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趣味のデータ分析060_子どもを持つということ⑯_デキ婚についてrevisited

043で、いわゆるできちゃった婚(デキ婚)について、「同居を始めたとき」を起点とした場合の統計(正確には、結婚式をしたときまたは同居を始めたときの早いほう)(人口動態調査特殊報告)をベースに、同居開始時から9ヶ月以内の出産(=デキ婚)が、2005年前後がピークで、足元は減少しているかも、という点を指摘した。
これはこれで非常に面白かったのだが、よく見るといつもの出生動向基本調査に、もっとちゃんとした?データがあったので、今回は主にそれを用いて、ツラツラとデータを並べてみたい。

(構成/概要)
■やっぱりデキ婚は増えているかも
・出生動向基本調査ベースでは、結婚後6ヶ月前後での出産の構成比が多くなっている。これは22歳以下の動向の影響が特に強いと思われる。
・一方で、全体としては、結婚ー出産間隔の長期化が見られる。
■デキ婚するようなやつは誰だ
・24歳まではデキ婚が多くかつ増加しており、それ以上ではデキ婚率に差はない。
・一方で、特に25~32歳まで特に結婚ー出産間隔の長期化も見られる。学歴が高いほどデキ婚率は下がるが、トレンドとしては強くない。

やっぱりデキ婚は増えているかも

043でのデキ婚の議論を復習しておこう。データ的には図1~3で、図1から、1975年には、同居開始後10ヶ月程度で第1子を出産することが圧倒的多数だった。しかし、1995~2005年頃には、それより早い時点、同棲開始から概ね6ヶ月頃に第1子を出産する、つまり同棲開始より早い時点で妊娠する割合が分布の最頻値となっている。その後2010年代になって、6ヶ月前後の山も低くなり、かなりテールの分厚い形状に変化している。
特に後段を示すのが図2で、1975~1985年では、全体の約半分は同居開始後1年程度で出産していたが、その後、1990~2000年代に同居開始後6ヶ月が第1子出産の最頻値になったにも関わらず、50%点はどんどん後ろにずれ込んでいき、2019年には概ね24ヶ月が50%点となっている。
この、「6ヶ月の山」の生成と消滅、及び分布の後ろズレを示すように、同居期間が妊娠期間より短い出生数が嫡出第1子数に占める割合(デキ婚で生まれた子供の割合)は、2002年頃をピークに漸減傾向にある。

図1:第1子出生までの同居期間別に見た出生構成割合
(出所:人口動態調査特殊報告)
図2:第1子出生までの同居期間別に見た出生構成割合(累積)
(出所:人口動態調査特殊報告)
図3:結婚期間が妊娠期間より短い出生数が嫡出第1子数に占める割合
(出所:人口動態調査特殊調査)

で、このデータの問題点が、「同居開始(または結婚式を上げた時点の早い方)」を起点としていて、婚姻関係とは実は何も関係ないという点だった。別居婚や同居前の結婚式などのノイズがあり、しかもその規模はわからない。しかし、いつもの出生動向基本調査に、(おそらく※)そういう情報があったので、今回発掘してみた。1997年~2015年までしかデータがないが、妙に細分化されていてクロスが色々取れるデータになっている。
※出生動向基本調査の統計量データでは「結婚から第1子出生までの間隔別」となっていて、出生動向基本調査では「結婚を届け出た年月」と「第1子が生まれた年月」のデータを取っている。以下のデータは、その期間を整理したものと思っているが、さらに「結婚生活を始めた年月」という別のデータも取得しているので、「結婚生活を始めたときから第1子の出生まで」のデータである可能性も否定できない。「おそらく」としたのはそのためである。ちなみに、この「結婚生活を始めた年月」のデータは、(明確には)他のクロス集計等には出てこない、謎データである。

では、基本的なデータから見ていこう。図4は、図1と同じく、結婚から第1子出産までの間隔を、時期ごとに比較したものだ。形状が全く異なるのだが、これは横軸の時期の区切りが全く異なるためだ。

図4:結婚から第1子出生までの間隔
(出所:出生動向基本調査)

