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付き合うのと結婚はなんだか違う【靴の底 #15】

「恋人のときと結婚してからの旦那が違う人に見える!!」
ケニア出身の友人がスタバのココアを片手に話す。例のある街のクリーニング屋で働く母に紹介してもらい友人になった彼女は日本人の男性と結婚して8年だ。

「わかる。付き合うのと結婚して一緒に生活するのってちがうよね」
大きく頷く私の手を握り、彼女はさらに大きな声になった。
「そうでしょ!この現象って世界共通なのかも!!」
妻が抱える旦那への不満や悩みは世界共通だと二人で確信し、友情を確かめ合う。

広告制作のディレクターとして働き、昼夜関係のない仕事と職場の人間関係に悩み、18歳の頃から抱えていた病気が再発してから数ヶ月。その間に彼氏だった人と結婚し、ほとんど家にいる生活をしていたが最近とても憂鬱な日々を過ごしていた。
病気のこともあり、自然に近い鎌倉に引っ越しも決めたが、引越の手続きに参加をしないことや家事に協力的ではない旦那にイライラが募る日々を過ごしていた。

子供の頃に母親から父親の悪口や愚痴を聞かされて育ってきたせいか、自分の旦那の愚痴を人に言うのは悪いことだと思っていたのだが、内に内に溜め込みすぎて、頭がおかしくなりそうだった。
だが、ケニアから来た彼女には旦那の愚痴を面白おかしく話せ、お互いでこうやって散々話してはスッキリするという、日々を過ごしている。

「葉子は旦那さんに嫌なこととか、やめてほしいことって口に出して言ってる?」
自分が普段どう彼に接しているのかを思い出してみる。
「めちゃくちゃ言ってる。泣きながら言うこともあるし、家から飛び出すこともあるよ」
恥ずかしい話もなぜか彼女には言える。
「その時、彼はどんな対応をするの?」
「私が怒っても黙ってそばにいるし、話し合うときは話し合うかな。雨の日に飛び出したときは、追いかけてきたし・・・」
ふだんから私は何をしてるんだ・・・。話していて恥ずかしくなる。
「素晴らしいじゃない!!」
アハハ!と豪快な笑顔で私の肩を強く叩いた。
「あなた達、素晴らしい関係だわ!逃げずに向き合う、最高ね!」
人に話していて恥ずかしい話を彼女は何度も「すごい!素晴らしい!」と言ってくれる。
「いや〜素晴らしいかな?本当は我慢して仲良くいるのが大切だと思うけど・・・」

「お互いがネガティブな感情を伝えて、そこに二人で向き合うことが大切なんだと思うの。その積み重ねが人と長く一緒にいるコツよ」

いつものカラフルなワンピースが今日はさらに色鮮やかに見える。
「国際結婚はどう?ネガティブな感情をぶつけてる?」
「大声だして喧嘩することもある。けど、ネガティブな感情に二人で向き合えるから夫婦でいられるわ」

付き合うと結婚はなんだか違う。夫婦でいるむずかしさは、国が変わっても同じなのだ。

「でも、ネガティブな感情に支配されてばかりじゃダメだね。明るい気持ちも大切!」
「あなたのカラフルなワンピースと同じ気持ちでいなきゃね」
私のジョークに、またアハハ!と彼女が大声で笑う。

「お互い、今日は旦那に優しくしましょ」

友達に話してスッキリすることがたくさんある。
たまには、旦那の愚痴を肴に友人と話してもいいかもしれない。

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