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涙も悲しみも忘れて。【安室奈美恵 引退によせて】

安室奈美恵がついに引退となった。
昨年突然発表されたあの引退宣言からあっという間の一年だった。まだ一年もあるしね、なんて思っていたけど、気付いたら最後の全国ツアーが始まっていて、あれよあれよと言う間に昨日を迎えてしまった。

2015年、安室奈美恵がリリースした「_genic」というアルバムがある。
その時のプロモーション活動でチラリと耳にした「Golden Touch」という曲が妙に耳に残って、アルバムをレンタルして聴いた。
それまで僕の中で安室奈美恵というアーティストのイメージは、やはり小室哲哉プロデュース時代のイメージが強かった。「Don't wanna cry」という曲がめちゃくちゃ好きだったけど、熱心に作品を追うまでのファンでは無かった。僕の音楽遍歴と安室ちゃんの音楽が交差することは無いだろうなぁと考えていたくらいだ。

しかし、「_genic」のクオリティの高さに驚いた。衝撃だった。
楽曲とトラックの格好良さ、そして何より安室ちゃんの歌唱力、表現力に撃ち抜かれてしまったのだ。クールビューティーとかいうあまり好きじゃない表現があるけど(笑)、安室奈美恵のパフォーマンスはまさしくクールビューティーだと思う。

そこからはTKプロデュース期も含めて、アルバムを借りたり買ったりと、集めまくった。この頃の僕は、なにかに取り憑かれたように安室奈美恵しか聴いてなかった。Blue-rayも買って、繰り返し観たりしていたもの。

そうして聴いていく中で、安室奈美恵というアーティストは音楽性が結構変容している人なのだな、という事を知る。
簡単に彼女の音楽を仕分けすると、「TK期」→「ヒップホップ期」→「エレクトロミュージック期」→「ラスト期」と分けられると思う。
「ラスト期」というのは、この一年くらいの期間のこと。過去の曲も最新曲も。すべての安室奈美恵の歴史を、"今の安室奈美恵"が体現した時間。
この「ラスト期」は安室奈美恵ファンにとってかけがえのない時間であるから除外するとして、僕が一番好きな時期は「エレクトロミュージック期」である。
特に「Uncontrolled」と「FEEL」というアルバムが好きで、アホほど聴いた。マジで猿みたいに聴いた。笑

自分でもどうしてそんなに聴いてしまうのかずっとわからなかったのだけど、僕はきっと、安室奈美恵に恋をしていたのだと思う。

恋とはいっても、男として安室奈美恵とどうこうしたいとか、そういう下衆いものではない。
今っぽく分かりやすい言葉を使うなら「尊い」という言葉が当てはまるのだと思う。安室奈美恵がこの世に存在していて、コンスタントに作品を発表し、ツアーを行う。それが映像化され、ライブに触れられる。
そんなアーティストとして『普通の事』が、ただ愛しく、ただ尊い。
それが『普通の事』では無いことを、引退宣言で思い知ることになるのだけど。

だから、ここ一年の安室奈美恵ブームを見ていて、少ししんどくなった。
ファンとしては、素直にそんなブームに乗って引退を悲しんだりマーケティングに貢献したり出来れば良いのだけど、それが出来なかった。安室ちゃんの音楽を聴くこともあまり出来なかった。

僕は、「最終回」が嫌いなのだ。

好きであればあるほど、終わってしまうのが悲しい。寂しい。
この引退までの流れを世間と同じような時間感覚(リアルタイム)で追ってしまうと、僕の中の安室奈美恵というものが失われる、そんな気がしてしまったのだと思う。
引退を受け止めるには、一年間でも足りないくらいだったのだろうな。

でもいつかはちゃんと引退を受け入れて、区切りをつけなくてはならないと思う。そうすることで、安室奈美恵の音楽をスッキリとした気持ちでまた聴くことが出来るのだろう。それは分かっているけれど、もう少しじっくりと噛み締めたい。

アーティストも、バンドも、人間であり、ナマモノだ。不変ではない。
活動休止、引退、解散、脱退。
僕らはいつもそんなものに怯えているけれど、それらを受け入れるところまでが、ファンになった人間の責務のような気もする。病気になったら仕事を休むのと同じように、生きているものなのだから仕方ないこともある。病気になってんじゃねーよ、とは言えない。してやれることと言えば、優しく接することくらいしかないのだ。

安室奈美恵さん、26年間本当にお疲れ様でした。
またいつか、どこかで、あなたの歌に触れられたら良いな。

ちなみに、僕が一番好きな曲は「BRIGHTER DAY」です。
時期的にちょうど微妙な曲なので、どのアルバムにも入ってないのだけど、そこがいい。笑


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