犬と猫と夜街

 うろこ模様の道が続く路地は暗い。両端に連なる家々は迫るように道を圧迫している。窓から漏れる光をのぞけば、まともな明かりは空に浮かぶ月だけだ。背の高い街灯は忘れた頃合いに出現し、ぼんやりとした灯をその頂きに掲げるが、それ以外の部分は闇と同化していたため、宙に火が浮いているようだった。視線をうろこ道からほんの少し先へ伸ばすと、道は建物の影へと吸い込まれるように消えていた。

 遠くから犬の二三度吠える声がする。静まり返った世界にそれは十分すぎるほど響く。犬は己の声があまりに盛大に拡散されることに驚き、沈黙した。時たま家のドアから顔覗かせる犬がいたが、すぐに引っ込めた。

 朝になると、どこからともなく現れた猫が狭い道を闊歩した。太陽の光が射す場所を巧みにかわしながら、彼らはほとんど同じ場所を歩いた。向かう場所もなく、ただそうすることが目的のように猫たちは振舞った。日は嘗めるようにゆっくりと傾いていく。

 犬と猫の間には密約があった。
 愛玩動物として確固たる地位を築いた彼らは、その他人間に飼育される動物たちよりも遥かに高いポジションを占めた。しかし、その分だけ人間から受ける拘束と捧げる労力は種を苦しめた。
 そこで彼らは、互いの負担を平等に折半することにした。昼夜二交代制でたまに一日勤務を挟む。極力人間たちに怪しまれないようにしながらも、負担の少ない夜を満喫できるようにし、たまの休暇も楽しんだ。彼らは素知らぬ顔で今日も我々に尽くしてくれる。

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