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《光の授受》の挿話─ナゴール的な、もしくは非ナゴール的な─ ウルトラマン第1話の形態学[2]

『帰ってきたウルトラマン』の《光の授受》
 『帰ってきたウルトラマン』では、先行する不同型作品『ウルトラマン』において初の《光の授受》が十分ていねいに描かれた呼応して、『ウルトラマン』とは異なる契機によって《光の授受》に至ったことが『ウルトラマン』と同様の緻密さで描かれている。

素手の郷秀樹
 郷秀樹とウルトラマンの《光の授受》はどのようなものであったか。郷秀樹は、MAT入隊前の非武装状態=自動車整備用作業着の姿のまま、ハトと犬を助けたいという子どもの気持ちに寄り添ってアーストロンの近づくマンションに赴き、子どもをかばってコンクリートの下敷きになる。これが、不同型ウルトラマン主人公が最初に見せる《無謀な勇気》である。病室で一度命を落とし、その死の床?の夢の中にウルトラマンが現れて《光の授受》となり、蘇生する。
 ただ、郷の行動は、怪獣に直接向かっていくのではなく、あくまで目の前の救助活動に徹しており、後述の主人公たちに比べれば無謀の度合いは低く、まだしも「通常の勇気」として受容しやすいものとなっている。また、郷の生死の境目や蘇生後の場面がていねいに描かれることで、「不死身の郷秀樹」がかえってよく印象づけられる。そして再び、角材を梃子にするなどして素手で救助活動を行う中、射し込む光を受け両腕をかざし変身に至る。
 変身用小道具を持たないことは郷秀樹の著しい特徴であり、ここでは特に「素手で立ち向かう勇気」の自己表象となってもいる。そして、ウルトラマンの台詞「自分の危険も顧みず、子どもを助けようとした君に感動した」および加藤隊長の台詞「君のその不屈の精神力、強靭な肉体は、我がMATチームにふさわしい」も示すように、郷の《無謀な勇気》が自らをウルトラマンおよびMAT隊員成らしめる契機となったのである。
 『帰ってきたウルトラマン』以降、こうした《無謀な勇気》の発動がウルトラマン主人公の行動の典型的特徴となる。そしてそれは《光の授受》の直前において特に顕著に表出される。本稿で扱う9つの《光の授受》のうち、6つまでが《無謀な勇気》を契機としているのだ。すなわち、この6つに対応する不同型主人公は、彼らの物語の端緒である第1話から、むちゃを顧みず危険に立ち向かっていき、自ら危機に陥る。そして、その無鉄砲で命知らずな単独行動がウルトラマンの目に留まり、見込まれ、一体化に至るのである。また、《無謀な勇気》は、同時に「科特隊(注1)の入隊資格」への契機の典型にもなっていく。

 次章では、残る5つの《無謀な勇気》の様子を見ていくことにする。

注1…[1]の凡例参照。総称として用いている。

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