というわけで、図4ではわかりにくいので、無理やり図1と同じ横軸に揃えたものが図5、累積分布に倒したものが図6、更に人口動態調査特殊調査と一部を比較したものが図7、8である。
まず、出生動向基本調査では、人口動態調査特殊調査でほぼ消滅していた10ヶ月前後でのピークが、年々小さくなっているにせよ、2015年時点でもまだ観察される。また、人口動態調査特殊調査では、6ヶ月前後に見られるもう一つのピークも、2010年代以降徐々に小さくなっていたが、出生動向基本調査では、むしろ2010年代のほうが6ヶ月前後でのピークが明瞭である。
また、累積の方を見ると、人口動態調査特殊調査では、「同居開始から出産まで」の期間の中央値が、1995年の12ヶ月前後から、2015年の20ヶ月くらいまで明らかな長期化をしていた。出生動向基本調査でも、年を下るにつれ長期化の様相はあるが、人口動態調査特殊調査ほど明瞭ではなく、2015年でもせいぜい15ヶ月くらいである。

図5:結婚から第1子出生までの間隔(横軸詳細推計)
(出所:出生動向基本調査)
図6:結婚から第1子出生までの間隔(横軸詳細推計・累計)
(出所:出生動向基本調査)
図7:結婚・同居から第1子出生までの間隔
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)
図8:結婚・同居から第1子出生までの間隔(累積)
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)

デキ婚という観点で見れば、人口動態調査特殊調査では、2002年ころがデキ婚のピークで、それ以降は減少している可能性がある、と論じたが、出生動向基本調査では、6ヶ月のピークがまだまだ強いこともあり、2000年代と比較しても2010年代のデキ婚は多い可能性はまだ残っているといえる。出生動向基本調査の「結婚してから」と、人口動態調査特殊調査の「同居を開始してから/結婚式を挙げてから」という、起点の明らかな違いはあり、デキ婚の厳密な(?)定義的には、出生動向基本調査の結果を有効としたいが、断言は少し難しいかも。
ただし、規模の違いはあれど、時代を下るにつれて、結婚や同棲の開始から出産までの期間が徐々に長期化しているのは事実のようだ。(結婚-出産期間の中央値については、出生動向基本調査の結果はそこまで大きくないものの、)47ヶ月≒4年以上子のない夫婦の割合(図8で、グラフ右端と100%の差分)が増加していることも、その証左であり、この部分は、出生動向基本調査でも比較的明瞭である。043でも言及したとおり、結婚と出産の乖離の一つの事例と解釈してよいだろう。

デキ婚するようなやつは誰だ

さて、出生動向基本調査では、結婚-出産までの間隔といくつかのクロスデータが取得できる。ここからは、クロスのデータを見てみよう。

まず年齢別で見ると図9と図10になる。デキ婚と思われる層(図9の灰色から下の部分)は、25歳以上ではあまり違いはなく、また(水準は別にして、)24歳まではデキ婚の割合が高くなっている。この結果は、図3とも整合的である。ただ、図3では年齢層別のデキ婚…というか、「結婚期間が妊娠期間より短い出生数が嫡出第1子数に占める割合」は、時系列で概ね安定的だったが、図10では特に22歳以下でデキ婚の割合が近年急増しており、ここは(データの定義がそもそも違うが)食い違っているように感じる。というより、結婚ー出産間隔が9ヶ月未満の増加は、22歳以下のみで起きており、図5で示唆したデキ婚の増加も、ほぼここに依存している気がする。
なお、女性の大卒率が上昇し、22歳以下ですでに働いて生活基盤のある(結婚の準備が整っている)ような女性が減少した結果、18歳以上22歳以下の層では、「デキ婚でもないと結婚しない」女性が増えた、という理屈は考えられる(妄想です)ので、個人的には出生動向基本調査の結果の方が得心は行く。
もう一つ興味深いのは、図11の太線で示したが、初婚年齢が25~32歳の女性の、結婚-出産間隔が長期化していること。全体的な結婚-出産間隔の長期化は前段でも述べたが、これは例えば「30代後半で結婚した女性が(年齢のため)なかなか出産できないことが影響して、全体の間隔も長期化した」のではなく、身体的には出産のハードルが低い年齢層で、(進呈的理由以外の)何らかの理由で出産が長期化しているため、全体の結婚-出産間隔が長期化している、ということを示している。

図9:妻の初婚年齢別の、結婚から第1子出産までの間隔
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)
図10:妻の初婚年齢別の、結婚から第1子出産までの間隔(推計平均)
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)
図11:妻の初婚年齢別結婚から第1子出産までの間隔が9ヶ月以下の構成比
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)

次に、妻の学歴別のデータを見てみよう。学歴別では、学歴が上がるほどデキ婚率は下がっている(中卒の2015年は驚異の50%超え!)が、減少トレンドはごく緩やかだ。男女共学か別学かも、大した影響はなさそうである。学歴とデキ婚はあんまり関係ない、といってよいだろう。

図12:妻の学歴別結婚から第1子出産までの間隔
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)
図13:妻の学歴別結婚から第1子出産までの間隔(推計平均)
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)

