山田守望

環境が変われば中身も変わる、ということで、フィットすることを祈念しながら、小説などを書…

山田守望

環境が変われば中身も変わる、ということで、フィットすることを祈念しながら、小説などを書かせていただきたくおもっております。無名の文芸同人誌に書いたことが何回かありましたが、未来も見えないなか、撤退しました。しかしそれも今は昔、どうかみなさまのおちからで、お助け下さい。

最近の記事

Adagio espressivo

TheBGM。約1分です。

Adagio espressivo

Adagio espressivo

    掌編小説|二つの土鈴

     男の家には二つの土鈴があった。一つは半魚人で、もう一つは鬼だった。鬼には塗装が施してあるが、半魚人は素焼きである。  今、男は土鈴を二つ手に持ち、草履を履いて庭に回った。そして巨大な岩石を横目に、そこから距離をとった。  実に快適な気候だったが、男はそれに気づかなかった。そして精神を集中させ、土鈴に目を落とした。  それは、男が小学生のときに、図工の授業で強制的につくらされたものだった。男としては、その出来は中くらいのものである。  だが、男の両親は、よくできていると思って

    掌編小説|二つの土鈴

    掌編SF小説|惑星γ3

     あなたが初めて買った小型宇宙船は、惑星γ3に引き寄せられていきます。最大手の宇宙船メーカーの、中古品です。  あなたは最近になって、ようやく操縦にも慣れてきました。しかし、まだ不安が残っています。大気圏突入の緊張が、脂汗となって滴り落ちてきます。 「まさかもたないんじゃないだろうなあ」  あなたはいつもの口癖を繰り返していました。 「イジョウハアリマセン。イジョウハアリマセン」  AIもいつもの反応でした。 「本当か」 「ホントウデス」 「いつもより暑くないか」 「スコシア

    掌編SF小説|惑星γ3

    AVG風掌編小説|指輪の森

    アナタハイマ、ウッソウトシタモリノイリグチニタッテイマス。 ミルト、イッポンノミチガオクヘトツヅイテイマス。 ミチヲサラニヨクミルト、オクノホウデナニカガヒカッテイマス。 アナタハミチヲススンデ、モリヘトハイッテユキマス。 サラニミチヲススンデ、アナタハヒカッテイルモノノマエデシャガミコミマシタ。 ミルト、ソレハエメラルドノユビワデシタ。 アナタハユビワヲトリアゲテ、ポケットニシマイマシタ。 ソシテミチナリニサラニモリノオクヘトススンデユキマシタ。 アナタハコウサロニデマシタ

    AVG風掌編小説|指輪の森

    短編小説|魂と宇宙

    ――次郎(仮名)の場合―― 戸垣次郎は、会社の帰りに、屋台のおでん屋に寄った。そして「いつもの」を頼み、疲れからややぼんやりと、まわりを見た。ほかの客はいなかった。次郎は大将にいう。 「どうですか、いま」 「ちょっと厳しいねえ」 「卵もう一つください」 「はいよ」 「そうですか」  次郎は熱さに気をつけながら大根にかぶりつく。 「こんど後輩でもつれてきましょうか」 「是非ともお願いします」 「相撲取りみたいな奴がいるんですよ。丁度いい」 「これは助かった」  次郎は熱燗を飲み

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    短編小説|魂と宇宙

    無音歌|約束

    アンダンテ・モデラート (スモールルームで)空にまた 雲を見る このごろは もっと遠く 今から何かが 始まる 答えを求めて さまよう You are nature lalala You are nature lalala どんなときにも 強く 愛し合えれば 深く みつめてる 哀しみを この胸に いだいて We are nature lalala We are nature lalala なによりも 大切な 君と交わした 約束は どこへ どこへ (間奏) な

