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新しい職種の立ち上げ〜曖昧なポジションだったPMMの定義~【SaaSビジネス経験談 #1】


シナジーマーケティングのプロダクト「Synergy!❐」に関わる様々な職種のメンバーが、自身の経験を元に、ビジネスに役立つ情報をお送りします。 今回の筆者は「Synergy!」のPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)です!

 

はじめまして、クラウド型CRMシステム「Synergy!」のPMMです。「PMMってなんやねん?」という感じで、その職種に聞きなじみがない方も多いと思います。


1.PMMとは

SaaS界隈では徐々に取り入れられている職種で、「プロダクトマーケティングマネージャー」の頭文字をとって「PMM」と呼ばれています。

<PMMとは>
“英語名の「Product Marketing Manager」を直訳すると「プロダクトのマーケティング責任者」となりますが、マーケティングのみを管轄する役職ではありません。マーケティング・セールス・カスタマーサクセスなどプロダクトの販売面にかかわる幅広い分野に責任を持ち、取りまとめを行うのがPMMです。”

(出典:PMMとは?プロダクトのビジネスサイドを担う重要ポジションを解説!

弊社ではPMMを立ち上げて3年目となり、以下のように定義しています。

<弊社PMMの定義>
主にSynergy!、Synergy!LEADの機能企画・認知/販売企画。
PMMは時流に合った機能企画と、開発された機能を含むプロダクトをマーケットに浸透させるための方法を企画・実行し、市場や顧客からのプロダクトに対する印象を向上していくことに責任を持つ。
機能企画時にはターゲットや目標をPdM(プロダクトマネージャー)やUxD(ユーザーエクスペリエンスデザイナー)とともに定め、販売施策の設計をし、リリース後にはKGI・KPIとなる数値や施策の振り返りを行う。
PMMはカスタマーサクセス ・セールス・マーケティングなどのビジネス側とのコミュニケーションのハブとなり、必要な情報を流通させたり、各部署と利用促進のための協議・施策を実行したりしている。

 

今ではPMMも3名体制となり、上記のように自分たちで定義を考えられるくらいに確立されましたが、過去はもっと曖昧な状態で存在しており、プロダクト開発における何でも屋さん!という感じでした。

2.PMMが生まれるまで

PMMという職種が確立されるまでは、
・新機能のリリースを正しくビジネスメンバーにインストールすること
・販売促進施策をPO(プロダクトオーナー)と協議して進行すること

をメインとし、開発側とビジネス側をつなぐ役割を担ってきました。

それらの活動に真摯に向き合い続けていたところ、社内で製販一体を目指す方針が打ちたてられ、PMMの役割の認知/重要視がなされていきました。ついにPMMのリソースを増やすタイミングがきたのです。
PMMのリソースを増やしたことで、機能企画にも領域を広げられるようになり、企画チームとして「プロダクトの企画・開発を進行するPdM」、「顧客体験と管理画面を設計するUxD」と三位一体で、お互いに役割を少しずつカバーした状態(と言うとなんか聞こえはいいですが、正確に言うと役割がちょっと曖昧でおせっかいなPMMがタスクを拾いがちな状態)でSynergy!の進化を目指していくことになりました。

3.そうだ!PdMフレーム作ろう!

PMM・PdM・UxDで構成した企画チームはさまざまなキャリアを有したチームです。進め方や機能開発の優先度の考えも人それぞれであったため、属人化せず安定して機能企画をしていけるようにいくつかのルールを定めました。そのルール群を弊社ではまとめて「プロダクトマネジメントフレーム(PdMフレーム)」と呼んでいます。ここでは以下を紹介します。

1. 機能開発の優先度が明確になっている
2. 属人性を極力排除したワークフローが確立している

<1.機能開発の優先度が明確になっている>
私たちは18年選手の「Synergy!」にどのような機能を搭載すべきかを非常に悩んでいました。企画チームのメンバーそれぞれの軸で判断してしまうと「売れそうだけど開発コストがかかりすぎる」、「開発コストはかからずに作れるけど売れない」、というような企画も生まれてしまいます。そこで、自分たちが納得でき、社内関係者にも認識できる開発優先度ルールを作ろうと試み、以下のような基準でこれまでに温めてきた企画ネタに優先度をつけてみました。

●  汎用性:特定の業界にとどまらず、多用な業務で利用できるか
●  確実性:複数のお客様の利用が見込めるかどうか
●  コストの妥当性:開発コストの妥当性があるか

また、優先度をつけた結果から実際に企画を始めた機能は「MVP(Minimum Viable Product、必要最小限の機能)」を作って、機能を作り込む前に市場にフィットするかを仮説検証するサイクルも作りました。

