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雨の日の車内

雨が昔から好きだ。雨が降り始めれば街はそれに支配されて、独特の雰囲気を持つ。めんどくさそうにしている人が大半だが、オレはウキウキルンルンしてしまう方だ。

まず、雨は音がいい。当たるところによって様々な音がする。多数の風鈴が揺れて様々な音程の可愛らしい音をチロチロと立てるのに似ている。

雨が窓ガラスに当たれば滴る水で景色がぼやける。水中から世界をのぞく魚はこんな視界なのだろうかと想像する。
黒い雲の下にいると何故か安心する。
濡れても面白い。昔から雨に濡れるのが好きで、よく傘を持っているにも関わらずささずに帰った。
親にはこみっちり怒られた。ランドセルの中がぐちゃーぐちゃになっていたからだ。

エンジンが停止した車でぼーっとしているときに降る雨が好きだ。雨が降ったからぼーっとしているとも言えるが、なにか、大切な事を考えろと言われているような気分になる。

なにか思いついては消えていく、地面に当たり弾けてはまた地面に吸い込まれていく雨粒と同じようなものだ。
鉄に当たった音、ガラスに当たった音、街の雨の音。鉄は高い音が出るけれど、ガラスは鈍く低い音が出る。よく聞いてみるとおもしろい。
雨で滲む車窓から、めんどくさそうに歩く学生を眺めたりするのがなんとも好きだ。

雨の日は雨の日しか見えない街の顔がある。

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