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透子
2019年2月22日 06:35
わたしたち、外に出られるのよ、と何一つ疑わない笑顔を浮かべるみつきに私は胸が潰されるような思いになった。 ゴウンゴウンと換気ファンの回る暗く堅牢なこの共同住居の中で、みつきは孤児のようなものだった。みつきがまだ7歳になるかならないかの時、彼女の母親は病魔に侵されて死んだ。ピリカ共同住居は死ぬのに向いていない。なぜなら遺体の保管場所も埋葬施設も設計されていないからだ。私たちは滅多なことがない限り
2019年2月16日 16:29
「ネミアナって、知ってる?」 by.水無月透子 夕凪さなぎは破壊が嫌いだ。だから友人を作るのをやめた。一条みつきは甘えんぼ。だから二人は一緒にいる。 北極の氷も南極の氷も殆ど全部溶けてしまってたくさんの島々が水底に沈んだある日のこと。地表に残った人々はそんなものにはわれ関せずとばかりにそれぞれの日常を送っている。ある国では首都機能が麻痺し、ある国では主要産業たる農業が壊滅的な被害にあい