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「ロボットの惑星」


そこは、ロボットがたくさん暮らしている小さい惑星です。
ロボットたちは毎日、何かを作ったりして、忙しくも楽しく暮らしています。
そんなロボットがたくさん居る惑星に、たったひとりだけ人間がいるのでありました。

その人間は博士で、髪はすっかり白色になってしまったおじいさんです。
いつもロボットたちの体を点検してあげています。
ギシギシいうようならオイルを差し、壊れた部分があると工具で修理をしたりします。
博士はロボットたちから大変好かれ、今ではすっかり惑星にとって無くてはならない存在になっています。


そんなある日、惑星に小型船が漂着します。
ロボットたちがなんだなんだと群がって見てみると、小型船の中には博士と同じ人間が乗っていました。着地の衝撃で気を失っているようです。
力持ちのロボットたちが、小型船ごと博士の元へと運んで行きました。

博士は驚きました。まさかこんな辺鄙な惑星に自分以外の人間がやって来ようとは。
小型船をあらかた見、中にいる人間の顔を見て、博士はまたひとつ大きく驚きました。
中に居たのは、ずーっと前に地球に残してきた自分の息子だったのです。
自分が知っている頃よりずっと大きくなっていましたが、博士にはそれがすぐに分かりました。

博士とロボットたちの手当の甲斐あって、息子は目を覚まします。
博士と感動の再会を果たした後、息子は父である博士にある相談を持ちかけます。

息子の話によると、地球に居る人間たちは自分たちが暮らせそうな惑星を探しているのだそうです。
地球はすっかり汚れてしまっているのに、それでも人口はどんどん増えるから、住みにくい惑星になってしまったというのです。

「僕は人間たちが暮らす惑星を探す調査団の一員なんだ。
お父さん、だから、この惑星を人間たちの新しい住処にしていいだろうか。ここは地球よりずっと綺麗だし、ロボットたちもみんな優しい。こんなに理想的な惑星は無いよ。
ね、だから、良いだろう?」

博士は悩みました。
ここはロボットたちの惑星。ここに人間がやってくるとなると、きっと良くないことが起こるはずだ。
だって人間たちは欲張りで、意地悪で、嘘つきだから。
それに、博士はここでの暮らしを愛していました。人間よりもずっとわかりやすく、そして優しいロボットたちの事が大好きだったのです。

博士は息子にそんな自分の思いをぶつけました。
それを聞いた息子は青い顔をして博士に謝ります。

「そうか、そんな思いがあったんだね。
でも、ごめんなさい。断られるとは思って無くて、実はもう地球に報告してしまったんだ。この惑星のことを、知られてしまったんだ。」


欲張りな人間たちはすぐにやってきました。
人権だとか命の尊さだとか、もっともらしい綺麗事を並べて、博士に詰め寄ります。

博士はそれでも断り続けました。

「ここはロボットたちがロボットたちのためだけに暮らしている惑星だ。どんなに綺麗事を言ったって、人間はきっとロボットたちを奴隷のように働かせ、ペットよりもひどい扱いをするだろう。頼むから放っておいてくれ。ここはロボットたちの国なのだから。」

しかし博士と息子は捕らえられ、地下深い牢屋の中に入れられてしまいました。

そうして数日が経った頃、牢屋の鍵が一台のロボットによって開かれました。

博士らが事の顛末を聞くと、ロボットは「見タホウガ早イデスヨ」と良い、外へと案内してくれました。

見ると、まるで大きな隕石が落ちたかのような穴が、地面にたくさん残っていました。
大きな爆発があったのでしょう。
今は、土木作業を担当しているロボットがその穴を埋めているのが見えました。

ロボットと人間たちの間で大きな戦争があったようです。
地下に居た博士たちには何も聞こえませんでしたが、その戦争はとてつもない規模のものだったことが見て取れます。

「博士、モウ心配シナクテ良イヨ。」
「壊レチャッタ仲間ガタクサンイルカラ、治シテ」

博士と息子はおいおいと泣きました。
どうして出ているのか分からない涙です。
それでも涙はたくさんたくさん、次から次へと出てきたのでした。


そこは、ロボットがたくさん暮らしている小さい惑星です。
ロボットたちは毎日、何かを作ったりして、忙しくも楽しく暮らしています。
そんなロボットがたくさん居る惑星に、人間がふたり、いるのでありました。

博士と、その息子であるふたりの人間は、いつもロボットたちの体を点検してあげています。
ギシギシいうようならオイルを差し、壊れた部分があると工具で修理をしたりします。
博士と息子はロボットたちから大変好かれ、今ではすっかり惑星にとって無くてはならない存在になっているのでありました。


おわり

こんな駄文をいつも読んでくださり、ほんとうにありがとうございます…! ご支援していただいた貴重なお金は、音源制作などの制作活動に必要な機材の購入費に充てたり、様々な知識を深めるためのものに使用させて頂きたいと考えています、よ!