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【映画感想文】リバー・ランズ・スルー・イット

私の一番好きな映画の話をさせてください。

昨日!
映画館で初めてその映画を観たのです。
一番好きな映画ですが、映画館で観るのは初めてでした。

『リバー・ランズ・スルー・イット』

1992年、ロバート・レッドフォード監督の作品です。ブラッド・ピット主演。20世紀初頭のモンタナの壮大な自然を背景に、フライ・フィッシングを通して交流する家族の絆とそれぞれの葛藤を描く。厳格な牧師の家庭で育てられた、真面目な兄ノーマンと自由奔放な弟ポール。父に習ったフライ・フィッシングで結ばれる2人は、やがてそれぞれの道を歩み始めるが……。

作品紹介文 より

牧師の父は言語に厳しく、息子たちに文章の書き方を教え、と同じくして、大自然に触れるフライフィッシングも教える。雄大な山々と川の中で活き活きと育つ幼き兄弟は、とても素直で勝気で無邪気で可愛らしい。

ポールが昼間の娼婦たちの前に出ていって、腰をふり踊るシーンなんて、本当にかわいくて、ニヤニヤしながら観ていた。

そう、映画館で観たのは初めてだったけれど、この映画は1992年公開。当時、私は中学生で、姉が英文科へ進むのに役立つだろうと、母がWOWOWを契約してくれたおかげで、この映画と出会ったのだ。

何度も再放送をしていたのだと思う。その映像の綺麗さと、若かりしブラッド・ピットのかっこよさと、とても気に入って、そのうち一回を録画して、何度も何度も何度も観た。

そのころの私は、学校では真面目でいわゆる「優等生」で、自分で自分のことを真面目すぎて「面白味のない人間」だと思っていた。まるで、ノーマンのように、誰かの期待に応えたり、求められているだろうことをこなし、親や周りからの評価を得て生きていた。

だから、ポールに惹かれていた。

危険やスリルに「面白そう」と突っ込んでいく様や、嫌なことは頑として抵抗し、好きな物への情熱は惜しまない強さ。話も面白く人気者で、ダンスもとても上手なポールに。

学校から帰って、何度も何度も観ていたのは、ノーマンとポールの兄弟に自分を重ね合わせ、真面目で面白味のない自分にも、楽しいことに素直に飛び込みたい自分にも、『自我のめざめ』のようなものを感じていたのだと思う。牧師の厳格な父を、まるで自分の父のように観ていた。

あの映画を、スクリーンで観られる…。

『午前十時の映画祭』
特に素晴らしい傑作娯楽映画を選び、全国の映画館で1年間にわたって連続上映するというリストに、「リバーランズスルーイット」も入っていた。
(同じくこの映画を大好きだというnoterさんから教えていただいてからというもの、ずっとずっと楽しみにしていたのだ。)

ついに、その日が来た。

まわりは空席ばかりで、チラホラと座っているのは年配のご夫婦か、中高年男性一人がポツリポツリと。私は、その中央の席に堂々と1人、ホットドッグとコーヒーを手に座る。
特等席だ。

スクリーンにモンタナの美しい川の流れ始まると、思わず「あぁ…」とため息がもれた。

そう、この語り口。

物語は、年老いたノーマンの語りで進む。

兄弟の仲の良さ、父や母の関わり方、地元の連れたちの心地良さ。川の煌めき、流れの速さ、フライフィッシングの釣り糸の音、水面をなびく釣り糸の美しさといったら。
大きなスクリーンで観る自然の迫力、川のせせらぎはサラウンド、やっぱり映画館で観られるのは幸せだ。

ポイントに集中する眼差し、キャスティングする瞬間、魚を釣り上げるまでのリールさばき。熟練の父、頭脳派のノーマン、そして天才的に自分のリズムを掴んだポール。

自然は時に厳しく、そしてとても寛大だ。

中学生当時、私はポールに憧れていたと書いたが、大人になった今、ノーマンの辛抱強さや誠実さがとても偉大に見えた。
ポールもまた、そんな兄貴をいつもずっと尊敬していたのだとわかる。兄貴が恋をして、結婚をすると告げた時のポールの表情は、喜びの前に、どこか寂しげで。そうだ、私も姉たちが結婚をすると聞いたとき、似たような感情を抱いたのを思い出した。

そして、父や母の感情もまた、今となって見えてくるものがある。タイプの違う二人の息子たちだけれど、どちらも同じように愛していたことも。大人になった息子たちに注ぐ母の視線が、とてもチャーミングで素敵だった。感情をあまり表に出さない父の、息子たちを思う感情の揺れも。

時は留まることを知らず、それはまるで川の流れのよう。流れに足をとられ流されてゆくのか、その流れをうまく捕え、流れてゆくのか。当時ではわからなかったいろいろな教えが、この美しい映画にちりばめられていた。

話したいことは山ほどあるけれど、陳腐な表現になってしまいそうで、ちっとも言語化できずにいて。結局のところ、「ぜひ観てほしい」としか言いようがないのだけれど。


「心が震える」とはこのことだ、と思う。

やっぱり、私の、一番好きな映画だった。


最後に、一番胸に響いたフレーズを。

人々は理屈を離れ、心から人を愛することができる

牧師としての父の最後の説教。


私の人生において、何度でも観たい映画だ。


午前十時の映画祭✨に感謝です。

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