<2.属人性を極力排除したワークフローの確立>
先述した通り、企画チームはキャリアの長いメンバーばかりということもあり、それぞれが長年培ってきたノウハウと知識を駆使して機能開発を進めていました。新しいメンバーも増える中、「その人じゃないとできない」という状況を回避しておくことが重要です。そのため、「このタイミングでキックオフミーティングをして…」「このタイミングで社内の法務に確認をして…」など、プロセスやフローをまとめた詳細なタスク表を作りました。
それぞれが対応してきたことを明文化、可視化したことで、役割を超えて動きが把握できるようになり、さらに今後、担当が変わっても同じような進め方ができる状態にしました。

4.縦割りサイコー!整理されたタスクをやっていればうまくいくと思っていた

詳細なタスク表を基に、それぞれが機能企画/販売促進にまい進する日々が始まりました。当時の主な役割分担としては以下です。

PdM:プロダクトの機能企画/開発に責任を持つ。プロジェクトの進行管理が主な役割
UxD:プロダクトの顧客体験/ユーザビリティに責任を持つ。機能要件の整理、情報設計が主な役割
PMM:プロダクトの利用数増大に責任を持つ。プロダクトの販売促進が主な役割

 

そんな中、ある機能がリリース取りやめとなってしまいました。役員層へのレビューを実施したところ「これだとお客様が安心して使うことはできない」と判断されたのです。原因は、開発を進めるプロセスにおいて「この仕様だったら実現できる」ということを優先し開発を進めてしまったことにありました。

マーケティングの考え方としてよく引き合いに出される「ドリルを買いに来た人がほしいのはドリルではなく『穴』である」というものがあります。
システムの負荷を抑え安定稼働させるという開発視点も非常に重要なポイントですが、今回の開発では、役割やタスクを分担するが故、よいドリルを作ることに注力してしまい、お客様がどのような穴を開けたいかということを仕様検討時に考える役割が不足していました。

5.Synergy!はPdM・UxD・PMMの3者で機能を考える、そう決めた

大きなプロジェクトをスムーズに進めるにあたり、役割の定義と分担は重要なことです。しかし、役割にとらわれすぎてしまうと、この通り、落とし穴にはまり進めなくなります。私たちは仕切り直しをし、PdM・UxD・PMM全職種が仕様検討に参加することで今回の問題に対処することにしました。関与を増やすことでもちろんリソースはかかりますが、それ以上のプラスの効果が生まれています。

1)開発の事情/ビジネスの事情をお互いに把握できる
2)機能の売りポイントが仕様検討時に明確にできる
3)理解や信頼が深まり、チームの雰囲気が最高によい
4)お互いの領域に踏み込んで協力し合える関係性を構築できた

とはいえ、丁寧な仕様検討のために繰り返されるミーティングの時間は新たな課題となっています。ミーティングの進め方など工夫が必要なものの、それがまだ判断できる状態にはありません。今後は最適なリソースのかけ方を模索していきたいと考えています。

6.目指していることはSynergy!の第一想起

これまではプロダクト開発における何でも屋さんだった私たちですが、ここ数年でSynergy!をより良いプロダクトにするため、PMMが適切に機能企画に関われるようになったと思います。
そこで、現在、次のステージとして、市場において「Synergy!」を第一想起してもらうことを目指し、新しいチャレンジを始めています。

そのチャレンジでは、動画マーケティングの”3H戦略”を参考にした私たちオリジナルの戦略を立て、施策を考えるようにしています。 

<弊社PMM流3H戦略>
HERO:認知や興味関心を引く、顧客層を獲得するための価値創出と発信
HUB:関係性を築く、顧客とのつながりを増やすための伝播と発信
HELP:課題解決をする、顧客課題の抽出と改善反映のサイクル

参考文献:動画マーケティングの基本「3H戦略」と、注目される「マイクロモーメント」について解説 

例えば、世の中のターゲットとなり得る人たちとの接点を増やし、Synergy!について伝播していくためにチャネルを増やしています。
Youtubeチャンネル(2022年開設)
Instagramアカウント(2023年開設)
noteマガジン:(2023年開設)

終わりに

世の中にはどんどん新しい職種が生まれています。一般的な定義を参考としつつも、自分たちの会社にとってどのようなカタチが一番いいのかを考えるのは重要だと感じています。職種の名前に引っ張られお互いの仕事の範囲を決めてしまうと、無駄なあつれきを生んでしまいます。無尽蔵に仕事を広げればいいわけではありませんが、チームメンバーにとって気持ちの良い役割分担を日々模索しながら、プロダクト(Synergy!)と共に進化し、より良いプロダクトをお客様に提供していきたいと思います。


 

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