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一日一説

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一日一話、超短編小説を更新したものをまとめています。
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記事一覧

サッカー? いいえ、フットボールです

「廊下は走るな。走りたければ、フィールドを走れ」  そう言われてサッカー部に入ったのだか…

一日一説
6年前
3

休日のヴァンパイア

 ヴァンパイアであることは案外バレにくい。  人より発達し過ぎた犬歯を見せびらかさなけれ…

一日一説
6年前
6

数十年ぶりの逃走

「まてコラァ!」 「く、ハア・・・・・・ハアハア」  揺れる視界。噴き出す汗。全力疾走なん…

一日一説
6年前
4

人種

 購買で買ったバニラチョコアイスクリームを放課後の教室でほおばって首から上をキンキンに冷…

一日一説
6年前
3

宇宙人の寿命

宇宙人であるマサ雪の唯一の欠点は人より多く靴の底が減ってしまうことだ。 しかしマサ雪は直…

一日一説
6年前
4

機会損失

「嫌なことは全部吐いちまえ」  そう言われたから、全部出した。結果、なにも出なかった。  …

一日一説
6年前
6

手を上げろ!さもなくば

 睨み合う二人の男。空気清浄機の音だけが狭い室内を漂う。 「手を上げろ!」男の剣幕には切れ味があった。 「嫌だと言ったら?」対する男には余裕がある。 「上げたほうが身のためだぜ?」男の指に力がこもる。 「違うね。お前のためだろ?」男の表情には涼しげさすらある。 「後悔するぞ!」男はほとんど叫んでいた。 「さあ、どうだかな」口元に微笑をたたえたまま男は自分の足元を見つめている。  力強く握られた拳を解いて、観念したように男は背を向けた。 「本当に後悔しても知らねえぞ。そいつは

現代の権六と禿げネズミ

「こんにちは」 「あら、勝家さんこんにちは。しかし、ほんと暑いですわねー」 「そうですね。…

一日一説
6年前
4

穴見便利相談所~穴見さんと頭脳派美人秘書~

「穴見さん。やっぱりないですって。もうあきらめましょうよ~」  アスファルトにぴったり這…

一日一説
6年前
5

悪気はない。広辞苑が厚かったのだ。

 たまたま目についた広辞苑で頭をぶん殴った。重力相まって振り下ろされたそれは、泣かされた…

一日一説
6年前
2

犬と猫と夜街

 うろこ模様の道が続く路地は暗い。両端に連なる家々は迫るように道を圧迫している。窓から漏…

一日一説
6年前
3

情けは人の為にならない

 パパからの手紙が届いた。月に一度、決まって木曜日に真っ白な封筒に入ったそれは送られてく…

一日一説
6年前
2

縁の下の侵入者

 人の家に棲みついてから5年になる。棲みついて、と言うからには勘違いしてほしくないのは、…

一日一説
6年前
3

変わらないもの

「またいつか会えるよ」  そう言い残した彼女の後姿を、僕はいまでもはっきりと覚えている。  彼女はそう言ったきり、振り返らなかった。  あれから10年が経って、世界は、日本は、だいぶ変わった。  10年。  たったの10年と言ってしまえば、そうなのかもしれない。いよいよ20代の終わりが見えてきた僕にしてみたら、10年というのはどこを切り取っても人生の起伏のほとんどを占めている、アイデンティティーの塊みたいなものなのだけど。  では彼女にとってみればどうだろう。彼女にとっての