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「ジャムの旅」の始まり。〜徳島編〜

みなさんいちご狩りやぶどう狩りって行ったことありますか?もぎたての果実って香りも良くって美味しいですよね。僕も各地の農園に訪れた際、木から果実をもぎってそのままがぶっと食べさせてもらう。

「おっ、温かい!」

そうなんです、太陽に照らされて元気に育っている果実って温かいんですよね。真夏に食べる桃なんてもはや熱い!冷たいよりも温かい方が甘さも香りも感じやすいからね。追熟が必要な一部の果物を除いて、やはりもぎたてが一番美味しい瞬間だと思います。

そこで思いついたのが「ジャムの旅」。収穫直後の一番美味しい状態のものを、すぐにジャムにして風味を閉じ込めたら絶対美味しい!ならば現地で収穫、そして加工まで一気にやってしまおう、というノリです。感覚としては釣った魚をその場ですぐに捌いて食べる、みたいな感じかな。(やったことないけど…)

今までは旬の素材を東京に送ってもらって、デザートやジャムなどにしてきました。それはそれでゲストに旬の美味しさや、地方の魅力を伝えられてとても楽しく、旬の素材に触れる喜びも感じていました。一方で地方からの長距離輸送では果実に対する負担が大きく、ときには傷んでしまっていたり、香りが飛んでいたり…。また輸送にかかるコストも安くはない。さらにトラックから出る温暖化効果ガスが与える環境への影響など(ちょっと話が大きくなったな…)。そんな葛藤を抱えながらここ数年過ごしてきました。生産者さんとの付き合いが深くなれば、素材の素晴らしさという明るい面ばかりだけではなく、自然災害や人手不足などの様々な問題にも直面させられる。ただ良い素材を使えて喜んでいるだけでは、生産者さんとの関係はウィンウィンにはなりません。しっかりと生産者さん、その地域に利益が還元される使い方を僕たちパティシエや料理人は考えないといけませんね。もちろん消費者も。

話を戻そう…。

現地で作るとなると製造場所は?機材は?日程は?など、とにかく不安だらけなんですけど、とりあえずスーツケースに新品の銅鍋2個と、入るだけの道具を詰め込んで今年の4月に徳島へ飛んできました。旬の苺、うずしおベリーを栽培されてる【フルーツガーデンやまがた】の山形文吾さんに「ジャムの旅」の主旨を理解していただき、おじゃましてきました。

このうずしおベリーという苺、肥料に鳴門の海で獲れた牡蠣殻などを使用した【フルーツガーデンやまがた】さんのオリジナルブランド。
地元の資源を有効活用されている。素晴らしい生産者さんですね。


しかも今年、自身で加工場を設置されたばかり!こんなベストなタイミングってある⁉︎厚かましいのを承知でさっそく使わせていただくことになりました。(文吾さん、ありがとう‼︎)

ジャムを炊くには必要不可欠な強い火力。業務用のがあるものだと思っていたが…。あったのは家庭用のコンロ。「これはまずいっすね…。」急遽、文吾さんに代用できるものはないか、広い倉庫を探してもらった。そしたら出てきた!それは焼き芋機の下に設置されていた埃をかぶった大きなガスコンロ。さっそくガス栓と繋いでみたら、これも銅鍋のサイズとぴったり!助かった…。


収穫は朝6時から。早い人は5時半には来るらしい。早いな…。
絶対に寝坊できない、できるだけ近くで寝たい、という思いが行き過ぎて農園の中でテント泊することにした。「果実の香りに包まれて眠るなんて素敵!」なんて言われそうだが、当分儲けが出そうにないこの「ジャムの旅」にホテル泊なんてできる予算はない。経費削減ですよ。登山が趣味の僕はどんな場所でもテントを張れる自信がある。初冬の青森のりんご園で4泊5日のテント泊をしたこともある。漆黒の闇と熊の気配に怯えながら…。この話はまた後日。

「あ〜、あなたがテントの人?文吾さんから聞いてますよ!」

はい、テントの人です。ジャムも作れますよ。
気さくな年上のお姉さんたちと軽い挨拶を交わし、さっそく収穫へ。1時間くらいかけて10kgの苺を収穫した。皆さん摘むスピードがとにかく速い!どんどん抜かされた。朝収穫するのは理由があって、気温が低い朝は実が締まってて果実へのダメージが抑えられるんです。確かにね、摘みやすい。

収穫が終わった時点でまだ朝の7時。さぁ、これからジャム作りだ‼︎
この最高の香りが残るうちに瓶に閉じ込めなければ。
せっせと苺のヘタを取り、砂糖と一緒に新品の銅鍋の中へ入れて火をかける。ジャムが炊き上がったらすぐに煮沸消毒した瓶へ流し込む。
この作業を5回繰り返し、お昼前には10kg分の苺のジャムが完成。6時間以内に閉じ込めた。某飲料メーカーのレモンサワーの売り文句が「収穫から24時間以内に製造」ってのがあったけど圧勝ですね〜。(自己満足)

今回の「ジャムの旅」に全面協力してくださった山形文吾さん。本当に感謝です。そして徳島の温かな人々、素晴らしい景色に魅了され、ますます徳島が好きになりました。次回はまだまだたくさんある徳島の素材にも目を向けていきたいです。

この先全国のあらゆる場所で作っていくことになるけど、どんな環境でも美味しいものを作れる知恵を磨いていかないといけないですね。

次の「旅」がどのタイミングで行けるのか、結構気を使う状況ではあるけれど…。人、土地、素材との一期一会を楽しみながら続けていきたいですね。





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