使わないボトルは今すぐ捨てろ!【靴の底 #13】
上記の言葉を旦那に言う。
「いや、これから使うかもしれんやん。取っといたほうがええって」
殻になって1年間使用していないハンドソープとボディソープのボトルを背中に隠した。
我が家は1年前からこの2つを固形石鹸に変えた。特に不便もなく、頻繁に買い替える必要もないため家計も大助かりだ。
それなのに・・・、旦那は1年前に使っていたボトルを隠し持っていたのだ。
引っ越しの断捨離をしていた時に偶然見つけたボトルは、どう見ても古くなっており、「ぼくを捨てて〜〜」と言っている。
これを新居に持っていくなんて!こいつ正気なのか!?
「捨てなさい!!もう、使わないでしょ!!」
「あかんって。そのボトル買うのも高いやん。いつか使うかもしれん!」
「いつか使うって、いつ使うんだよ!」
勢いよくいらないプラスチックを入れたゴミ袋にボトルをぶち込むと、ぼすっと鈍い音を立てた。価値観の違いに理解ができず、イライラしながらそのまま2階に上がる。
我が家は24時間のゴミ捨て場が管理されてはおらず、週の決められたゴミ捨て日を狙ってゴミを捨てなければいけない。
早めに断捨離をしていて大正解だった。先週、捨てたと思っていたのに、まだまだいらないものが増えていく。
「ほら!次は、いらない服を売りに行くよ!!」
仕事の繁忙期がようやく落ち着き、土日が空いた旦那を引き連れて今度は大量の服を古着屋に売りに行く。
大きめの紙袋が4袋になり、一人では到底持っていけないためだ。
歩いて15分程の距離に古着屋がある。自転車に重たい紙袋を乗せると、ゴソゴソと何かをしている旦那を呼び、家を出発した。
「服いくらになるかな〜」
自転車を押しながら、旦那が脳天気な声で言う。
「私の見立てでは、3000円だね!」
「オレは、7000円だと思うね!」
「君は古着屋の買い取りの恐ろしさを知らないね。そんな高価買取ないよ!」
買取金額の妄想を二人でしながら店につくと休日だということもあり、たくさんの人で賑わっていた。
1時間半ほど査定の時間が必要だと言われ、近くのコーヒー屋で休憩することにした。
「このコーヒー屋にももう来れないのかぁ。鎌倉は良いコーヒー屋あるかな」
「私のリサーチでは、結構コーヒー屋あるらしい」
旦那に会計をまかせて先に席につく、少し肌寒い店内は様々なコーヒー豆の匂いがする。いつの頃からこの匂いが心地よくなったんだろう。もう忘れてしまった。
「きみ、出会った頃はコーヒー飲めなかったよね」
会計を終えた旦那が席についた。
「あー、そうやったね。ムーちゃんもコーヒー飲めなかったやん」
「そのあだ名で呼ぶのやめてくれんか」
彼から呼ばれる変なあだ名は付き合ったときから続いていて、一向に名前で呼んでくれない。
「いつからコーヒー飲めるようになったのかなぁ」
過去の記憶を思い返していると、湯気が立つコーヒーが2つが運ばれてきた。
「プリンだ!しかも、クリーム付き!」
「シェアするんやで」
出会った当初は『この人、何考えてるかわからない顔してる』と思っていたが、今はちょっとした顔の変化で感情が読み取れる。
今のニヤリは、私を喜ばしたかったからだな。
「こういう時間が欲しかったんだよね」
持ってきた単行本を読み始めた旦那に話しかける。
「きみずっと忙しかったでしょ。だから、この時間を欲してたんだよ」
「満たされたか?」
「うん!なにでイライラしてたのか、もう忘れた!」
たくさん話していると査定終了の連絡が来たため、店頭へ戻った。
疲れ切った店員から買い取り価格が提示される。
「670円になります〜」
紙袋4つ分の服はほとんどゴミだった。
金額を受け取り、紙袋を持って無言で店をあとにする。
モノは買ったそばからゴミになるのだ。
翌日、ゴミ袋2つになったプラスチック達はゴミ収集車へ回収されていった。
「あ〜だいぶ捨てられてきたな〜。明日は粗大ゴミ第二弾だ〜」
スッキリした気持ちで、きれいになった棚をおもむろに開ける。
そこには、捨てたはずの例のボトル2本がきれいに並べられていた。
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