見出し画像

遺言書を作成する勇気と愛情

こんにちは、司法書士の横山真也です。

遺言書を残すことは、多くの人にとって難しい一歩です。特に、夫婦間でこの重要な話題を取り上げることは、多くの方にとって気が重いものかもしれません。

なぜでしょうか?それは、お願い事をすること、誰かの手助けを求めることは、私たちが抱くある特性に起因しています。人は何かをお願いし、助けを求める行為を、なるべく避けがちです。これは、自立心や独立心が強いからかもしれません。例えば、寒い冬の日に路上で転んでしまったとき、通行人に「大丈夫ですか?」と声をかけられても、「大丈夫です」と答えることがあります。明らかに状態が悪くても、なんとなく助けを求めづらいのです。

皆さんも、同じような経験があるのではないでしょうか?この特性は、人間関係においても同じです。頼み事をすること、助けを求めることは、時に勇気を必要とします。

では、遺言書を残すことは、なぜ言いづらいのでしょうか?

まず、遺言書を残すことは、自分の死について考えることを意味します。このこと自体が、多くの人にとってタブー視されがちです。死について考え、そしてそのことを言葉にすることは、確かに難しいことです。

また、遺言書は、親愛なる人に対する最後の贈り物とも言えます。遺言書を通じて、遺産の分配や家族への思いを伝えることができます。しかし、このプロセスは感情的にも非常に重いものであり、自分の死と向き合うことを意味します。

しかし、遺言書は家族や遺族にとって、争いや混乱を避け、遺産を公平に分けるための非常に重要な文書です。特に、お子様がいない夫婦の場合、遺産分割については法的な規定に従う必要があり、遺言書がなければ配偶者の負担が増えることになります。

では、どうすれば遺言書を残すことが言いやすくなるでしょうか?

私の経験から言えることは、まず奥様が自分のために遺言書を作成することです。例えば、お子様がいないご家庭であれば、遺言書を残さなければ亡くなった配偶者のご両親や兄弟姉妹との遺産分割の協議が必要になります。これを避け、ご主人が困らないように、奥様が先に遺言書を作成したことで、話のきっかけを作ることができます。

さらに、人は何かを受け取ると、お返しをしたくなる心理的な特性があります。これを心理学の世界では「返報性の原理」と呼びます。例えば、スーパーで試食を受けて無料で美味しいものを食べた経験がある方もいるでしょう。無料だからと思いきや、ついつい何か購入してしまったという経験です。

したがって、奥様がご主人のために遺言書を作成したことで、話を進める際に、ご主人も同じく遺言書を作成しようと考えるかもしれません。この方法は、お互いに信頼関係を示す一つの方法でもあります。

遺言書を残すことは、誰にとっても難しい一歩かもしれませんが、家族のため、そして愛する人のために、この大切なステップを踏んでみてください。これは、争いを避け、家族に安心と安定を提供する素晴らしい贈り物です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?