入浴中の突然死を防ぐために知っておきたい5つのこと

1月も、もう終わりますが、1年のうちでも最も寒いこの時期、お風呂でゆっくり浴槽につかりたい、という人も多いでしょう。入浴することで、1日の疲れが取れ、何よりもリラックスすることができますよね。一方で入浴中の健康被害も多数報告されています。その中でも、なかなかに衝撃的なのは入浴中の“突然死”ではないでしょうか。

[入浴中の突然死、その発症頻度はどれくらい?]

鹿児島で行われた調査では年間10万人当たり9.7人が、入浴中に突然死を起こしていると報告されています。 この報告では死亡者の88%が65歳以上の高齢者であり、特に高血圧治療中の人で多く発生し、また季節で言えば冬に発症頻度が高いことが示されています。さらに家族と同居している人に比べて、単身者で死亡のリスクが高いことも報告されています。
(Med Sci Law. 2010 Jan;50(1):11-4. PMID: 20349687)

10万人あたりの発生頻度が年間9.7人というのは、やや実感としてはつかみにくいのですが、秋田大学の研究によれば、県内において毎年約100-120件の入浴中突然死が報告されており、これは非自然死(いわゆる変死)の8~10%にあたると言われています。この研究でも8割が高齢者であり、その多くは冬期に発生していました。
(Leg Med (Tokyo). 2003 Mar;5 Suppl 1:S375-81. PMID: 12935637)

これらを踏まえると、入浴中の突然死に関する危険因子は以下のように整理できるでしょう。

[入浴中突然死の危険因子]
■65歳以上の高齢者
■冬期における入浴
■高血圧を有している

そもそも冬という季節は循環器疾患による死亡リスクの増加が報告されており、「冬」という季節要因だけでも死亡の危険因子と言えます。
Eur Heart J. 2015 May 14;36(19):1178-85.PMID: 25690792

入浴に関連した突然死が冬場に多いというのは、浴室と室内の温度差が体に与える影響というものも考えられますが、実は入浴中の突然死について、そのメカニズムはあまり良く分かっていないようです。したがってその具体的な予防戦略など検討は、限定的であるように思います。

今回の記事は、入浴関連死亡の危険因子の詳細と、その予防戦略について、最新の疫学的データにもとづき考察し”入浴中の突然死を防ぐために知っておきたい5つのこと”として整理していきます。この記事が、入浴中の安全確保のため、そして入浴中の突然死を予防することに貢献できましたら幸いです。

[目次]
・入浴中の突然死、その死因を探る
・危険因子に関するさらなる検討
・入浴方法でリスクに差が出でる?
・入浴中の突然死を防ぐために知っておきたい5つのこと

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