕が苦笑いしてると、

「ここは日本一、いや世界一安い!はははっ!!!」

と豪快に笑って風呂から出て行った。

人生の大先輩からとてつもないパワーをいただき、翌朝5時からのさくらんぼの収穫に備えるため、テントの中で眠りについた。

収穫のお話はまた後日…。

新しいテントがデビュー!
こいつと一緒だと心強いのだ。






この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?