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白石和彌は映画界の労働を変える救世主になるのか、それともセルフプロデュースの一環か

映画が好きだ。だから、最近の映画界隈における問題もいくつかチェックしている。
最近の映画界は国内国外問わず#MeTooなど胸が痛くなるニュースが多い。
そんな状況を、映画界内部から声を上げている監督として、是枝裕和・白石和彌・深田晃司が挙げられるだろう。

正直、私はここ最近の動きから白石和彌を信頼できていない。
その理由をいくつかまとめていきたいと思う。

白石和彌といえば、「孤狼の血」「死刑にいたる病」などで知られる映画監督だ。
バイオレンスな映像を撮らせたら、国内では右を出るものはいない映画監督だろう。
ヤクザな雰囲気かおる映画を多く担当するその裏で、本人は映像業界の労働環境改善を発信しており、国内でいちはやくリスペクトトレーニングを導入した。

リスペクトトレーニングとは、クランクインする前に、「ハラスメントはどこからどこまでか」ということを教える講習を受講してからではないと作品を作れないということだ。
これは、今まで映像業界の不文律によって野放しにされていたスタッフたちのリテラシーを向上させることに一役買っていることと思う。

しかし、白石和彌は本人がハラスメントをしていた疑惑もある。
私が最初に知った報道は、綾野剛が「俺、したいっス」などという直談判に応じて、女優に事前に伝えずに性的なシーンをしたということである。

ちなみに綾野剛はガーシーに対して「やらしいことしたい」などと言っており、前述の発言はリアリテイがあるなと思った。

左が綾野剛、右がガーシーのライン

本件に関しては、

「先日、報道されました『日本で一番悪い奴ら』トークイベントのレポート記事に関して、ご説明させて頂きます。トークイベント時にお話した内容に関しましては、イベントにおける演出と観客を前に少しでも公開したばかりの映画を盛り上げたいという私の気持ちが加味してしまったもので、事実ではありません。  当該シーンに関しましてはキャストと内容について真摯に話し合い、キャスト、マネージメントの方々にも事前に御了承を頂いた上で撮影をしております。今回、改めて第三者を通して矢吹春奈様に確認しましたが、撮影時の認識に相違はありませんでした」

などと釈明し、「記事は誤解だった」としているが、監督として権力の勾配がある人から、女優に対して「あのシーンはどうだったか」など確認をしても、意味がないと思われる。
過去に起きたことだとしても、振り返った今、ハラスメントの構造があったと一言でも謝罪をすべきだと思う。間違ったことをして認められないのはダサいと思う。

さらには、
つい先月、10月27日に週刊文春がnetflixの撮影現場でゆりやんレトリィバアが撮影中に緊急入院したというニュースが出た。

頭から落ちる技を受ける動きを100回以上繰り返すなど、ブラック企業もびっくりな撮影が行われていたという。このニュースの後にゆりやんさんは気を遣ったツイートをいくつもされていたが、彼女は自身の身体のみ心配すればいい。悪いのは、アクション監督や、スタントマンが機能せず、安全な撮影をしていなかったということが全ての責任であると思う。
白石和彌のいう「撮影現場の安全」には俳優は含まれていないのだろうか?

そもそも、私は、この企画自体にハラスメントめいたものを感じていた。
この企画が発表されたとき、ゆりやんはダイエットに成功したばかりだった。

そして、急激に太るように鈴木おさむからオーダーが。

これは女性芸人であり、俳優業をしている人なら体重の増減があってもプロ根性で乗り切れるのだろうか。同じ女性からすると、ストイックなダイエットをして美しい体を手に入れたのに、また増やせと言われる苦労はとても大変なことだろう。

監督というポジションから、主演に急激に体重を増やさせ、その重い体で安全に配慮されていない撮影を行い、入院までさせたというのは、オールドスクールな日本の商業映画の倫理観のなさをそのまま煮詰めたような行動ではないか。
「白石和彌、お前もか」と言いたくなるような体たらくである。


是枝裕和に関しては、実際に労働状況が整っている韓国やフランスに赴き、日本と諸外国の映像制作のスタイルの違いについて発信をしている。
また、彼自体もすでに「世界の是枝」になっていることから、ドメスティックな映画業界に物申しても痛くも痒くもないところに登っていると思う。

(また、深田晃司の場合は、是枝や白石ほどネームバリューはないものの、活躍する舞台をミニシアターに留めていることから、商業映画と距離を置いている)

白石和彌はハラスメント等で話題になっている日本の商業映画というフィールドでやっているということは、自身がハラスメント当事者になることもありえるわけだ。
「大変だけど内側から声を上げよう!!」としているというより、「色々問題とされることが多い業界だけど、俺はハラスメント禁止って言ってるからセーフね」と、活動が免罪符になっているように感じてしまうのは私だけか。

実際、映画のシンポジウムに出てきたときの口ぶりは曖昧で「今の映像業界も変わってきつつあるゴニョゴニョ」というような、大手各所に配慮しているような言い方だったのが気になった。

彼の行動は善意そのもので、美しいとされるかもしれない。
しかし、しばらくは静観してみようと思う。

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