見出し画像

モノが捨てられない旦那【靴の底 #12】

「これ絶対いらないよね・・・」
50本ほどの鉛筆の束を見て考えてみる。
彼がこの鉛筆を使っているのを見たことはないし、ジップロックに入れられてずっとこのタンスの奥で眠っていた。
「この鉛筆捨ててええか?」
引っ越しの断捨離のため、仕事中の旦那に聞いてみるとパソコンから目線を外し「あかんよ!それいつか使うから!」という。

いつか?っていつなんだろう・・・。

「ちなみにこの鉛筆いつからあるん?」
「中学の時からの。捨てたら絶対あかんからね!」
彼はもう三十路のお兄さん。中学の時から集めている鉛筆を大切に所有している捨てられない男。
鉛筆だけじゃない、彼の使わないモノがたくさん家にある。何かが入っていた箱も捨てられないから、我が家の押入れは彼の集めた大小さまざまな箱で埋め尽くされている。そのため、捨てられない男との暮らしはなかなか頭を使う。
無印で蓋付きの収納ボックスを買ってきて、「ここに君の大切なモノを入れてーや」というと、あっという間に埋まった。これはただ、逆にモノを封印するのに役立ってしまった。

昔、あまりにもモノがあるから、こっそり捨てたことがある。
しばらくして、「あれがないんよ〜」と普段は絶対探さないくせに、ちょうど捨てたモノを探し始めたのだ。少しぎょっとしている私の顔を見て、「君捨てたやろ?」とニヤニヤしながら聞かれたとき私は悟った。
この男のモノを勝手に捨てるのをやめようと。(怒られはしなかった)

捨てられないのは困ったものだが、この性格だから私達は長く一緒にいられるのかもと思う。
学生の頃から10年の付き合いで、私の病気のことや何度も価値観の衝突もあったけど、人やモノに対して、長く、深く、大切にする人だから一緒に生きてこれたのかと、彼の捨てられないモノを見て考えてしまう。

それはそうと、さすがに何年も使わないモノをそのまま、という訳にもいかないような気もする。

「このシャンプーとリンス捨てていい?」
洗面所の箱に入れっぱなしのボトルについて聞くとお決まりのごとく、「ん〜それまだ使えると思うんよね」と風呂に入っている旦那が言う。
「これいつ買ったん?」
「たしか会社の寮に入ってたときやから、5年前ぐらいかな」

「え!もう悪くなってるよ!ハゲるよ!!!」

悪魔が来りて笛を吹く。彼が今もっとも気にしているワードを使ってしまった。
「ええええ!ほんま!?ハゲるん?シャンプーって賞味期限あるん?」
「あんま長く放置すると劣化するってオカンが言うてたよ!」
実際、オカンは言ってないし、シャンプーが劣化するなんて聞いたこともないが、5年も放置されているボトル2本を捨てるためには、仕方ない。
「そんな劣化するなんて聞いたことないけどな・・・」
「君もさ、ほら。放置してたら、君の頭皮が危険やで。どうする?」
「ん〜〜〜じゃ、捨ててええで〜〜」
ボトル2本、捨てることに成功。だが、心が痛い。

本日、家のあちらこちらに収納されていた彼の「捨てられないモノ」を集めて、箱に入れてみた。箱は3箱ある。
これが2箱にはなるように、どうにか説得しようと思います。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?