ちなみに夫側の学歴で見ても、ほとんど同じような傾向で、学歴によるデキ婚率の低下はごく緩やか。男が高卒だろうと大卒だろうと、デキ婚はそれなりの割合で発生している。まあ、学歴に関わらず生セクしたら子供はできる。世の娘持ちは、「相手が大学生なら安心」などと油断なされないようにしたい。

図14:妻の学歴別結婚から第1子出産までの間隔
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)
図15:夫の学歴別結婚から第1子出産までの間隔(推計平均)
(出所:出生動向基本調査、人口動態調査特殊調査)

まとめ

デキ婚に関しては、出生動向基本調査で「結婚~出産」の時期のデータを取得できた。結果としては、結婚後12ヶ月前後の出産、すなわち「結婚してすぐ子供を作り始める」者は減少傾向にあり、結婚後6ヶ月前後での出産をした、「結婚する前に子供を作り始めてた」者の構成比が、1997年以降経時的に増加している。後者は043で使用した人口動態調査特殊調査とはやや結果が異なり、人口動態調査特殊調査では、2000年代がデキ婚のピークだったが、こちらは起点が同居開始(or結婚式の実施)であったため、やや不正確な可能性が高い。ただこれは後述のとおり、若年層のみの現象の可能性が高い。またいずれにせよ、程度に差はあれ、いずれのデータも結婚・同居から出産までのタイムラグは長期化の傾向にあることを示している。

さらに、結婚から出産までのラグを初婚年齢や学歴に応じて仕分けてみると、まず年齢別では、22歳までは比較的デキ婚率が高いが、それ以上の年齢で、デキ婚率にはあまり差がないことがわかった。これは、人口動態調査特殊調査の結果と合致する。ただ、人口動態調査特殊調査では、時系列で年齢別で既婚率に大きな変化はなかったが、出生動向基本調査では、若年層のデキ婚率は経時的に大幅に増加している。
もう一つは、出生動向基本調査における、結婚ー出産間隔の長期化は、35歳以上等というよりむしろ、初婚年齢が25~32歳の女性で顕著であり、結婚の高齢化に伴う妊孕力の低下が理由ではない、ということもわかった。
最後に学歴別で見ると、夫にせよ妻にせよ、学歴が上がるほどデキ婚率は下がるが、そこまで強い傾向はないように思われる。

結婚と出産の関係性という意味では、
・前提として、非嫡出子はかなり少ないことと、「結婚ー出産間隔の構成比としては」デキ婚は増えていることを考慮すると、「出産→結婚」の相関は、依然強いように感じる。ただし、これは特に若い層(22歳以下)でのみ見られる現象だった。逆に言えば、22歳以下は妊娠でもしない限り結婚に踏み切らない、という程度の「相関」かもしれない。
・一方で、結婚ー出産間隔の長期化からは、「結婚→出産」の相関はやや弱くなっている可能性が示唆される。ただこれは、間隔が長期化しているだけで、産むことは産んでいるのも事実である(図16)。示唆はするが、断言まではできないかもしれない。

図16:妻45-49歳夫婦の出生子供数の構成比
(出所:出生動向基本調査)

補足、データの作り方など

出生動向調査を用いた。人口動態調査特殊調査はすべて再掲である。
結婚ー出産間隔の時間軸について、構成比は、不詳を除いた総数を母数とした。不詳自体は全体の数%程度で、影響は大きくない。学歴にも不詳、その他が存在するが、それもオミットしている。
また出生動向基本調査では、間隔の分け方が非常にざっくりしている。オリジナル区分は図4のとおりだが、これだと人口動態調査特殊調査との比較も全然できないので、図5では、純粋に「複数月の合算になっている部分は、月の数で数を均等割」した。図5が階段状になっているのはそのためである。ただし、結婚ー出産の平均値の推計は、均等割する前のデータをベースに推計している。つまり、複数月合算のデータをそのまま出現数、その係数を複数月の中央値として平均を計算した。均等割しても結果は同じになる(はず)。
さらに、この間隔区分けについて、1997年とそれ以降で更に異なっており、1997年はもっと粗い仕分けになっている。詳細は割愛するが、1997年分も同様に、「複数月の合算になっている部分は、月の数で数を均等割」して図7~8のグラフを作成している(図9、10にこの補正は影響していない。また11~14については、1997年に妻のみしかデータがなく平仄が整わないので割愛している)。なお、97年は最大区分が「61ヶ月以上」までしかなく、そこは全て61ヶ月のところに押し込めた(ので、図4では1997年のグラフが途中でちょん切れている)。


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