見出し画像

不登校の地獄から救い出してくれた、一冊の本との出逢い。

高1のゴールデンウィークの初日。息子は高校の友達と出かけると言って、いつもより少しだけおしゃれをして出かけました。そんな息子を愛犬を抱いて見送りました。息子は2度振り返って、私と愛犬を見てニコッと笑いました。


3年前の今頃、私たち家族は地獄の入り口にいました。中学に入学したばかりの息子が学校に行けなくなってしまったのです。今思えば、幼稚園の頃から新しい環境に慣れるのが苦手という傾向はありました。それでも、5月の頃の私たちはここがまだ地獄の入り口でしかないという事に気付いていませんでした。

そこからは階段を転げ落ちるように全てが悪くなりました。夫は「学校に行け!なんで行かないんだ!」と息子を責めたてました。家から力ずくで引き摺り出し、一度も手をあげたことのなかった息子を殴りました。私は息子と一緒に死のうかとさえ考えました。

家族の不安が増せば増すほど息子の様子も悪化の一途をたどりました。昼夜逆転のゲーム三昧、それを取り上げようとした夫の骨折、止めようとした私も突き飛ばされ床に転がりました。息ができないほど脇腹を強打した私の事を心配する人は誰もいませんでした。犬は部屋の隅で震えていました。

「俺なんか死ねばいいんだ!」「ここから飛び降りてやる!」「死ね!」「ぶっ殺す!」「てめぇ消えろ!」これ以上ないほどの罵詈雑言を親にもそして自分にも浴びせかけ、息子は泣き叫んでいました。部屋にバリケードを作って篭り、部屋の壁には穴が開き、壁を蹴る音、殴る音が息子の部屋から聞こえて来る毎日でした。


今まで遠い世界の出来事だと思っていた「親が息子に手をかける、またはその逆の事件」が起こってもおかしくないような日々でした。

不登校を経験しなければわからない、どこが上か下かもわからないほどの真っ暗闇の中の本当に地獄のような日々でした。警察にも、救急車にもお世話になりました。

救いを求め、学校カウンセラー、民間カウンセラー、不登校支援団体、行政の相談窓口、電話相談、警察、占い師と考えられるだけのありとあらゆる手段を試しました。けれど、誰も解決策を具体的に示してはくれませんでした。その間にも月日は飛ぶように残酷に流れて行きました。

「自分の命よりも大切な我が子の人生を自分の手で握り潰してしまった」私は後悔で引き裂かれそうでした。


そんな中で出会ったのが森田直樹さんの著書「不登校は1日3分の働きかけで99%解決する」でした。30冊ほど読んだ不登校関連の本の中で一番納得と共感が出来る内容でした。それでも、実際に本当にこんなことで行けるようになるのかと半信半疑でいたところ、偶然夫が知り合いの方からこの方法で登校できたお子さんの話を聞いてきました。「これしかない」と直感しすぐに声かけを始めました。

この本の言葉かけはとてもシンプルです。「子どものしたこと、できたこと」に「〜の力がある」「〜でお母さん嬉しい」をつけて伝えるだけです。こんなことだけで、と半信半疑のまま実践してみると実はとても奥の深い言葉かけであることに気づかされます。

子どもの良さは子どもをよく観察していないと見つけられないのです。マイナスなことは見ません。プラスのことだけを毎日コツコツと続けていた3週間目、なんと何ヶ月も登校していなかった息子が行事の準備に登校したのです。突然のことでこちらがビックリするほどでした。

けれど、行事には参加できたものの翌日からはまた欠席。それでも石にかじりつく思いで言葉がけを続けていたある日「明日学校行ける気がしてきた」「よし、明日行く!」と言い出し、本当に翌日朝から自分の足で登校しました。あまりにもあっけなくて拍子抜けするくらいでした。声かけを始めてちょうど50日目の出来事でした。


それからも全て順調にいった訳ではなく、一進一退、一進十退ありました。でもそれは今思えば息子の後退ではなく私の後退でした。「這えば立て立てば歩めの親心」の悪い見本のように、登校すればしたで私の「欲」と「過干渉」で息子の自信の水を減らした結果だったのです。

「これは子供を変える方法ではなく、親のものの見方や考え方を変える方法です」と森田直樹さんがおっしゃることを本当に理解するまで私は2年ほどかかってしまったと思います。それでも「子供の問題は親が解決することはできない、子供には乗り越える力がある」と心から信じられるようになるにつれ、息子の登校は確実に増えて行く実感がありました。


あの地獄の日々から3年が経ち、息子は普通高校を受験し合格。「学校楽しい!」「早く明日にならないかなぁ」「なんで連休があるんだ!」と心から学校を楽しみ毎日登校しています。

本当に夢のようです。こんな日がもう一度来るとはあの日々からは想像もつきませんでした。私は私でこの本のおかげでマイナス思考からポジティブ思考に変身しつつあると感じています。

今の不登校支援の主流のように、ただ何もしないで待っていたら子供の大切な日々はあっという間に流れ去っていってしまいます。お子さんの不登校で苦しんでいる親御さんは騙されたと思ってこの本を読んでみてほしいと思います。嘘だと思っても声かけを試してみてください。そして少しでもお子さんに変化があったと感じたら、どうかその声かけをそのまま長く続けてみてください。

一人でも多く、一日でも早く不登校のお子さんがこの本に出会い、不登校の地獄から抜け出されることを心から願っています。

画像元 https://jp.freepik.com/free-photo/high-angle-of-a-coffee-on-books_5893377.htm


この記事が参加している募集

読書感想文

子どもに教えられたこと

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?