    無音歌|約束

    掌編小説|猫の知

     少女アイラは、きょうも自宅の広い庭をひとり、ほつき歩いていた。そして、咲きみだれる花々を愛で、匂いをかいだりしていた。  そこへ、うまれてから少し大きくなったぐらいの猫のクレアが、鈴をチリチリいわせてやってくる。アイラは、エジプトのスフィンクスのような体勢で、おなじように匂いをかいでいるクレアを見て、 「わかるのかなぁ」  といって、かるくあごの下を撫でる。  この猫は、だれが飼っているのかアイラはしらない。だから、名前はかってに呼んでいるのである。もっとも、飼い主のつけた

    掌編小説|猫の知

    南風

    アレグラメンテ (ミディアムルームで)魂も 凍るような 忌まわしい 存在を ここへ来ては いけないよと だれかさんが おしえてくれた Oh…… Oh My destiny Ooh…… Somebody is lying 遠く近く 蠢いてる 感情的な 問題を 朝が来たら 壊れるよと 嘘をつかれて 十有余年 (間奏) Oh…… Oh My destiny Ooh…… Somebody is lying 南風はどこへ 今に夜にも (FO)    

    ブルース・フォー・ホンキー

    メスト・コン・エネルジア・ポーコ・ソステヌート (ミディアムルームで) ヘイヘイ ホンキー どうにかしてくれ ヘイヘイ ホンキー 金が必要だ いつのまにやら 制度が変わった ヘイヘイ ホンキー お前らが作った ヘイヘイ ホンキー とはいわないが いきなり倍じゃ 死んでしまうぞ ヘイヘイ ホンキー 急に倒れられた ヘイヘイ ホンキー 母親がヤバイ 新興宗教 勧誘に来るぜ ヘイヘイ ホンキー かわいそうだぜ 話せないどころか 寝返りも無理だ 鼻からチューブ 値上げされた流

    ブルース・フォー・ホンキー

    五月雨式

    アレグロ・アニマート・ポーコ・ソステヌート (ラージルームで)心ならずもジェラシー あしたになれば嵐 今のうちに買い物 すませておきたいんだ たしかどこかでみたことがある クラップよりも大きな声で Ah――……! 夢だろうか うつつなのか どこにいても 五月雨式 (間奏) こんなところにいたよ 可愛がってた仔猫 あしたが来る前には みつかるはずだったよ どんな予感もいつかは当たる オスの三毛猫珍しい Ah――……! 夢だろうか うつつなのか どこにいても 五月雨式

    五月雨式

    ハロー

    アンダンテ・マエストーソ・ポーコ・ソステヌート (中ホールで)愁い ときには ちょっぴり 想う いまでも 独り 遠く だれより 高く あした 雨が 降るという 黄昏の 夢の中 今だけを うけとって そそぐ (間奏) これ以上 あすをみせないで これ以上 夢をみせないで ハロー ドクター ハロー コンピューター 愁い ときには ちょっぴり 想う いまでも 独り  

    アイ・ウォント・トゥ・ムーヴ

    アダージシモ・ポーコ・スケルツァンド (教会もしくは小ホールで) 今夜 誰かの描いた画が どこかで 動き出す きみが おしえてくれた 最後の 大芝居 みんな 取り残されずに たった 一度のチャンス いまでも 確かに活きてる 孤独の アニマ 狂気を埋めろ 誰かに託せ もうこれ以上 秘密にするな (間奏) どこかで(アイ・ウォント・トゥ・ムーヴ) どこかで(アイ・ウォント・トゥ・ムーヴ) どこかで(アイ・ウォント・トゥ・ムーヴ) どこかで(アイ・ウォント・トゥ・ムーヴ)

    アイ・ウォント・トゥ・ムーヴ

    青幻

    ラルガメンテ・ポーコ・スケルツァンド 彼女は 探していた この世に 生きる意味を いまでも 信じない 誰かの 救いの手を (Ah――……) どこかで 叫ぶ声が どうして 聞こえない 何を見て ここからは これ以上 歩けない どこにいるのか 誰がいるのか 今も今でも わたしのもとへ 時計の針が 止まろうとする あの頃のように 堕天使がくる (間奏) 彼女は いまでも どこかで 歌っている いまでも わたしの見る 青い 幻のよう